1. 概要

アイシャ・ベン・アメッド(عائشة بن أحمدアイシャ・ベン・アメッドアラビア語、1989年2月7日生まれ)は、チュニジア出身の女優である。映画、舞台、テレビで幅広く活動しており、特にエジプト映画界での活躍で知られている。彼女は、チュニジアのテレビシリーズ『Pour les beaux yeux de Catherine』での演技で広く認知され、その後エジプトに進出。映画『The Cell』や『Zizou』、テレビシリーズ『Alf Leila wa Leila』など、数々のエジプト作品に出演している。2016年には、映画『Narcisse, Aziz Rouhou』でのヒンド役で、モロッコのアル・ホセイマ映画祭で最優秀女優賞を受賞するなど、国際的にも高い評価を得ている。
2. 生涯
アイシャ・ベン・アメッドは、チュニジアで生まれ育ち、幼少期から芸術に触れる機会に恵まれた。彼女のキャリアは、チュニジア国内での活動から始まり、その後エジプトへと活動拠点を広げ、アラブ世界の映画・テレビ業界で重要な存在となった。
2.1. 幼少期と教育
1989年2月7日に生まれたアイシャ・ベン・アメッドは、チュニスエアの機長を父に持つ。このため、彼女は幼少期から無料で航空券を利用し、広範囲にわたる旅行を経験した。若い頃には、シヘム・ベルホジャのダンスグループで活動していた。その後、チュニスの美術装飾学校(Ecole d'Art et de Décoration)でグラフィックアートと広報を学んだ。
2.2. 初期キャリア
アイシャ・ベン・アメッドの女優としてのキャリアは2010年に始まった。彼女はまず、ナダ・メズニ・ハファイエド監督の長編映画『Histoires tunisiennes』で小さな役を演じた。翌年には、ジュード・サイード監督のシリア映画『Mon dernier ami』に出演した。2012年には、テレビシリーズ『Pour les beaux yeux de Catherine』でナディア役を演じ、チュニジア国内で広く知られるようになった。その後、2013年にはモハメド・ダマク監督のチュニジア映画『Jeudi après-midi』でゾーラ役を演じている。
3. 主な活動と業績
アイシャ・ベン・アメッドは、チュニジアでの初期の成功を経て、エジプトの映画・テレビ業界で目覚ましいキャリアを築き、数々の重要な役柄を演じてきた。
3.1. エジプトでのキャリア
2015年、アイシャ・ベン・アメッドはエジプトに活動拠点を移し、ラウーフ・アブデル・アジズ監督のテレビシリーズ『Les Mille et une nuits (千夜一夜物語)』に出演した。この作品では、記憶喪失に陥り自身のアイデンティティを確立しようとするカマル・ザメン役を演じるために特別に選ばれた。この役は彼女にとってエジプトでの重要な足がかりとなった。
2017年には、ターレク・アル・エリヤン監督の映画『The Cell』でヌーハ役を演じた。また、エジプトのテレビシリーズにも多数出演しており、例えば『Aigle de la Haute Egypte』では現地のアクセントを習得してライラ役を演じ、さらに『Flèches filantes』ではテロリスト役を演じるなど、多様な役柄に挑戦している。
3.2. 主な作品
アイシャ・ベン・アメッドは、映画、テレビドラマ、テレビ映画、演劇、そして様々なテレビ番組への出演を通じて、その演技の幅広さを示してきた。
3.2.1. 映画
- 2011年:『Histoires tunisiennes』(حكايات تونسيةヒストワール・チュニジエンヌアラビア語) - 監督:ナダ・メズニ・ハファイエド
- 2012年:『Mon dernier ami』(صديقي الأخيرモン・デルニエ・アミアラビア語) - 監督:ジュード・サイード、ファレス・アル・ザハビ
- 2013年:『Jeudi après-midi』 - 監督:モハメド・ダマク、ターレク・ベン・シャーバン - 役柄:ゾーラ
- 2015年:『Narcisse』(عزيز روحوアジズ・ルーホアラビア語) - 監督:ソニア・チャムキ - 役柄:ヘンド
- 2016年:『Parfum de printemps』 - 監督:フェリッド・ブゲディール - 役柄:ハディージャ
- 2017年:『Saint Augustin, le fils de ses larmes』 - 監督:サミル・セイフ、サメフ・サミー - 役柄:モニカ
- 2017年:『The Cell』 - 監督:ターレク・アル・エリヤン、サラフ・エル・ゲヘイニー - 役柄:ヌーハ(アムルの妻)
- 2019年:『The Money』(الفلوسアル・フルースアラビア語) - 監督:サイード・エル・マルーク、ワエル・ナビール、モハメド・アブデル・モアティ、タメル・ホスニー - 役柄:ハイラ
- 2020年:『Taw'am Rouhy』 - 監督:オスマン・アブ・ラバン、アマニ・トゥンシ - 役柄:アリア、メイ、マラク、ハナ
- 2021年:『Ritsa』 - 監督:アフメド・ユースリー、モアタズ・フテハ - 役柄:リツァ
3.2.2. テレビドラマ
アイシャ・ベン・アメッドは、チュニジアとエジプトの双方で数多くのテレビシリーズに出演し、幅広い役柄を演じてきた。
- チュニジアのシリーズ**- 2012年:『Pour les beaux yeux de Catherine』(لأجل عيون كاترينプール・レ・ボー・ジュー・ドゥ・カトリーヌアラビア語) - 監督:ハマディ・アラファ、ラフィカ・ブジデイ - 役柄:ナディア
- 2013年:『Njoum Ellil』(シーズン4) - 監督:メフディ・ナスラ
- 2021年:『Harga』(حارقةハルガアラビア語) - 監督:ラサード・ウェスラティ、イメド・エディン・ハキム、ジュダ・メジリ - 役柄:ヘラ
 - 海外のシリーズ(主にエジプト)**- 2015年:『Alf Leila wa Leila』(الف ليله وليلهアルフ・レイラ・ワ・レイラアラビア語) - 監督:ラウーフ・アブデル・アジズ、モハメド・ナイエル - 役柄:カマル・ザメン
- 2016年:『Shehadet Melad』(شهادة ميلادシャハデト・メラードアラビア語) - 監督:アフメド・メドハト、アムル・サミール・アテフ - 役柄:アマル・ザハル
- 2018年:『Al Seham Al Mareqa』(السهام المارقةアル・セハム・アル・マレカアラビア語) - 監督:マフムード・カメル、シェリーン・ディアブ - 役柄:ウバイの母
- 2018年:『Nasser El Saïd』 - 監督:ヤセル・サミ、モハメド・アブデル・モアティ、アフメド・アリ・モッサ - 役柄:ライラ
- 2018年:『Abwab Alshaki』 - 監督:アフメド・サミール・ファラージ、モハメド・ナイエル、カリム・エル・ダリル、ベショイ・ハンナ、ラミ・イスマイル - 役柄:ディナ
- 2019年:『Abou Jabal』 - 監督:アフメド・サラフ、モハメド・サイード・バシール - 役柄:マイエム
- 2021年:『Leabet Newton』(لعبة نيوتنルアベト・ニュートンアラビア語) - 監督:エンジ・フェティ、タメル・モフセン - 役柄:アミナ
- 2022年:『Malaf Serry』 - 監督:ハッサン・エル・バラシ、マフムード・ハガグ - 役柄:マリエム・メルキー
- 2022年:『The Affair』(النزوةアル・ナズワアラビア語) - 監督:アミール・ラムセス、モハメド・エル・ハッジ - 役柄:ヘラ
- 2022年:『Waad Iblis』 - 監督:コリン・ティーグ、アシュラフ・ハメド、トニー・ジョーダン、エンジ・ローマン・フィールド、スハ・アル・ハリファ
- 2023年:『Muzakirat Zoug』 - 監督:タメル・ナディ、アフメド・バハガト、モハメド・ソリマン・アブドゥル・マレク - 役柄:シェリーン
- 2023年:『My soul in you』 - 監督:モハメド・ロトフィ、ムスタファ・マフムード - 役柄:ジャミラ
- 2024年:『Bedon Sabeq Enthar』 - 監督:ハニ・ハリファ、アンマル・サブリー、アルマ・カファルネ、サマル・タヘル、カリム・エル・ダリル、アムル・エル・ダリー - 役柄:ライラ
 
 
3.2.3. テレビ映画
- 2012年:『Barabbas』 - 監督:ロジャー・ヤング - 役柄:ベタニアのマリア
3.3. 演劇活動
- 2013年:『Zanket Ensé』 - 監督:ヌーメン・ハムダ、ファトマ・ベンヌール。サミ・モンタセルによる離婚家族劇のチュニジア版舞台作品。
3.4. テレビ番組出演
- 2013年:『El Zilzal』(エピソード15) - エル・ヒワル・エル・トゥンシ
- 2013年:『Dhouk Tohsel』(エピソード2) - Tunisna TV
- 2014年:『Maakom with モナ・エル・シャズリー』 - CBC
- 2018年:『90 Minutes』 - メフワルTV
- 2020年:『Take care of Fifi with フィフィ・アブドゥ』 - MBC Masr、MBC 5
- 2021年:『Five stars』 - MBC Masr
4. 受賞歴と評価
アイシャ・ベン・アメッドは、その演技力が評価され、いくつかの賞を受賞している。
2016年には、ソニア・チャムキ監督の映画『Narcisse』(アラビア語タイトル『Aziz Rouhou』)でのヒンド役の演技が特に高く評価された。この役で、彼女はモロッコのアル・ホセイマ映画祭で最優秀女優賞を受賞した。また、彼女が出演したフェリッド・ブゲディール監督の映画『Ziou』または『Parfum de printemps』は、2016年のカイロ国際映画祭で「最優秀映画」賞を受賞している。
5. 影響
アイシャ・ベン・アメッドは、チュニジアからエジプトへと活動の場を広げ、アラブ世界の映画・テレビ業界において重要な存在となった。彼女のキャリアは、チュニジア人俳優が国際的な舞台で成功を収める可能性を示しており、特にエジプトというアラブ世界最大のエンターテインメント市場での成功は、後進の俳優たちに大きな影響を与えている。多様な役柄を演じ分ける能力と、現地のアクセントを習得するなどのプロ意識は、彼女がエジプトで確固たる地位を築く上で重要な要素となった。