1. 幼少期とアマチュア経歴
金明成は、野球選手としての才能を開花させる前に、幼少期から学生時代にかけての成長と、その後の大学でのポジション転換という重要な経歴を経て、プロへの道を切り開きました。
1.1. 幼少期と学生時代
金明成はソウルで生まれ育ちました。彼はソウル中大初等学校、イス中学校を経て、長忠高等学校を卒業しました。高校時代は主に内野手としてプレーしていましたが、この時期の目立った活躍は記録されていません。
1.2. 大学経歴とポジション転換
高校卒業後、2007年のKBOドラフトでは指名漏れとなりましたが、野球選手としてのキャリアを続けるために中央大学体育教育学科に進学しました。大学入学当初は引き続き三塁手として内野を守っていましたが、打撃には課題があったものの、肩の強さには定評がありました。この強肩を活かすため、彼は2007年から野手から投手へとポジションを転換しました。
投手転向後、金明成は目覚ましい成長を遂げます。2009年には先発投手として16試合に登板し、5勝2敗、防御率2.71という好成績を記録し、才能の片鱗を見せました。さらに2010年にはその実力を確固たるものにし、大学野球リーグで11試合に登板し、6勝無敗、防御率1.72という圧倒的な成績を残しました。この年にはわずか1本の本塁打しか許さず、68イニングを投げ、54個の奪三振を記録するなど、大学球界を代表する投手へと成長しました。
2. プロ経歴
金明成選手のプロ野球選手としてのキャリアは、ロッテ・ジャイアンツでの苦難のスタートから、ドゥサン・ベアーズへの移籍を経て、再び一軍の舞台で活躍するまでの道のりを描いています。
2.1. ロッテ・ジャイアンツ時代
金明成は、大学での輝かしい活躍が認められ、2011年のKBO新人ドラフトでロッテ・ジャイアンツから1ラウンド(全体5位)で指名を受け入団しました。しかし、プロの舞台では大学時代のような成績を残すのに苦戦し、2011年シーズンは一軍で4試合に登板し1敗を喫し、防御率は9.39と振るいませんでした。この時期の不振により、彼はチームでの居場所を確保することができませんでした。
プロ入り後、期待された活躍ができないまま、金明成は2012年6月17日に、自身のプロ初登板で対戦した相手チームであるドゥサン・ベアーズへと捕手のヨン・ドクハンとのトレードで移籍することになりました。このトレードは、彼のプロキャリアにおいて大きな転機となりました。
2.2. ドゥサン・ベアーズ時代と引退
ドゥサン・ベアーズへ移籍後、金明成はすぐに一軍に合流せず、投球フォームのバランスを整えるための調整期間を設けました。この期間を通じて再起を図り、2013年には再び一軍に復帰することができました。彼はこの年、韓国シリーズにも出場し、チームの一員として大舞台を経験しました。
しかし、その後も安定した成績を残すことは難しく、2014年には防御率2.35と改善を見せましたが、2015年には1勝を挙げたものの防御率7.79と再び不振に陥りました。そして、2016年にオ・ジャンフン、チェ・ヨンジン、キム・ガンらと共にチームから戦力外通告を受け、プロ野球選手としてのキャリアを終えました。彼のプロ通算成績は、決して華々しいものではありませんでしたが、アマチュア時代に培った実力と、度重なる試練の中でも諦めずに挑戦を続けた姿勢は、多くの人々に記憶されています。
3. 国家代表チーム活動
金明成選手は、アマチュア時代に韓国野球国家代表チームの一員として数々の国際大会に参加し、特に2010年のアジア競技大会での活躍は、彼のキャリアに決定的な影響を与えました。
3.1. 国際大会出場
金明成は、大学在学中からその才能を認められ、国家代表チームに招集される機会を得ました。2009年7月には、日本の札幌市で開催された2009年アジア野球選手権大会に韓国代表として出場しました。この大会では日本戦で0.1イニングを投げたのみでしたが、チームは銅メダルを獲得しました。
翌2010年7月には、韓米野球選手権シリーズに招集されました。彼はシリーズ第2戦に先発登板し、2試合で合計6.0イニングを投げ、5.1イニングで2失点、5奪三振を記録しました(個人成績0勝1敗、防御率3.00)。このシリーズは韓国チームが0勝5敗と苦戦しましたが、金明成にとっては貴重な国際経験となりました。
3.2. 2010年アジア競技大会と兵役恩恵
2010年9月6日、金明成のキャリアにおいて最も重要な出来事の一つが起こりました。彼は中国の広州市で開催される2010年アジア競技大会の野球韓国代表チーム24名に、アマチュア選手としては唯一選出されたのです。これは、当時の彼の実力と将来性が高く評価された証でした。
大会では、グループリーグのパキスタン戦に先発登板しました。この試合で金明成は2と⅓イニングを無失点に抑え、1安打、3奪三振という見事な投球を披露しました。試合は韓国が17対0でパキスタンを圧倒し、金明成の好投もチームの勝利に貢献しました。彼はこの試合で勝利投手となりました。
最終的に韓国代表チームは金メダルを獲得し、この功績により金明成は兵役免除の恩恵を受けることになりました。これは韓国の男性アスリートにとって極めて大きなメリットであり、彼の野球キャリアを長期的に継続する上で非常に重要な要素となりました。
金明成は兵役免除について、「周囲から羨ましがられることが多い。嬉しい反面、それだけ大きなプレッシャーも感じる。むしろ(兵役恩恵を受けられなかった)先輩たちには申し訳ない気持ちすらある。だからこそ、もっと一生懸命やらなければならないと思う」と語り、自身の置かれた状況への責任感と謙虚さを示しました。
また、彼は当時の代表チームの投手コーチを務めたキム・シジン監督に深く感謝の意を表しました。金明成は「正直、自分は他のチームの選手で、一度もお会いしたことがなかったのに、当時とても丁寧に指導してくださった。これからもずっと連絡を取りたい。感謝することがたくさんある。人間的な面でさらに感謝している」と述べ、自身の成長を支えてくれた人々への敬意を忘れませんでした。
4. 通算記録
金明成のKBOリーグにおけるプロ通算投手記録は以下の通りです。
年度 | チーム | 防御率 | 試合数 | 完投 | 完封 | 勝 | 敗 | セーブ | ホールド | 勝率 | 打者数 | 投球回 | 被安打 | 被本塁打 | 4死球 | 奪三振 | 失点 | 自責点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2011年 | ロッテ | 9.39 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | .000 | 39 | 7.2 | 14 | 3 | 2 | 3 | 8 | 8 |
2013年 | ドゥサン | 4.09 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .000 | 47 | 11 | 7 | 0 | 7 | 9 | 5 | 5 |
2014年 | 2.35 | 8 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | .000 | 28 | 7.2 | 4 | 1 | 2 | 3 | 2 | 2 | |
2015年 | 7.79 | 17 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1.000 | 99 | 17.1 | 27 | 2 | 11 | 10 | 15 | 15 | |
通算 | 4シーズン | 6.18 | 52 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | .500 | 213 | 43.2 | 52 | 6 | 22 | 25 | 30 | 30 |
KBOリーグの公式記録は[https://www.koreabaseball.com/Record/Player/PitcherDetail/Total.aspx?playerId=61527 こちら]で確認できます。