1. 生い立ち
イクバルは2003年4月27日、イングランドのマンチェスターで、パキスタン人の父とイラク人の母のもとに生まれた。4歳の頃から地元のチームであるセール・ユナイテッドFCでサッカーを始め、9歳でマンチェスター・ユナイテッドのユースシステムに加入した。幼少期は聖マーガレット・C of E小学校で学んだ。
2. クラブキャリア
イクバルはプロサッカー選手として、まずマンチェスター・ユナイテッドFCでキャリアをスタートさせ、その後FCユトレヒトへ移籍した。
2.1. マンチェスター・ユナイテッド
イクバルは2021年4月にマンチェスター・ユナイテッドと初のプロ契約を締結した。16歳の頃には飛び級でユナイテッドのU-18チームの一員としてプレーし、リザーブチームでは16試合に先発出場して2ゴールを挙げた。
2021年12月8日、UEFAチャンピオンズリーグのBSCヤングボーイズ戦で89分に交代出場し、トップチームデビューを果たした。これにより、彼はマンチェスター・ユナイテッドでプレーした初の英国生まれの南アジア系選手、および初のイラク人選手となり、またチャンピオンズリーグでプレーした初の英国南アジア系選手という歴史的な記録を樹立した。
トップチームデビューから半年後の2022年6月には、1年間の契約延長オプション付きの3年契約で契約を延長した。しかし、エリック・テン・ハフ新監督のもとで迎えた2022-23シーズン開幕前のプレシーズンではトップチームに帯同したものの、シーズン開幕後にはベンチ入りする機会はあったものの出場機会は得られず、主にリザーブチームでプレーすることとなった。マンチェスター・ユナイテッドは彼のさらなる成長が見込めないと判断し、レンタルではなく完全移籍での放出を決定した。
2.2. FCユトレヒト
2023年6月23日、イクバルはマンチェスター・ユナイテッドからの退団を発表し、同年6月26日にはFCユトレヒトへの移籍が発表され、4年契約を締結した。移籍金は非公開である。FCユトレヒトでは背番号14を着用している。
3. 代表経歴
イクバルはイングランド、イラク、パキスタンの代表としてプレーする資格を持っていたが、イラク代表を選択した。
3.1. ユース代表
2021年5月、イクバルはイラクのパスポートを取得し、ユース世代のイラク代表としてプレーするようになった。
同年6月には、20歳以下のアラブカップに出場するU-20イラク代表に招集されたが、COVID-19のパンデミックにより、所属クラブのマンチェスター・ユナイテッドから渡航が許可されなかったため、チームに合流することはなかった。
2021年9月、イクバルはアラブ首長国連邦でのトレーニングキャンプに23歳以下のイラク代表として初めて招集され、9月4日のU-23アラブ首長国連邦代表戦で先発出場し、U-23代表デビューを果たした。翌10月には、サウジアラビアで開催された西アジアサッカー選手権U-23に参加するU-23イラク代表の23人メンバーに選出された。10月8日のU-23レバノン代表戦では、キャプテンとして出場し、U-23代表での初ゴールを決めた。
3.2. シニア代表
2022年1月、イクバルは2022 FIFAワールドカップ・アジア3次予選のイラン戦およびレバノン戦に臨むイラク代表に招集された。同年1月27日、イランに0-1で敗れた試合でA代表デビューを果たした。
2023年9月には、タイで開催されたキングス・カップのイラク代表メンバーに選出された。2024年1月にはカタールで開催されたAFCアジアカップ2023のメンバーに選出され、1月15日のインドネシア戦で同大会に初出場した。
2024年3月26日、2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選のフィリピン戦(アウェイで5-0勝利)で、イラクの4点目となる自身初のAマッチでの得点を記録した。
4. プレースタイル
イクバルはミッドフィールダーであり、そのプレースタイルは多くの「フレア」(ひらめきや創造性)に富み、非常に多才である。主なポジションはセントラルミッドフィールダーだが、守備的ミッドフィールダーや攻撃的ミッドフィールダーとしても起用されることがある。また、ボックス・トゥ・ボックスの役割や、プレーメーカーとしての「ナンバー10」の役割もこなすことができる。
5. 人物
イクバルは、数多くのイギリス系アジア人のサッカー選手の一人として、2021年の「南アジア遺産月間」を支援するためのFAのコンテンツシリーズに参加した。
彼はイスラム教徒であり、メスト・エジルを自身のインスピレーション源として挙げている。インタビューでは、英語が流暢であり、パンジャーブ語とアラビア語も少し話せると述べている。
6. 記録
6.1. クラブでの成績
クラブ | シーズン | リーグ戦 | 国内カップ | リーグカップ | 国際大会 | その他 | 通算 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
マンチェスター・U リザーブ | 2019-20 | U-18プレミアリーグ | 2 | 1 | 1 | 0 | - | - | - | 3 | 1 | |||
2020-21 | U-18プレミアリーグ | 14 | 6 | - | - | - | - | 14 | 6 | |||||
2020-21 | プレミアリーグ2 | 1 | 0 | - | - | - | - | 1 | 0 | |||||
2021-22 | プレミアリーグ2 | 18 | 2 | 3 | 1 | - | 4 | 1 | 3 | 1 | 28 | 4 | ||
2022-23 | プレミアリーグ2 | 10 | 0 | 3 | 0 | - | 0 | 0 | 3 | 0 | 16 | 0 | ||
クラブ通算 | 45 | 9 | 7 | 1 | - | 4 | 1 | 6 | 1 | 62 | 12 | |||
マンチェスター・U | 2021-22 | プレミアリーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | - | 1 | 0 | |
2022-23 | プレミアリーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | ||
クラブ通算 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | - | 1 | 0 | |||
ヨング・ユトレヒト | 2023-24 | エールステ・ディヴィジ | 1 | 0 | - | - | - | - | 1 | 0 | ||||
ユトレヒト | 2023-24 | エールディヴィジ | 18 | 0 | 1 | 0 | - | - | - | 19 | 0 | |||
キャリア総通算 | 64 | 9 | 8 | 1 | 0 | 0 | 5 | 1 | 6 | 1 | 83 | 12 |
6.2. 代表での成績
代表チーム | 年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|---|
イラク | 2022 | 2 | 0 |
2023 | 2 | 0 | |
2024 | 11 | 1 | |
通算 | 15 | 1 |
イラクの得点数が先に表示される。
No. | 日付 | 会場 | キャップ数 | 対戦相手 | 得点 | 結果 | 大会 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2024年3月26日 | リサール・メモリアル・スタジアム、マニラ、フィリピン | 10 | フィリピン | 4-0 | 5-0 | 2026 FIFAワールドカップ・アジア2次予選 |
7. 影響と評価

ジダン・イクバルは、マンチェスター・ユナイテッドでプレーした初の英国生まれの南アジア系選手であり、UEFAチャンピオンズリーグに出場した初の英国南アジア系選手であるという点で、サッカー界において象徴的な意味合いを持つ。彼の存在は、英国の南アジア系コミュニティ、特にサッカーを志す若者たちにとって、重要なロールモデルとなっている。イクバルは自身のルーツを誇りに思い、南アジア系の選手がプロサッカー界で活躍できる可能性を示している。