1. 概要
ダニロ・パンティッチは、セルビアのルマで1996年10月26日に生まれたプロサッカー選手です。主にMFとしてプレーし、ユース時代を過ごしたFKパルチザンでプロキャリアをスタートさせました。チェルシーFCに移籍後も、複数のクラブへのレンタル移籍を経験し、古巣パルチザンには二度、完全移籍で復帰しています。セルビアの各世代別代表チームでも活躍し、将来を嘱望された選手の一人です。彼のキャリアは、若くして才能を認められながらも、レンタル移籍を繰り返し、自身の居場所を確立するために奮闘した道のりを示しています。
2. 生い立ちとキャリアの始まり
ダニロ・パンティッチは、セルビアのルマで誕生し、幼少期からサッカーへの情熱を育みました。
2.1. 幼少期と教育
ダニロ・パンティッチは、1996年10月26日にルマで生まれました。幼少期よりサッカーの才能を示し、後にプロの道を歩むことになります。彼はセルビア国内のサッカーアカデミーで基礎を築き、特にFKパルチザンの下部組織で選手としての重要な成長期を過ごしました。この時期に培われた技術と戦術理解が、後のプロキャリアの土台となります。
2.2. パルチザンでの初期キャリア
パンティッチは、FKパルチザンの下部組織で育成され、プロとしてのキャリアの第一歩を踏み出しました。2013年5月26日、彼はセルビア・スーペルリーガのFKスパルタク・スボティツァ戦でトップチームデビューを果たしました。この試合で彼はウラディミル・ヴォルコフに代わり、70分から出場しました。
デビュー後、パルチザンとの契約延長交渉に一度は合意を欠いたものの、2013年12月5日に1年半の契約を結びました。2014年初頭からは、ユヴェントスが彼の短い契約期間のため、その動向を注視しているとの報道がありました。ユヴェントスからの関心を知ったパンティッチは、地元メディアに対し、セルビアを離れる前にパルチザンとの契約を延長したいという意向を表明しました。
3. クラブキャリア
ダニロ・パンティッチのプロクラブキャリアは、ユース時代を過ごしたFKパルチザンでのデビューから始まり、チェルシーFCへの移籍、そして複数のクラブへのレンタル移籍を経て、再びパルチザンに戻るという特徴的な軌跡を辿っています。

3.1. パルチザン (最初の在籍)
パンティッチは、2013年5月26日のFKスパルタク・スボティツァ戦でFKパルチザンのトップチームにデビューしました。プロとしての最初の在籍期間中、彼は自身の才能を披露し、特にその若さから注目を集めました。パルチザンとの契約を一度は延長しない意向を示したものの、最終的には2013年12月5日に新たな契約を結びました。この時期、彼のパフォーマンスはユヴェントスなどのヨーロッパの強豪クラブの関心を引きました。2014-15シーズンには、UEFAチャンピオンズリーグとUEFAヨーロッパリーグに出場し、ヨーロッパの舞台での経験も積みました。
3.2. チェルシーとレンタル移籍期間
2015年7月13日、パンティッチはチェルシーFCへ推定125.00 万 GBPで移籍し、4年契約を結びました。しかし、彼はチェルシーで公式戦に出場することはなく、すぐにエールディヴィジのフィテッセにレンタル移籍しました。その後も、SBVエクセルシオール、古巣FKパルチザン、フェヘールヴァールFC、FKチュカリチュキといった様々なクラブへのレンタル移籍を繰り返しました。
3.2.1. フィテッセへのレンタル移籍
チェルシー移籍後、パンティッチはすぐにフィテッセへレンタルされました。2015年7月30日、彼はUEFAヨーロッパリーグ予選3回戦のサウサンプトン戦でフィテッセでのデビューを果たしました。この試合で彼は3-0で敗れたチームの71分にヴァレリ・カザイシュヴィリと交代で出場しました。リーグ戦では2015年8月9日のヴィレムII戦でデビューし、この試合も71分にカザイシュヴィリと交代で出場し、1-1の引き分けに貢献しました。
しかし、2016年3月3日、パンティッチはフィテッセの主力から外されていると感じ、「チェルシーに戻って練習だけでもしたい。もし私が十分でなければ、なぜフィテッセにいるのか?正気ではない!私は何も間違いを犯していない。もしチャンスがあってそれを潰したのなら、黙っているだろう。多分フィテッセでは我々セルビア人を好まないのだろう。ネマニャ・マティッチもここでチャンスを得られなかったし、ウロシュ・ジュルジェヴィッチも1年半で22試合しかプレーしなかった」と不満を表明しました。このインタビューの後、パンティッチはロブ・マース監督によって無期限の出場停止処分を受けました。
3.2.2. エクセルシオールへのレンタル移籍
2016年8月12日、パンティッチは2016-17シーズンに向けてSBVエクセルシオールにレンタル移籍しました。同年9月17日、彼はヴィレムII戦でエクセルシオールでのデビューを果たし、後半から途中出場しました。この試合はエクセルシオールが終盤に得点し、1-1の引き分けに終わりました。続く9月20日のKNVBカップ、BVVバレンデルヒト戦ではフル出場し、チームの1-0の勝利に貢献しました。
3.2.3. パルチザンへの最初のレンタル移籍
2017年6月18日、パンティッチは少年時代を過ごした古巣FKパルチザンへ1シーズン間のレンタル移籍で復帰しました。2017年7月22日、セルビア・スーペルリーガ開幕戦のFKマチュヴァ・シャバツ戦でゴールを決め、ホームでの6-1の勝利に貢献しました。同年11月5日には、マルコ・ヤンコヴィッチとの交代で72分から途中出場し、2アシストを記録してマチュヴァ・シャバツに対する3-1のアウェイ勝利に貢献しました。この試合がパンティッチにとって大きな転機となり、これ以降、彼はシーズン終了までほとんどの試合で先発出場するようになりました。
2017年11月23日、UEFAヨーロッパリーグ 2017-18 グループリーグのBSCヤングボーイズ戦では、1アシストを記録し、パルチザンのベストプレーヤーの一人として活躍しました。この試合でパルチザンは13年ぶりに決勝トーナメント進出を決めました。シーズンの後半戦では、パンティッチはいくつかの素晴らしいゴールを決め、複数のアシストを記録しました。シーズンを通しての一貫したパフォーマンスが評価され、彼はセルビア・スーペルリーガ年間ベストイレブンに選出されました。2018年7月5日には、パルチザンへのレンタル期間がさらに1シーズン延長されました。
3.2.4. フェヘールヴァールへのレンタル移籍
2019年9月1日、パンティッチはハンガリーのフェヘールヴァールに2019-20シーズン終了までのレンタル移籍で加入しました。
3.2.5. チュカリチュキへのレンタル移籍
2020年8月13日、パンティッチはセルビアのFKチュカリチュキへ2020-21シーズン終了までのレンタル移籍で復帰しました。2日後の8月15日、FKズラティボル・チャイェティナ戦でリーグデビューを果たし、チームはアウェイで5-1の大勝を収めました。
3.3. パルチザンへの完全移籍復帰
2021年6月16日、パンティッチはチェルシーFCとの契約満了後、FKパルチザンへ完全移籍で復帰しました。この復帰は、彼が自身のキャリアにおいて最も重要な役割を担うクラブであるパルチザンへの強い思い入れを示しています。2021年7月29日、UEFAヨーロッパカンファレンスリーグ予選2回戦のFC DAC 1904ドゥナイスカー・ストレダ戦で、ビブラス・ナトコからのコーナーキックのこぼれ球を、パンティッチが素晴らしいシュートで決め、チームにリードをもたらしました。
3.4. FCスパルタク・トルナヴァ
2024年より、ダニロ・パンティッチはスロバキアのFCスパルタク・トルナヴァに所属し、選手としてのキャリアを継続しています。
4. 代表キャリア
ダニロ・パンティッチは、セルビアの各世代別代表チームで国際的なキャリアを積みました。
4.1. ユース代表チーム
パンティッチは、セルビアU-17代表およびセルビアU-19代表でプレーしました。U-19代表では、2014年10月10日のサンマリノU-19代表戦で試合開始20分以内に2ゴールを挙げ、セルビアの4-0の勝利に貢献しました。この試合はUEFA U-19欧州選手権2015予選の初戦でした。2014年10月12日には、UEFA U-19欧州選手権予選のアルメニアU-19代表戦で初めてU-19代表のキャプテンを務め、チームは1-0で勝利しました。彼はセルビアU-21代表としても活躍し、国際舞台での経験を積みました。
5. キャリア統計
ダニロ・パンティッチのクラブおよび国際キャリアの総合的な統計データは以下の通りです。
クラブ | シーズン | リーグ | 国内カップ | リーグカップ | ヨーロッパ | その他 | 合計 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
パルチザン | 2012-13 | セルビア・スーペルリーガ | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - | 1 | 0 | ||
2013-14 | セルビア・スーペルリーガ | 10 | 1 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | - | 10 | 1 | |||
2014-15 | セルビア・スーペルリーガ | 7 | 1 | 0 | 0 | - | 6 | 0 | - | 13 | 1 | |||
合計 | 18 | 2 | 0 | 0 | - | 6 | 0 | - | 24 | 2 | ||||
チェルシー | 2015-16 | プレミアリーグ | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 0 | 0 | |
フィテッセ (loan) | 2015-16 | エールディヴィジ | 6 | 0 | 0 | 0 | - | 2 | 0 | - | 8 | 0 | ||
エクセルシオール (loan) | 2016-17 | エールディヴィジ | 9 | 0 | 2 | 0 | - | - | - | 11 | 0 | |||
パルチザン (loan) | 2017-18 | セルビア・スーペルリーガ | 31 | 4 | 4 | 1 | - | 11 | 0 | - | 46 | 5 | ||
2018-19 | セルビア・スーペルリーガ | 32 | 6 | 5 | 1 | - | 8 | 1 | - | 45 | 8 | |||
合計 | 63 | 10 | 9 | 2 | - | 19 | 1 | - | 91 | 13 | ||||
フェヘールヴァール (loan) | 2019-20 | ネムゼティ・バイノクシャーグI | 8 | 0 | 3 | 0 | - | - | - | 11 | 0 | |||
チュカリチュキ (loan) | 2020-21 | セルビア・スーペルリーガ | 28 | 1 | 1 | 0 | - | - | - | 29 | 1 | |||
パルチザン | 2021-22 | セルビア・スーペルリーガ | 16 | 3 | 2 | 0 | - | 8 | 1 | - | 26 | 4 | ||
2022-23 | 18 | 1 | 0 | 0 | - | 1 | 0 | - | 19 | 1 | ||||
2023-24 | 2 | 0 | 0 | 0 | - | 1 | 0 | - | 3 | 0 | ||||
合計 | 36 | 4 | 2 | 0 | - | 10 | 1 | - | 48 | 5 | ||||
キャリア通算 | 168 | 17 | 17 | 2 | 0 | 0 | 37 | 2 | 0 | 0 | 222 | 21 |
6. タイトル
ダニロ・パンティッチは、そのキャリアを通じて、所属クラブと個人で複数のタイトルを獲得してきました。
6.1. クラブタイトル
FKパルチザン
- セルビア・スーペルリーガ: 2012-13, 2014-15
- セルビア・カップ: 2017-18, 2018-19
6.2. 個人タイトル
- セルビア・スーペルリーガ年間ベストイレブン: 2017-18
7. 評価と受容
ダニロ・パンティッチは、その若さからセルビアサッカー界で期待されたミッドフィールダーの一人です。彼のプレースタイルは、高い技術と戦術理解に裏打ちされており、特に攻撃的なミッドフィールダーとしての能力が評価されています。パスの精度やゲームメイク、そして重要な局面でのゴールやアシストといった貢献は、彼のキャリアにおける重要な要素でした。
チェルシーFCへの移籍は彼の才能に対する大きな評価でしたが、そこでの出場機会を得られず、レンタル移籍を繰り返した時期は、若手選手が直面するキャリアの困難を示唆しています。特に、フィテッセでの経験は、彼が自身の能力を証明するために強い意志を持っていたことを浮き彫りにしました。しかし、古巣FKパルチザンへの復帰後は、再びチームの中心選手として活躍し、その才能を再確認させました。特に最初のパルチザンへのレンタル移籍期間中には、リーグの年間ベストイレブンに選出されるなど、その一貫したパフォーマンスが高く評価されました。彼は困難な状況にも粘り強く取り組み、最終的に自身のサッカーへの情熱と能力をピッチ上で示し続けています。彼のキャリアは、エリートクラブでの挑戦と、自身のルーツであるクラブでの成功という、両面での経験が特徴的です。