1. 幼少期からアマチュア時代
中村奨吾選手は、幼い頃から野球に打ち込み、高校・大学と順調にその才能を開花させていきました。
1.1. 幼少期と野球の始まり
中村奨吾は1992年5月28日に兵庫県三木市で生まれた。三木市立みなぎ台小学校2年生の時に「三田リトル」で野球を始め、三木市立吉川中学校では少年野球チーム「三田ヤング」に所属していた。父親の優仁も天理高等学校野球部OBであり、中村が小学生、中学生の頃はコーチを務めるなど、練習に付き添いアドバイスを送っていた。父親は高校時代に夏の甲子園に出場し、後に中村のプロ入り時の監督となる伊東勤と対戦した経験を持つ。卒業後は電電近畿(現:NTT西日本)で野球を続けた。
1.2. 高校時代
天理高等学校では1年生の時に外野手としてベンチ入りを果たした。2年生の時には、夏の甲子園・全国大会の1回戦で「3番・中堅手」、2回戦では「3番・左翼手」として先発出場し、計7打数5安打3打点、打率.714という好成績を残した。3年生の時には、春の選抜高校野球に1回戦で「3番・中堅手」として先発出場したが無安打に終わり、チームも敗退した。同年夏の甲子園・全国大会1回戦では「3番・三塁手」で出場し、3打数1安打1打点だったが、チームは山田哲人、坂本誠志郎らを擁する履正社に敗れた。高校の1学年先輩には西浦直亨がいる。
1.3. 大学時代とドラフト
早稲田大学に進学し、1年生時の春のリーグ戦で初出場を果たした。守備コーチを務めていた八木茂の助言により、2年生時の春にそれまでの左翼手から二塁手に転向した。
3年生時の7月には、第39回日米大学野球選手権大会の日本代表に選ばれた。大会では全試合「5番・中堅手」として先発出場し、4回戦で三塁打、5回戦では先制適時打とソロ本塁打を放つなどの活躍を見せ、大会通算打率.438を記録した。4年生時にはチームの主将を任された。同年7月には、第27回ハーレムベースボールウィークの日本代表にも選出され、全試合で4番打者を務め(中堅手または指名打者)、第2戦と第5戦で適時打を打った。大学4年間でのリーグ通算成績は、82試合出場、321打数94安打46打点、本塁打11本、盗塁18、打率.293を記録している。また、2年生から4年生のそれぞれの秋季リーグで東京六大学野球リーグのベストナイン(いずれも二塁手)を受賞している。
2014年10月23日に行われたドラフト会議では、千葉ロッテマリーンズから1位指名を受け、契約金1.00 億 JPYプラス出来高5000.00 万 JPY、年俸1500.00 万 JPY(金額はいずれも推定)で合意し入団した。背番号は23となった。2015年3月25日の早稲田大学の卒業式当日、中村は開幕一軍メンバーに選ばれていたため、開幕戦が行われる福岡へ移動しており、式には欠席した。早稲田大学の同級生である有原航平も同じく1巡目指名を受け、北海道日本ハムファイターズに入団している。
2. プロ入り後
中村奨吾選手は、プロ入りから現在に至るまで、常に進化を続け、チームの主力選手として活躍しています。
2.1. 2015年-2017年: 入団初期と適応期

2015年は、開幕を一軍で迎え、3月29日の対福岡ソフトバンクホークス戦(福岡ヤフオク!ドーム)で、根元俊一の代走としてプロ初出場した。4月2日の対北海道日本ハムファイターズ戦(QVCマリンフィールド)では鈴木大地の代打でプロ初打席に立ったが、空振り三振に倒れた。同8日の対オリックス・バファローズ戦(京セラドーム大阪)では「9番・二塁手」でプロ初の先発出場を果たし、第2打席で初安打を記録した。同12日の対埼玉西武ライオンズ戦(西武プリンスドーム)では代走で途中出場した後に回ってきた打席で適時打を打ち初打点を記録。さらに「1番・三塁手」で先発出場した4月30日の対西武戦(QVCマリン)では第1打席でプロ初となる「初回先頭打者本塁打」を放った。新人選手のプロ初本塁打が初回先頭打者本塁打になったのは1998年の坪井智哉以来で、日本球界で6人目、パシフィック・リーグでは4人目、ロッテの選手では初の快挙だった。シーズン前半は途中出場が多かったが、7月15日の対オリックス戦(京セラドーム大阪)以後は、今江敏晃の死球による負傷の影響で三塁手のレギュラーに定着し、今江復帰後は二塁手で起用された。打撃面では7月の一時期を除いて打率は.250を下回る状況が続いたが、クリーンナップを除く6つの打順で出場。守備面では、二塁手、三塁手、遊撃手、左翼手、中堅手の5つのポジションで出場し、111試合に出場、打率.230、5本塁打、21打点、4盗塁を記録した。
2016年は、前年に三塁手のレギュラーであった今江が楽天へ、二塁手のレギュラーであったルイス・クルーズが巨人へ移籍し、新外国人のヤマイコ・ナバーロが不祥事により1か月間の出場停止処分となったことで、3月25日に行われた日本ハムとの開幕戦(QVCマリン)に「9番・二塁手」として出場し、プロ初の開幕スタメンを飾った。ナバーロが復帰すると三塁手として出場を続け、5月5日の対楽天戦(楽天koboスタジアム宮城)では4安打6出塁3打点と活躍したが、翌6日からの1か月では55打数4安打、打率.073と打撃の調子を落とし、守備の面でもミスが目立ったため交流戦途中の6月8日にプロ入り後初の二軍降格を経験した。最短の10日で一軍に復帰するが、8月4日に再び二軍に降格。同19日に再昇格したが、その後も打撃の調子が上がらずに苦しんだ。しかし、9月24日の対オリックス戦(QVCマリン)では9回に同点本塁打を打ち、チームはサヨナラ勝ちでクライマックスシリーズ出場を決めた。レギュラーシーズン最終戦であった10月5日の対楽天戦(QVCマリン)でも適時二塁打を含む2安打を放つなど、勝負強さを示して復調をアピールしたことで、クライマックスシリーズでは、2試合いずれも「9番・三塁手」として出場した。打撃面では7月下旬を最後に打率は.210を下回る状況が続いたが、守備面では二塁手(32試合)、三塁手(50試合)で先発起用され、最終的には108試合の出場で打率.201、6本塁打、25打点、4盗塁を記録した。11月25日、700.00 万 JPY増となる推定年俸3200.00 万 JPYで契約更改した。この席上で併せて、背番号を過去に有藤通世や今江敏晃などが着用し、ロッテにおける「特別な背番号」とされている8へ変更することが発表された。球団側は「期待も込めて。自覚も変わる。来年はレギュラーを取って、中心選手になって球団の顔になって欲しい」と、背番号8に込める期待を語った。
2017年は、鈴木大地を二塁手にコンバートする方針から、遊撃手のレギュラー争いをする立場と位置付けられて、キャンプインを迎えた。3月31日に行われたソフトバンクとの開幕戦(ヤフオクドーム)では、「9番・遊撃手」で2年連続の開幕スタメンに起用されたが2打席連続三振で途中交代。その後も不調に苦しみ、4月6日に早くも二軍に降格した。5月3日に一軍に復帰するが、わずか4試合の出場の後に、5月8日にシーズン2回目の二軍降格を経験した。この時点で、17打数無安打、打率.000と、プロ入り後は最悪といえるスランプだった。二軍で結果を残し、6月17日に一軍へ復帰。翌18日の巨人戦でシーズン初安打を打つと打撃の調子が上向きになり、以後はマット・ダフィーや大嶺翔太に替わって三塁手のレギュラーとして起用される。9月26日の対ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では、先制の9号2点本塁打を打つなど、勝利に直結する活躍を見せる場面が増え、シーズン終盤には5番で起用される試合もあった。オールスターブレイク以後に限れば、主に6番で起用され、打率.294、7本塁打、11盗塁を記録し、特に9月以後だと打率.294(102打数30安打)、3本塁打、8盗塁と結果を残した。守備面では、三塁手(58試合)、遊撃手(23試合)で先発起用され、最終的には85試合(うち先発で81試合)に出場、打率.275、9本塁打、32打点、11盗塁を記録した。特に盗塁数はプロ入り後初めての2桁となり、手応えをつかむシーズンとなった。また打撃面でも、同シーズン後半から、福浦和也のアドバイスをきっかけに「打撃そのものは変えていないが、『早めにとって、ゆっくり伸ばす』という意識で、タイミングの取り方を変えた」ことで、「詰まらされてもしっかり振れている」打撃ができるようになり、きっかけをつかむことができたという。シーズンオフの10月12日に第1回アジア プロ野球チャンピオンシップの日本代表に選出された。11月29日、年俸3500.00 万 JPY(300.00 万 JPY増、推定)で契約を更改した。シーズンオフには監督が伊東勤から井口資仁へと交代。井口は就任早々に、中村を二塁手、鈴木大地を三塁手へとコンバートする方針を示し、中村も「セカンドは一番やってみたかったポジション。大学の時もやっていた。何とかセカンドのレギュラーポジションをとって、信頼される選手になりたい」と前向きな姿勢を示した。
2.2. 2018年-2021年: 飛躍と主将就任
2018年は、「期待の若手」としての位置付けであった前年までの3シーズンとは異なり、「絶対的なレギュラー」としての地位の確立を期待されて迎えるシーズンになった。同年シーズンから井口が監督に就任することになったが、井口は自身にとって大学時代からの「憧れの存在」であることと共に、井口監督がチーム作りの構想として自身を中心選手の1人と位置付けたことから、「意気に感じて、やらないといけない」として気持ちの変化が生まれたことなどから、「30本塁打、30盗塁を目指せる」といわれるなど、シーズンのブレイク候補として挙げられるようになり、本人も「3割、30盗塁」を目標と公言してキャンプインした。キャンプ、オープン戦を通して好調を示し、3月30日に行われた楽天との開幕戦(ZOZOマリンスタジアム)では、「3番・二塁手」で先発出場。3安打、1打点の活躍をみせると、翌31日の対楽天戦では、第2打席でシーズン1号本塁打を打った。オールスターゲームに監督推薦で初選出された。最終的な成績は、自身初の全試合出場および規定打席到達を果たし、打率.284、8本塁打、リーグ2位となる39盗塁という成績を残した。また、二塁手ではリーグトップとなる守備率.993を記録し、自身初となるゴールデングラブ賞を受賞した。
2019年は、3月29日に行われた楽天との開幕戦(ZOZOマリン)で、「3番・二塁手」として先発出場し、2安打、1本塁打、1打点と活躍した。4月5日の対ソフトバンク戦(ヤフオクドーム)では、2打席連続本塁打を打つなど3安打猛打賞の活躍をみせるなど、開幕から10試合で打率.361、5本塁打、10打点、6盗塁と好スタートを切った。しかし4月21日の試合前、バッテリーコーチの清水将海がノックした飛球を追って同コーチと衝突。千葉・習志野市内の病院で顔面挫創と診断され、左目の下を10針縫った。同日の試合は首脳陣の判断で先発を外れ、2017年から続いていた連続フルイニング出場は188試合でストップしたが、8回に代打で登場し、空振り三振に倒れた。以降は不調が続き5月6日には6番に降格。角中勝也や清田育宏に3番打者を譲る形となり、5月21日にはスタメン落ちとなった。6月は月間打率.301と調子を取り戻したが、その他の月は.250以下となってしまい、最終的に打率.232でシーズンを終えた。しかし、自己最多となる17本塁打、59打点を記録し、チーム唯一となる全試合出場も達成した。
2020年は、6月19日に行われたソフトバンクとの開幕戦(福岡PayPayドーム)に「6番・二塁手」で出場。5年連続の開幕スタメンとなった。開幕3戦目となる6月21日のソフトバンク戦(PayPayドーム)では、2回表に二保旭から、頭部への死球を受けた。6月13日に行われた西武との練習試合(メットライフドーム)でも松本航から頭部死球を受けており、9日間で2度頭部死球を受ける異例の事態となった(両日共に、頭部打撲と診断された)。それでも、次戦となる6月23日のオリックス戦(ZOZOマリン)に先発出場し、6回裏には左越えへ同点本塁打を打った。さらに、6月25日の同カードでは、初回にルーキーの村西良太から自身初となる満塁本塁打を打ち、チームの勝利に貢献。この勝利でチームは4年ぶりの5連勝となり、1530日ぶりに単独首位に立った。8月は月間打率.326と調子を上げたが、9月以降は.211と低迷。最終的にリーグ18位となる打率.249、同15位となる105安打を記録。この2つはいずれもチームトップとなった。3年連続の全試合出場も記録した。11月14日から行われたソフトバンクとのクライマックスシリーズでは2試合とも「6番・二塁手」で出場。2試合で8打数2安打、1打点、打率.250を記録するも、チームは敗退した。シーズンオフの12月26日に、500.00 万 JPY減の年俸6700.00 万 JPYでサインし(金額は推定)、翌年からキャプテンを務めることが発表された。
2021年は、3月26日に行われたソフトバンクとの開幕戦(福岡PayPayドーム)に「6番・二塁手」で出場。6年連続の開幕スタメンとなった。開幕3戦目以降は「3番・二塁手」に定着。4月2日に行われた対日本ハム戦(札幌ドーム)では6打数4安打、3得点の好成績を残し、翌3日の同カードでも5打数3安打、3得点と、2日連続の猛打賞を記録した。オールスターゲームに自身2度目の監督推薦にて選出された。9月15日のソフトバンク戦(福岡PayPayドーム)でスチュワートから中前適時打を打ち、33試合を残し自身キャリアハイとなる60打点に到達した。シーズンを終え、打率は自己最高の.284には1厘届かなかったものの、得点圏打率では.297、67打点、76四球と自己最高を記録しチームに貢献。四球に関してはチームトップでシーズンを終えた。4年連続の全試合出場と2年連続の全試合先発出場も記録した。また、二塁手での守備率では.987と高い率を記録し、東北楽天ゴールデンイーグルスの浅村栄斗に35票差の大差をつけ、3年ぶり2度目のゴールデングラブ賞を受賞した。ロッテの二塁手が1人で複数回受賞したのは球団初となった。また、最も"噛むこと"を広く啓発して活躍したアスリートに贈るアワード「噛むVP」を受賞した。NPB AWARDSでは、ベストナインを二塁手部門でプロ7年目で初受賞した。契約更改では、4000.00 万 JPY増で1.00 億 JPYを突破し、推定年俸1.10 億 JPYでサインした。翌年も主将を継続することを発表した。
2.3. 2022年-現在: 節目と近年の活躍
2022年は、3月25日に行われた楽天との開幕戦(楽天生命パーク宮城)に「3番・二塁手」で出場。7年連続の開幕スタメンとなった。6回一死満塁、則本昂大からバットを折りながらも左前2点適時打を打ち、12球団一番乗りとなる適時打を記録した。4月3日、3月31日に三木亮と柿沼友哉が新型コロナウイルスに感染したことに伴い、2日に感染の有無を調べるPCR検査を受け、陽性判定。特例2022で出場選手登録を抹消された。これにより、2017年6月28日から続いていた連続出場が630試合でストップした。6月1日、東京ヤクルトスワローズ戦でプロ初の4番で先発出場し、2回表に原樹理から左翼席中段に飛び込む本塁打を打ち、史上22人目となる「全打順本塁打」を達成した。7月18日の対ソフトバンク戦では3回裏に中犠飛、19日の対西武戦では7回裏に左越3ラン、20日の同カードには5回裏に左二2点適時打を打ち、自身初の3試合連続のお立ち台に上がった。9月14日の対日本ハム戦で、6回裏に河野竜生(投手)、清水優心(捕手)のバッテリーから二塁へ盗塁を決め、通算100盗塁を達成した。11月4日、4月に取得していた国内FA権を行使せず残留することで合意したとチームが発表した。同月19日に契約更改に臨み、新たに4年契約を結んだことを公表した(年俸は非公表だが、4年総額10.00 億 JPY規模と報じられた)。翌年も主将を継続することを発表した。
2023年は、3月31日に行われたソフトバンクとの開幕戦(福岡PayPayドーム)に「2番・二塁手」で出場。8年連続の開幕スタメンとなった。4月11日の対西武戦で、「3番・二塁手」で先発出場し、プロ野球史上519人目となる通算1000試合出場を達成した。この試合の初回には先制の2点本塁打を放ち、自らの節目を祝った。8月22日の対ソフトバンク戦では3回裏に勝ち越しのソロ本塁打を放ち、自身初となる2年連続2桁本塁打を記録した。この年の打率は.220で、規定打席到達者の中ではリーグワーストとなった。二塁手としてゴールデングラブ賞を獲得し、3度目の受賞となった。
2024年は、吉井理人監督から「体の負担を減らして、バッティングに集中してほしい」と説明を受けて、三塁手にコンバートされた。開幕から22試合連続で先発出場を続けていたものの、打率.184、0本塁打、3打点と不調が続いた。4月27日の試合で今季初の先発を外れ、腰痛から復帰した安田尚憲が三塁手で起用された。一軍復帰後も終始不調が続き、7年続いた年間規定打席には10足りず、また7年連続100安打以上の記録も途切れた。契約更改では複数年契約中だったため年俸2.00 億 JPYで現状維持となったが、来季は二塁手へ再コンバートして挑むと会見で語った。
3. プレースタイル
中村奨吾選手は、打撃面では選球眼の改善が見られ、守備・走塁面では高い能力を誇ります。
3.1. 打撃
プロ入り当初は、「広角に打ち分ける技術を持つ打者」と評価されていた。対左投手を特に得意とする傾向にあり、プロ入り後の3シーズンでの対左投手のOPSは、「.660(対右投手.592)→.699(対右投手.548)→.920(対右投手.731)」と高い数値で推移しており、特に2017年シーズンの対左投手のOPSはリーグ5位相当という高い水準であった。
また、プロ入りから数シーズンは三振の数に対して四球が少なく、またボール球スイング率が高い傾向にあった(いわゆるフリースインガーの傾向が強かった)。三振率はプロ入り後から23.1%(2015年)、21.5%(2016年)、20.2%(2017年)と推移し、四球率は5.0%(2015年)、8.0%(2016年)、6.4%(2017年)だった。ボール球スイング率は40.7%(2015年)、39.0%(2016年)、33.9%(2017年)と推移し、特にボール球スイング率はプロ入り後3年連続でリーグ内でワースト5位以内に相当する数値を残していた。しかし、2020年の三振率は19.4%、四球率は10.4%を記録するなど、選球眼は近年改善されてきている。
3.2. 守備・走塁
遠投115 m、50メートル走6秒0を誇る。キャリアハイの39盗塁を含め、2桁盗塁を4度記録したことがある。
二塁手としての守備力も高く、2018年、2021年、2023年にはゴールデングラブ賞を受賞している。データ分析の専門家が投票して守備力を評価するDELTA FIELDING AWARDSにおいても二塁手部門で4年連続でリーグ2位以内に入るなど、堅実かつ守備範囲の広い守備力がある。
三塁手として起用されることもあり、2016年には三塁手としてUZRが「8.0」(リーグ2位)、2017年には三塁手としてのUZRが「6.5」(リーグ1位)を記録した。
4. 人物・エピソード
中村奨吾選手は、野球に対して真摯な姿勢で向き合い、家族や周囲の人々からの影響を大切にする一面を持っています。
4.1. 家族と影響を与えた人物
父親の優仁も天理高等学校野球部OBであり、2年生時には夏の甲子園に「3番・左翼手」で出場している。この際に中村がプロ入り時の監督となる伊東勤と対戦した経験がある。その後、電電近畿(現NTT西日本)に進んで野球を続けた。中村が小学生、中学生の時はコーチを務めるなどし、練習に付き合いアドバイスを送っていた。
同級生の中で意識している選手は山田哲人であり、小学生時は兵庫県内の同じリーグでプレー経験があり、甲子園でも対戦経験がある。
早稲田大学時代から井口資仁が「憧れであり目標の選手」であったが、プロでのドラフト指名がロッテであったことで、プロではチームメイト、そして所属チームの指揮官と選手の関係になった。井口を目標とするようになったのは、大学2年生の春に二塁手へのコンバートが決まった際に、自身と同じ「俊足巧打の右打者」で手本になり得る存在は誰かをイメージした際に浮かんだのが井口であったからだという。また、「(現役時代の井口のような)逆方向にも強い打球が打てる打者」を理想像としているという。
4.2. 性格と趣味
プロ入り当初は「最も地味なドラフト1位指名選手」と称されていたが、中村本人は2015年の春季キャンプの際に「理想は中距離打者。率(打率)も残せて、足もいかせれば。実力で注目してもらえれば(と思います)」と述べていた。
大学時代から、漫画は読まず、ゲームもせず、休みのときは買い物のため以外での外出を控えて疲労の回復に努めるほどの「野球の虫」であるという。また下戸であり、お酒が飲めない。真面目な性格の持ち主であり、趣味として「人間観察」を挙げている。好きな食べ物は肉、その中でも馬肉が好き。
2020年に一般女性と結婚したと2021年の契約更改後に発表しており、結婚により「落ち着いて野球できた」と語っている。
4.3. 主なエピソード
2019年4月21日の試合前、バッテリーコーチの清水将海がノックした飛球を追って同コーチと衝突。顔面挫創と診断され、左目の下を10針縫うアクシデントに見舞われた。この影響で2017年から続いていた連続フルイニング出場は188試合でストップしたが、同日の試合で代打出場し、連続試合出場記録は継続した。
2020年には、6月13日の練習試合と6月21日の開幕後の試合で、9日間という短期間に2度、頭部への死球を受けるという異例の事態に見舞われた(いずれも頭部打撲と診断)。しかし、これらの負傷にもかかわらず、次の試合には先発出場を続け、チームの勝利に貢献した。
5. 国際大会代表歴
中村奨吾は、大学時代から日本代表として国際舞台で活躍してきました。
- 2013年日米大学野球選手権大会日本代表
- 2014 ハーレムベースボールウィーク 日本代表
- 2017 アジア プロ野球チャンピオンシップ 日本代表(優勝)
6. 表彰・記録
中村奨吾選手がプロ入り後に達成した主な記録と受賞歴を以下に示します。
6.1. 表彰
- ベストナイン:1回(二塁手部門:2021年)
- ゴールデングラブ賞:3回(二塁手部門:2018年、2021年、2023年)
- ジェットスター スーパースター賞(2018年)
- 噛むVP(2021年)
6.2. 節目の記録
- 通算1000試合出場:2023年4月11日、対埼玉西武ライオンズ1回戦(ベルーナドーム)、「3番・二塁手」で先発出場 ※史上519人目
- 通算1000安打:2024年6月25日、対東北楽天ゴールデンイーグルス10回戦(ZOZOマリンスタジアム)、3回裏に内星龍から右中間適時二塁打 ※史上319人目
- 通算100盗塁:2022年9月14日、対日本ハム戦で達成
6.3. その他の記録
- シーズン20死球以上で全試合フルイニング出場:2018年 ※史上初
- シーズン22死球:2018年 ※球団記録
- 全打順本塁打:2022年6月1日、対東京ヤクルトスワローズ2回戦(明治神宮野球場)、4番で先発出場、2回表に原樹理から左越ソロ ※史上22人目
- オールスターゲーム出場:2回(2018年、2021年)
7. 背番号
中村奨吾選手がプロ経歴中に使用した背番号は以下の通りです。
- 23(2015年 - 2016年)
- 8(2017年 - )
背番号8は、千葉ロッテマリーンズにおいて有藤通世や今江敏晃などが着用した「特別な背番号」とされており、球団からの大きな期待が込められている。
8. 登場曲
中村奨吾選手が打席に入る際に使用した登場曲は以下の通りです。
- 「My Songs Know What You Did In The Dark (Light Em Up)」Fall Out Boy(2015年)
- 「365」ナオト・インティライミ(2015年 - 2016年)
- 「Green boys」GReeeeN(2015年)
- 「マリーンズカンパイガールズ」カンパイ娘(2015年)
- 「FREEDOM」HOME MADE 家族(2015年)
- 「Bad Man(feat. Robin Thicke, Joe Perry & Travis Barker)」Pitbull(2016年)
- 「WIND」倖田來未(2016年)
- 「未来へ」ナオト・インティライミ(2016年)
- 「2% feat.湘南乃風」10-FEET(2016年)
- 「On Our Way」The Royal Concept(2017年)
- 「Nothing Helps」ONE OK ROCK(2017年 - 2020年) ※3打席目以降
- 「Change」ONE OK ROCK(2018年)
- 「Wasted Nights」ONE OK ROCK(2019年)
- 「Something Big」Shawn Mendes(2019年)
- 「GONG」WANIMA(2019年)
- 「Eye of the storm」ONE OK ROCK(2020年)
- 「Head High」ONE OK ROCK(2021年)
- 「The Last Time」ONE OK ROCK(2022年)
- 「Trust Me」Natural Lag(2021年 - 2022年) ※3打席目以降
- 「Prove」ONE OK ROCK(2022年10月 - 4月) ※1打席目、2023年4月からは3打席目以降
- 「War(feat.Taka)」Sum 41(2023年4月) ※1,2打席目
- 「Radioactive」Imagine Dragons(2023年4月 - 5月) ※1,2打席目
- 「Centuries」Foll Out Boy(2023年4月 - 5月) ※3打席目以降
- 「Space Sonic」ELLEGARDEN(2023年5月) ※1打席目
- 「Faint」Linkin Park(2023年5月) ※2打席目
- 「Heart Attack」Demi Lovato(2023年5月 - 7月) ※3打席目
- 「Bro Hymn」Pennywise(2023年5月 - 7月) ※4打席目
- 「モンスター」ELLEGARDEN(2023年6月) ※1打席目
- 「Change the World」MAN WITH A MISSION(2023年6月) ※2打席目
- 「My Name Is Thunder 」JET & The Bloody Beetroots(2023年7月) ※1打席目
- 「Misery Business」 Paramore(2023年7月) ※2打席目
- 「Red Hot」ELLEGARDEN(2023年8月) ※1打席目
- 「What I've Done」 LINKIN PARK(2023年8月) ※2打席目
- 「Burn It to the Ground」Nickelback(2023年8月) ※3打席目
- 「Kickstart My Heart」Mötley Crüe(2023年8月) ※4打席目
- 「Puisuit of Happiness」 Kid Cudi(2023年8月) ※5打席目
- 「Strawberry Margarita」 ELLEGARDEN(2023年8月 - 9月) ※1打席目
- 「Lightning Strike」Escape the Fate(2023年8月 - 10月) ※2打席目
- 「sTraNgeRs」Bring Me The Horizon(2023年8月 - 10月) ※3打席目
- 「Where You Are (Zedd Remix)」John Summit, HAYLA & Zedd(2023年8月 - 10月) ※4打席目
- 「Numb」Linkin Park(2023年8月 - 10月) ※5打席目
- 「Expert」KREVA(2023年10月) ※1打席目
- 「Standing Next to You」JUNG KOOK(2024年3月 - ) ※1打席目
- 「Makuhari」Bonbero, LANA, MFS, Watson(2024年3月 - ) ※2, 3打席目
- 「切望」SUPER BEAVER(2024年3月 - ) ※4打席目以降
9. 年度別成績
中村奨吾選手の年度別の打撃成績と守備成績を以下に示します。
9.1. 打撃成績
年度 | 所属 | 試合 | 打席 | 打数 | 得点 | 安打 | 2塁打 | 3塁打 | 本塁打 | 塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁死 | 犠牲バント | 犠牲フライ | 四球 | 故意四球 | 死球 | 三振 | 併殺打 | 打率 | 出塁率 | 長打率 | OPS |
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2015 | ロッテ | 111 | 299 | 269 | 43 | 62 | 4 | 4 | 5 | 89 | 21 | 4 | 4 | 9 | 2 | 15 | 0 | 4 | 69 | 4 | .230 | .279 | .331 | .610 |
2016 | 108 | 325 | 278 | 37 | 56 | 10 | 1 | 6 | 86 | 25 | 4 | 4 | 14 | 1 | 26 | 0 | 6 | 70 | 0 | .201 | .283 | .309 | .592 | |
2017 | 85 | 312 | 280 | 32 | 77 | 13 | 2 | 9 | 121 | 32 | 11 | 3 | 5 | 1 | 20 | 1 | 6 | 63 | 5 | .275 | .336 | .432 | .768 | |
2018 | 143 | 639 | 552 | 82 | 157 | 30 | 3 | 8 | 217 | 57 | 39 | 15 | 0 | 5 | 60 | 2 | 22 | 94 | 11 | .284 | .374 | .393 | .767 | |
2019 | 143 | 586 | 512 | 68 | 119 | 22 | 0 | 17 | 192 | 59 | 12 | 6 | 6 | 3 | 53 | 2 | 12 | 96 | 10 | .232 | .317 | .375 | .692 | |
2020 | 120 | 499 | 422 | 57 | 105 | 25 | 0 | 8 | 154 | 49 | 6 | 3 | 15 | 2 | 52 | 1 | 8 | 97 | 6 | .249 | .341 | .365 | .706 | |
2021 | 143 | 615 | 506 | 78 | 143 | 36 | 2 | 9 | 210 | 67 | 12 | 7 | 15 | 8 | 76 | 1 | 10 | 90 | 8 | .283 | .382 | .415 | .797 | |
2022 | 138 | 596 | 498 | 52 | 128 | 31 | 0 | 12 | 195 | 68 | 15 | 6 | 9 | 9 | 70 | 3 | 10 | 86 | 13 | .257 | .354 | .392 | .746 | |
2023 | 137 | 584 | 508 | 61 | 112 | 23 | 0 | 11 | 168 | 48 | 3 | 1 | 13 | 4 | 52 | 2 | 7 | 89 | 20 | .220 | .299 | .331 | .630 | |
2024 | 120 | 433 | 376 | 36 | 88 | 18 | 0 | 4 | 118 | 27 | 2 | 2 | 11 | 0 | 41 | 0 | 5 | 75 | 15 | .234 | .318 | .314 | .631 | |
通算:10年 | 1248 | 4888 | 4201 | 546 | 1047 | 212 | 12 | 89 | 1550 | 453 | 108 | 51 | 97 | 35 | 465 | 11 | 90 | 829 | 92 | .249 | .334 | .369 | .703 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最多
9.2. 守備成績
年度 | 球団 | 二塁手 | 三塁手 | 遊撃手 | 外野手 | ||||||||||||||||||||
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試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | 試合 | 刺殺 | 補殺 | 失策 | 併殺 | 守備率 | ||
2015 | ロッテ | 30 | 32 | 68 | 0 | 5 | 1.000 | 57 | 25 | 83 | 5 | 6 | .956 | 5 | 1 | 7 | 0 | 2 | 1.000 | 17 | 19 | 1 | 0 | 0 | 1.000 |
2016 | 37 | 77 | 105 | 3 | 24 | .984 | 70 | 41 | 112 | 8 | 13 | .950 | - | - | |||||||||||
2017 | - | 69 | 42 | 102 | 6 | 8 | .960 | 27 | 37 | 51 | 6 | 9 | .936 | - | |||||||||||
2018 | 143 | 329 | 486 | 6 | 89 | .993 | - | - | - | ||||||||||||||||
2019 | 140 | 299 | 438 | 9 | 86 | .988 | - | - | - | ||||||||||||||||
2020 | 120 | 261 | 347 | 9 | 60 | .985 | - | - | - | ||||||||||||||||
2021 | 143 | 273 | 414 | 9 | 76 | .987 | - | - | - | ||||||||||||||||
2022 | 136 | 266 | 402 | 9 | 72 | .987 | - | - | - | ||||||||||||||||
2023 | 133 | 248 | 405 | 6 | 92 | .991 | - | - | - | ||||||||||||||||
2024 | - | 120 | 65 | 204 | 9 | 11 | .968 | - | |||||||||||||||||
通算:10年 | 882 | 1785 | 2664 | 51 | 504 | .989 | 196 | 173 | 501 | 28 | 38 | .960 | 32 | 38 | 58 | 6 | 11 | .941 | 17 | 19 | 1 | 0 | 0 | 1.000 |
- 2024年度シーズン終了時
- 各年度の太字はリーグ最高
- 太字年はゴールデングラブ賞受賞