1. 生い立ちと教育
増山江威子の出生、家族構成、幼少期の生活環境、そして声優としてのキャリア形成に影響を与えた初期の経験について詳述します。
1.1. 出生と幼少期
増山江威子は、1936年4月22日に東京府東京市(現在の東京都)品川区荏原で、4人姉妹の末っ子として、本名である政田 知子まさだ ともこ日本語として生まれました。血液型はO型です。
1.2. 話し方のコンプレックスと克服
幼少期、彼女はゆっくりとした話し方で、教師から「あなた、ちゃんとお話しできないの?」と言われたことにショックを受け、次第に自身の話し方に劣等感を抱くようになりました。当初はバレリーナを目指しレッスンも受けていましたが、肺病のため12歳で断念しました。その後、「何か夢を持ちたい」という思いから、話し方を克服するために12歳で新児童劇団(現在の劇団新児童)に入団し、麻生美代子に師事しました。この経験を通じて話し方のコンプレックスを克服し、自然と演技に興味を持つようになりました。
1.3. 演劇活動
15歳の頃、児童劇団の年齢制限を超えたため、同世代の毒蝮三太夫、稲吉靖司、影万里江、北浜晴子、豊原ミツ子らと共に「劇団山王」を立ち上げました。数年後、浅利慶太に請われて影万里江と共に劇団四季に移籍し、舞台女優としてのキャリアを積みました。この時期にテレビ出演や海外ドラマの吹き替えの仕事も経験し、声の仕事に興味を持つようになりました。
2. 経歴
増山江威子が声優としてのキャリアをどのように築き上げ、どのような哲学を持って仕事に取り組んだかについて解説します。
2.1. 声優への転向
舞台女優として活動する中で、私生活での時間の制約が生じ、不規則な時間のテレビや稽古が必要な舞台の仕事が難しくなっていきました。このため、「声の仕事だけに集中しよう」と決意し、家庭や子育てと両立しやすい声優業に専念するようになりました。高松里友子事務所を経て、1960年代から青二プロダクションに所属し、声優としての活動を本格化させました。
2.2. 所属事務所
増山江威子は、1960年代から死去するまで青二プロダクションに所属し、同事務所のベテラン声優として長きにわたり活躍しました。
2.3. 仕事への姿勢
彼女はアフレコにおいて「絵が主役」という考え方を持ち、「絵があるからこそ声もピッタリ合う」と語っていました。絵がない状態での演技は苦手とし、様々なキャラクターの声が混ざってしまうため、絵がないまま突然役を演じることを好まない傾向がありました。役作りに関しては、まず自分で役を作り上げてから演出側に披露し、その判断やアドバイスを受ける形が理想であると考えていました。
アニメのアフレコ現場で絵がほとんど入らない現状に苦言を呈したこともあります。ある作品では、絵の不足が原因でセリフの入れ忘れのように見えるシーンが完成してしまったり、絵と演技が一致しない場面が放送され、視聴者からの投書が届いたこともあったといいます。この経験から、彼女は現場で「恥はかきたくない」「何とか収録時には絵が欲しい」と要望することもあったと明かしています。
以前はテレビ番組への顔出し出演も多かったものの、晩年は「みんなの知ってる私の声はハニーや不二子などの若い声。そんな若いキャラクターのイメージを壊したくない」という理由から、顔出しをあまり好まなくなりました。しかし、『大胆MAP』では遠目でアフレコしている様子を撮影するという条件で出演を承諾し、2019年9月21日放送のNHK BSプレミアム『セカンドの美学』でも顔を映さないことを条件にインタビュー出演しました。
3. 代表的な役柄
増山江威子のキャリアにおいて特に象徴的であり、広く知られているキャラクターとその演技について掘り下げます。
3.1. 峰不二子
1977年の『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』より、峰不二子役を沢城みゆきに交代する2011年まで長年にわたり担当しました。元々、2本製作された『ルパン三世 パイロットフィルム』では増山が不二子を演じており、『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』にも参加予定でしたが、実際には二階堂有希子が不二子役を担当することになりました。『TV第1シリーズ』の演出を担当したおおすみ正秋は、増山がセクシーなシーンを演じることに難色を示したため、やむなく交代したと後に語っています。しかし、『TV第1シリーズ』第14話「エメラルドの秘密」ではキャサリン・マーチン役としてゲスト出演し、二階堂演じる不二子と会話を交わすシーンも存在します。
その後も不二子への強い思いを抱いていた増山は、『TV第2シリーズ』放送前のオーディションに参加し、不二子役を担当することになりました。『パイロットフィルム』が一般に知られていなかった当初は、「なぜ不二子が二階堂さんじゃないんだ」という抗議の投書が殺到しましたが、増山は「どうあがいても二階堂さんにはなれないから、私の持ち味でやるしかない」と奮起して演じ続けました。
増山は「不二子はすべての理想を兼ね備えた女性であり、いつも憧れている」と語っており、不二子のファンは女性が圧倒的に多いと述べています。ルパンについては、裏切っても不二子のことを想うところが「男性の可愛さみたいで、好きですネ」と語っていました。不二子を演じる際は「健康的な色気」を意識しており、「絵がセクシーなだけで、言動はそこまで色っぽさが無い」「あの人(不二子)自身が色っぽい訳ではなく、仕掛けや武器として色気を使っている」と考えていました。また、作品によってキャラクターデザインが変わり、それらの要素も異なる部分は、「泥棒のように手を変え、品を変え。相手によって芝居を変える」役者としての自身と重なり面白かったといいます。
自身が演じた中で思い出深いルパン作品には『ルパン三世 カリオストロの城』を挙げています。増山自身は、『カリオストロの城』での不二子の勇ましさに「これが不二子の本当の姿じゃないか、ベースはこれなのかもしれない」と感じたほか、クラリスに「捨てられたの?」と聞かれた不二子が「ううん、捨てたの」と答える場面が好きだと話していました。
2019年に原作者のモンキー・パンチが死去した際には、「役者は作品との出会いが全てです。私の財産となった『峰不二子』に出会えたこと。モンキー・パンチ先生に感謝しています」とコメントしました。2022年に次元大介役の小林清志が死去して以降は、『カリオストロの城』にも起用され評価の高い『TV第2シリーズ』当時のメインキャストで唯一の存命者でした。
3.2. バカボンのママ
『天才バカボン』はこれまでに5回テレビアニメ化されていますが、主要キャストが変わる中、バカボンのママだけは4作目『レレレの天才バカボン』まで一貫して増山が演じました。これは原作者である赤塚不二夫の希望であり、4回目のTVアニメ化に際して、赤塚からの唯一の希望が「ママの声だけは(増山から)変えないで欲しい」だったといいます。それまでに増山以外の声優が演じたのは、1作目の第70話「パパとママがけんかをしたのだ」で北浜晴子が代役を務めた1回のみです。
増山は私生活でも母親だったことから、ママ役を抵抗もなく自然と演じることができたと語っています。また、初めてママの絵を見た際「私、絶対ピッタリだわ」と思ったといいます。ある番組の収録で青梅赤塚不二夫会館へ行った際、壁に様々な赤塚のコメントが貼ってある中で実際に「ママは絶対増山さんじゃなきゃダメだ」と書かれているのを見つけた時は、「自分が勝手に言ってる訳ではなく、本当に原作者である先生に認められていた」という気持ちで、とてもうれしかったと語っています。
3.3. キューティーハニー
1973年放送の『キューティーハニー』で、初代ハニーの声を担当しました。リメイクである『キューティーハニーF』では友情出演として、神崎美津子の声を担当しました。さらに『Re:キューティーハニー』では別世界からやってきたという設定で初代ハニーを再演し、2005年に再びハニーを演じた際は、「こんないい作品に出会えたということはそれだけで嬉しいものですね」とコメントしています。
増山によると、それまでは可愛らしい役柄を演じることが多かったため、ハニーは彼女のキャリアにおいてセクシーな役を担当する転機となった役柄でした。
3.4. その他の主な役柄
増山江威子の声種は「上品で情熱的なメゾソプラノ」と評されていました。役柄としては、少女役から大人の女性役まで幅広く演じ、色っぽいキャラクターを演じる一方で、優しい母親役も多く担当しました。2005年のインタビューでは、老け役よりも若い感じの役が多いため「いつまでも若手で行くか!」という感覚であったと語っています。自身の声については、年齢を重ねるにつれ少しずつ音程が下がっているといい、若いキャラクターを演じるための音程を維持するトレーニングに苦労していることを2005年に明かしていました。
アニメソングの歌唱も数多く担当していました。これは『ひょっこりひょうたん島』で出会った宇野誠一郎が増山をよく起用するようになったためで、当初は「私でいいの?」と思ったものの、後に「とても嬉しいことだった」と回想しています。
海外作品では、ハンナ・バーベラ・プロダクション作品にも複数出演しています。吹き替えではリー・レミックを数多く担当しており、リー・レミックとは佇まいや骨格が似ていると言われ、一番アテやすいと語っていました。『ハイウェイ』も良かったが、特に『酒とバラの日々』には感動しており、とてもやりがいがあったといいます。
『ひょっこりひょうたん島』ではテケ役を演じました。当時は少年役にキャスティングされることなど想像もつかず「プリンちゃんかしら、チャッピーかしら」と女の子役だと思い込んでいたところ、NHKのプロデューサーに「いえ。男の子のテケですよ」と告げられ「エエーッ!私、男の子の役なんて、やったことないんです......」と思わず言ってしまったといいます。しかし、演じていたところ意外に楽しく、後に「やらせていただいて良かった」と述べています。
演じていて楽しかったキャラクターに『オバケのQ太郎』のU子役を挙げています。それまで自身が演じたことのないようなキャラクターだったため、第一声を発した際は「こういう風にやるのか、と録音スタッフがひっくり返った」と冗談交じりで述べており、「それまでのキャリアと異なる新しい役作りの楽しさ、声の仕事の醍醐味を再認識した作品」としています。
4. 声優としての出演作品
増山江威子が担当したアニメ作品のリストを、メディアの種類ごとに整理して提示します。
4.1. テレビアニメ
- 1963年
- エイトマン(まなみ)
- 鉄腕アトム (アニメ第1作)(ルシア、キピア、ユミ、ロビエット 他)
- 1965年
- ジャングル大帝
- スーパージェッター(ナナエ)
- 遊星少年パピイ(リコ)
- 1966年
- 新ジャングル大帝 進めレオ!(ルッキオ)
- ハリスの旋風(国松の母)
- 遊星仮面(ベルタ・ヘレン・アンドロメダ)
- 1967年
- 悟空の大冒険(竜子)
- 魔法使いサリー(第1作)(ゆみ子)
- 1968年
- 怪物くん(1968年 - 1969年、怪子姫)
- 巨人の星(1968年 - 1971年)
- 佐武と市捕物控(お鶴)
- 1969年
- アタックNo.1(桂城由美、吉村さとみ、真木村京子、シェレーニナ〈2代目〉 他)
- どろろ(チイ)
- ルパン三世 パイロットフィルム(峰不二子)
- 1970年
- ムーミン(1970年 - 1972年、テミィ、水の精)
- 1971年
- アンデルセン物語(キャンティ)
- 新オバケのQ太郎(U子)
- 珍豪ムチャ兵衛
- 天才バカボン(1971年 - 1972年、ママ)
- ふしぎなメルモ(母犬、秘書)
- 1972年
- ど根性ガエル(1972年 - 1974年、京子のママ)
- デビルマン(ファイアム、ベラ)
- 魔法使いチャッピー(チャッピー)
- ルパン三世 (TV第1シリーズ)(キャサリン・マーチン)
- 1973年
- ジャングル黒べえ
- ミクロイドS
- 山ねずみロッキーチャック(ポリー)
- キューティーハニー(第1作)(1973年 - 1974年、ハニー)
- 1974年
- 空手バカ一代
- グレートマジンガー(1974年 - 1975年、クレオ)
- 小さなバイキング ビッケ(1974年 - 1975年、ナレーション)
- 星の子チョビン(エクレア王妃)
- 1975年
- アラビアンナイト シンドバットの冒険(スガール)
- 一休さん(伊予の局〈母上さま〉、ナレーター)
- 元祖天才バカボン(1975年 - 1977年、ママ)
- ガンバの冒険(潮路〈初代〉)
- 少年徳川家康(於大)
- 草原の少女ローラ(お母さん)
- タイムボカン(ルナメ)
- みつばちマーヤの冒険(モンシロチョウのジェーン)
- 1976年
- 大空魔竜ガイキング(エメルダ)
- UFO戦士ダイアポロン(クイーンアポロン)
- リトル・ルルとちっちゃい仲間(ルル〈初代〉)
- キャンディ♡キャンディ(ジェーン・ブライトン)
- 1977年
- ジェッターマルス(マユミ)
- ルパン三世 (TV第2シリーズ)(1977年 - 1980年、峰不二子)
- 1978年
- 家なき子
- SF西遊記スタージンガー(1978年 - 1979年、キティ、アンドラ)
- キャプテン・フューチャー(ジョーン・ランドール)
- はいからさんが通る(吉次)
- 1979年
- サイボーグ009(1979年版)(レーナ、シモーヌ)
- 日本名作童話シリーズ 赤い鳥のこころ(風の母親)
- 野球狂の詩(当馬可奈子)
- 1980年
- 銀河鉄道999(シルビア、雪女、ネコア)
- のどか森の動物大作戦(メリッタ)
- まんがことわざ事典(ツグミ)
- 若草物語(メグ)
- 宇宙戦士バルディオス(エミー)
- 1981年
- おはよう!スパンク(ママ)
- 怪物くん(第2作)(1981年 - 1982年、怪子ちゃん)
- カバ園長の動物園日記(マサルの母)
- ワンワン三銃士(1981年 - 1982年、ミレディ)
- 1982年
- アンドロメダ・ストーリーズ(マザーマシン)
- うる星やつら(みすず)
- The・かぼちゃワイン(小町、青葉花江)
- さすがの猿飛(猿飛かすみ)
- 太陽の子エステバン(次回予告ナレーション)
- Dr.スランプ アラレちゃん(1982年 - 1986年、リボン・チャン)
- パタリロ!(ビョルン)
- ぼくパタリロ!(アフロ18)
- 吾輩は猫である(細君)
- 1983年
- アルプス物語わたしのアンネット(フランシーヌ・バルニエル)
- キャッツ♥アイ(アンリエット・ルベール / ルパンの花嫁)
- 子鹿物語(トゥインク・ハットウ)
- パーマン(第2作)(1983年 - 1985年、パー子 / 星野スミレ 他)
- まんが日本史
- 1984年
- ルパン三世 PARTIII(1984年 - 1985年、峰不二子)
- 1985年
- オバケのQ太郎(テレビ朝日版)(1985年 - 1987年、U子)
- はーいステップジュン(水野洋子)
- 1986年
- ゲゲゲの鬼太郎(第3作)(天狐、だつえ婆)
- メイプルタウン物語(ママ〈代役〉)
- 1987年
- レディレディ!(モードリン)
- 1988年
- 小公子セディ(ミンナ)
- ビックリマン(魔胎伝ノア)
- ひみつのアッコちゃん(第2作)(鏡の女王)
- 1989年
- がきデカ(モモ子・ジュンの母)
- ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!(峰不二子)
- 1990年
- 平成天才バカボン(ママ)
- まじかる☆タルるートくん(河合伊菜)
- 魔法使いサリー(第2作)(1990年 - 1991年、魔女、あざみの母)
- ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎(峰不二子)
- 1991年
- おちゃめなふたご クレア学院物語(ウエントワース夫人)
- バカボンおそ松のカレーをたずねて三千里(ママ)
- ルパン三世 ナポレオンの辞書を奪え(峰不二子)
- 1992年
- それいけ!アンパンマン(1992年 - 2024年、みみせんせい〈2代目〉、やみの女王〈初代〉、魔女、くろゆき姫、あきかぜさん)
- ルパン三世 ロシアより愛をこめて(峰不二子)
- 1993年
- ルパン三世 ルパン暗殺指令(峰不二子)
- 1994年
- ルパン三世 燃えよ斬鉄剣(峰不二子)
- 1995年
- アニメ世界の童話(妃〈継母〉)
- ルパン三世 ハリマオの財宝を追え!!(峰不二子)
- 1996年
- ルパン三世 トワイライト☆ジェミニの秘密(峰不二子)
- 1997年
- キューティーハニーF(神崎美津子)
- ルパン三世 ワルサーP38(峰不二子)
- 1998年
- まもって守護月天!(魅花〈メイホア〉)
- ルパン三世 炎の記憶~TOKYO CRISIS~(峰不二子)
- 1999年
- ルパン三世 愛のダ・カーポ~FUJIKO'S Unlucky Days~(峰不二子)
- レレレの天才バカボン(1999年 - 2000年、ママ)
- 2000年
- ルパン三世 1$マネーウォーズ(峰不二子)
- 2001年
- 探偵少年カゲマン(ビューティフェイス〈初代〉)
- ルパン三世 アルカトラズコネクション(峰不二子)
- 2002年
- Weiß kreuz Glühen(クイーン)
- ルパン三世 EPISODE:0 ファーストコンタクト(峰不二子)
- 2003年
- ルパン三世 お宝返却大作戦!!(峰不二子)
- 2004年
- ルパン三世 盗まれたルパン ~コピーキャットは真夏の蝶~(峰不二子)
- 2005年
- 名探偵コナン(フサエ・キャンベル・木之下)
- ルパン三世 天使の策略 ~夢のカケラは殺しの香り~(峰不二子)
- 2006年
- ルパン三世 セブンデイズ・ラプソディ(峰不二子)
- 2007年
- ルパン三世 霧のエリューシヴ(峰不二子)
- 2008年
- ルパン三世 sweet lost night ~魔法のランプは悪夢の予感~(峰不二子)
- 2009年
- ルパン三世VS名探偵コナン(峰不二子)
- 2010年
- ルパン三世 the Last Job(峰不二子)
4.2. 劇場アニメ
- 1960年代
- アンデルセン物語(1968年、カレン)
- ひとりぼっち(1969年、ケンのママ)
- 1970年代
- アタックNo.1(1970年、桂城由美)
- アタックNo.1 涙の回転レシーブ(1970年、吉村さとみ)
- アタックNo.1 涙の世界選手権(1970年、シェレーニナ)
- やさしいライオン(1970年、ムクムク)
- アタックNo.1 涙の不死鳥(1971年、早川みどり)
- ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!(1971年、公園の痴女、自動車の顧客、空港の金髪女性)
- どうぶつ宝島(1971年、グラン)
- 長靴をはいた猫 80日間世界一周(1976年、スザンナ)
- 世界名作童話 白鳥の王子(1977年、エリザ)
- ルパン三世 ルパンVS複製人間(1978年、峰不二子)
- ルパン三世 カリオストロの城(1979年、峰不二子)
- 1980年代
- 地球へ...(1980年、テラズNo.5)
- 怪物くん 怪物ランドへの招待(1981年、怪子ちゃん)
- 怪物くん デーモンの剣(1982年、怪子ちゃん)
- 1000年女王(1982年、永久管理人)
- Dr.SLUMP(1982年、リボン・チャン)
- わが青春のアルカディア(1982年、魔女)
- Dr.スランプ アラレちゃん ほよよ!世界一周大レース(1983年)
- まんがイソップ物語(1983年、春の女神)
- The・かぼちゃワイン ニタの愛情物語(1984年、小町)
- 少年ケニヤ(1984年、村上葉子)
- 忍者ハットリくん+パーマン 超能力ウォーズ(1984年、パー子)
- とんがり帽子のメモル(1985年、ナレーター)
- 忍者ハットリくん+パーマン 忍者怪獣ジッポウVSミラクル卵(1985年、パー子)
- ペンギンズ・メモリー 幸福物語(1985年、スーザン)
- ルパン三世 バビロンの黄金伝説(1985年、峰不二子)
- 1990年代
- 剣之介さま(1990年、剣之介の母)
- 劇場版美少女戦士セーラームーンS(1994年、プリンセス・スノー・カグヤ)
- それいけ!アンパンマン リリカル☆マジカルまほうの学校(1994年、魔女)
- ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス(1995年、峰不二子)
- ルパン三世 DEAD OR ALIVE(1996年、峰不二子)
- 2000年代
- Pa-Pa-Pa ザ☆ムービー パーマン(2003年、パー子)
- Pa-Pa-Pa ザ★ムービー パーマン タコDEポン!アシHAポン!(2004年、パー子)
4.3. OVA
- ルパン三世 パイロットフィルム(シネマスコープ版)(1969年、峰不二子)
- ルパン三世 パイロットフィルム(TV版)(1971年、峰不二子)
- ザナドゥ ドラゴンスレイヤー伝説(1988年、レフイ)
- 伝心 まもって守護月天!(2000年、魅花〈メイホア〉)
- ルパン三世 生きていた魔術師(2002年、峰不二子)
- やなせたかしメルヘン劇場 クシャラひめ(2008年、魔法使い)
- ルパン三世 GREEN vs RED(2008年、峰不二子)
- ルパン三世 Master File(2012年、峰不二子)
4.4. Webアニメ
- 暗黒家族 ワラビさん(2021年、丘田フキ)
4.5. ゲーム
- 1995年
- 空想科学世界ガリバーボーイ(タイガー)
- 平成天才バカボン すすめ!バカボンズ(バカボンのママ)
- リンダキューブ(アン)
- 1997年
- ルパン三世 カリオストロの城 -再会-(峰不二子)
- ルパン三世クロニクル(峰不二子)
- 1998年
- 魔法使いになる方法(エル=セネリア)
- 1999年
- 魔女っ子大作戦(チャッピー、ハニー)
- 2002年
- ルパン三世 魔術王の遺産(峰不二子)
- 2003年
- ルパン三世 海に消えた秘宝(峰不二子)
- 2004年
- ルパン三世 コロンブスの遺産は朱に染まる(峰不二子)
- 2007年
- ルパン三世 ルパンには死を、銭形には恋を(峰不二子)
- MAPLUS ポータブルナビ2(ナビゲーション音声)
- 2010年
- ルパン三世 史上最大の頭脳戦(峰不二子)
5. 吹き替え作品
海外の映画やドラマ、アニメ作品の日本語吹き替えにおける増山江威子の業績を紹介します。
5.1. 実写作品
5.1.1. 映画
- アパッチ(ナリンリ〈ジーン・ピーターズ〉)
- 暗黒街の特使(ミリー〈スーザン・ゼナー〉)
- 歌え!ドミニク(シスター・アン〈デビー・レイノルズ〉)
- 噂の二人
- 襲い狂う呪い(スーザン・ウィットリー〈スーザン・ファーマー〉)
- 怪人カリガリ博士(ジェーン〈グリニス・ジョンズ〉)
- カトマンズの男(アレクサンドリーヌ〈ウルスラ・アンドレス〉)
- 気球船探険(マキア〈バーバラ・ルナ〉)
- 奇蹟(テレサ〈キャロル・ベイカー〉)
- 吸血鬼ドラキュラの花嫁(マリアンヌ・ダニエル)
- 求婚専科(グレチェン〈フラン・ジェフリーズ〉)
- 魚雷特急(デニス〈アンジャネット・カマー〉)
- 暗闇でドッキリ(マリア・ガンブレリ〈エルケ・ソマー〉)
- グレッグのダメ日記4(ひいおばちゃん)
- シカゴ大捜査網(キャサリン"ケイト"・マロリー〈ゲイル・ストーム〉)
- 荒野の大活劇(スカーレット〈シドニー・ローム〉)
- 殺しのダンディ(カロライン〈ミア・ファロー〉)
- 殺し屋ハリー/華麗なる挑戦(バフィ〈アン・ターケル〉)
- サイレンサー沈黙部隊(ゲイル〈ステラ・スティーヴンス〉)
- サイレンサー/待伏部隊(フランチェスカ〈センタ・バーガー〉)
- サウンド・オブ・ミュージック(男爵夫人〈エリノア・パーカー〉)
- ザ・クレイジーズ/細菌兵器の恐怖(キャシー・ボルマン〈リン・ローリー〉)
- サンフランシスコ大空港(ジョーン〈ジル・ドノヒュー〉)
- 四重奏(ジーン〈マイ・セッタリング〉)
- ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦(シャルマーニュ〈バーバラ・リー〉)
- シンシナティ・キッド(クリスチャン〈チューズデイ・ウェルド〉)
- スーザンの恋(スーザン・スレイド〈コニー・スティーヴンス〉)
- ソドムとゴモラ(シュア〈ロッサナ・ポデスタ〉)
- ターザンの猛襲(ジェーン〈モーリン・オサリヴァン〉)
- 卵と私(ハリエット・パットナム〈ルイーズ・アルブリットン〉)
- 地上最大のショウ(エンジェル〈グロリア・グレアム〉)
- 地上最大の脱出作戦(ジーナ〈ジョヴァンナ・ラッリ〉)
- トム・ホーン(グレンドレーネ・キンメル〈リンダ・エヴァンス〉)
- ドラブル(シール・バロウズ〈デルフィーヌ・セイリグ〉)
- 波も涙も暖かい(シャーロ〈キャロリン・ジョーンズ〉)
- バターフィールド8(エミリー〈ダイナ・メリル〉)
- ハリーとヘンダスン一家(ナンシー・ヘンダスン〈メリンダ・ディロン〉)
- 春の珍事(デビー〈ジーン・ピーターズ〉)
- フランス式十戒(フランソワーズ〈フランソワーズ・アルヌール〉)
- ベニイ・グッドマン物語(アリス・ハモンド〈ドナ・リード〉)
- 北西騎馬警官隊(ルヴェット・コルボー〈ポーレット・ゴダード〉)
- 人間狩り(テレサ〈マドリン・ルー〉)
- ママは二挺拳銃(ルクレチア〈デビー・レイノルズ〉)
- ミサイル空爆戦隊(ビクトリア・コールドウェル〈メリー・ピーチ〉)
- メリー・ポピンズ(ウィニフレッド・バンクス〈グリニス・ジョンズ〉)
- モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン(ジュディス)
- よろめき休暇(アリス〈ジェーン・マンスフィールド〉)
- ルパン(カリオストロ伯爵夫人〈クリスティン・スコット・トーマス〉)
- 我が道を往く(キャロル・ジェームズ〈ジーン・ヘザー〉)
- アン・フランシス担当作品
- アガサ 愛の失踪事件(ジェーン)
- 恐怖のジェット旅客機(ジーナ・タルボット)
- 日本人の勲章(リズ)
- 狂った殺人計画
- 猛烈なる復讐(モニカ・アルトン)
- リー・レミック担当作品
- 或る殺人(ローラ・マニオン)
- 酒とバラの日々(カーステン)
- 追跡(ケリー・シャーウッド)
- 長く熱い夜(ユーラ)
- ハイウェイ(ジョー・ジェット)
- ビッグトレイル(コーラ・マシンゲイル)
5.1.2. ドラマ
- OKセブン作戦(フィズ〈マイケル・オードルスン〉)
- 奥さまは魔女(アレサ、ヴィーナス)
- かわいい魔女ジニー #71(ブーツィ・ナイチンゲール〈キャロル・ウェイン〉)
- ジェシカおばさんの事件簿 #9(トリッシュ・ラングレー)
- 新スタートレック シーズン3 #53「悲しみの幻影」(マーラ・アスター中尉)
- 逃亡者(カレン・クリスチャン〈スーザン・オリバー〉、ノーマ・セッション〈アンジー・ディキンソン〉)
- 特捜刑事マイアミ・バイス シーズン3 #20(クリスティーン・ヴォン・マーバーグ〈メラニー・グリフィス〉)
- ブラボー火星人(アンジェラ〈アン・マーシャル〉)
- 弁護士ジャッド #50「災厄」(ヘレン〈エリザベス・マックレー〉)
- 保安官ニコルス(ルース〈マーゴット・キダー〉)
5.2. アニメ
- 宇宙家族ジェットソン(ジェーン・ジェットソン)
- 宇宙忍者ゴームズ(スージー)
- 宇宙旅行(ベルギー放送協会制作)
- かくれんぼ
- クララとマックス
- スカイキッドブラック魔王(ポッピー)
- ドラドラ子猫とチャカチャカ娘(ミミィ)
- スヌーピーとチャーリー(ライラ)
- 棒ってたのしいな
6. 受賞歴
声優としての長年の功績や優れた業績に対し、贈られた賞とその内容を記述します。
年 | 賞 | カテゴリー | 結果 |
---|---|---|---|
2017 | 東京アニメアワードフェスティバル 2017 | アニメ功労部門 | - |
2021 | 第15回声優アワード | 功労賞 | - |
7. 人物・私生活
増山江威子の公の場での活動以外における人となりや、私生活における関心事、家族関係について紹介します。
7.1. 家族
夫は、TBSのプロデューサーで『料理天国』などを生み出した政田一喜(2022年没)です。二人の間には娘がいます。
7.2. 趣味・嗜好
幼少期から宝塚歌劇団の大ファンであり、一時期は宝塚への入団を志し、バレエを習っていたのも受験に備えるためでした。肺病により受験を断念しましたが、結婚後も宝塚への思いは残り、夫の仕事が落ち着いた2005年から約9年間、宝塚大劇場付近に住んでいました。タカラジェンヌや関係者とも組に関係なく幅広い交流があり、一人暮らしをするタカラジェンヌに自宅でカレーなどの実家を連想させる料理を振る舞うこともあったことから、タカラジェンヌの間では「不二子ママ」の愛称で慕われていたといいます。
児童劇団時代に麻生美代子の引率で劇団東童の公演を見学し、そこで王子様役を演じた俳優に憧れ「あの人と同じ舞台に立ちたい」と思いました。その俳優こそが、後に『ルパン三世』で40年近く共演し続けた納谷悟朗でした。
デビュー当初は本名である政田 知子まさだ ともこ日本語で活動していましたが、演出家の星野和彦に「こんな名前じゃねぇ、やっていけないよ」と言われ、高島易断に連れていかれ、現在の芸名である増山江威子となりました。
同年代の仲間からは「トンチ」と呼ばれていました。本人によると、二人の実姉が"イッチー""キョーチ"と呼ばれていたため、本名が「トモコ」の増山も"トンチ"と呼ばれるようになり、それが仕事仲間にも広がったといいます。
井上喜久子はデビュー前に見た『アタックNo.1』の再放送がきっかけで増山のファンとなり、プロになってから増山と同じ青二プロダクションに所属する久川綾に自身を紹介してもらったといい、3人はそれぞれの誕生日にお祝いで食事に行くなど交友がありました。井上によると増山は「会えば会うほど素晴らしく、いつも輝いている素敵な人物」「会うたびにたくさんの愛をくれる、永遠に憧れの人」とのことです。
8. 死去
増山江威子は、2024年5月20日に肺炎のため死去しました。享年88歳でした。かねてから病気療養中であったと報じられています。葬儀は本人の意向により家族葬として執り行われ、訃報は同年6月3日に青二プロダクションより発表されました。最後の出演は、2024年2月2日放送の『それいけ!アンパンマン』のやみの女王役とされています。
9. 遺産と影響力
増山江威子は、その長きにわたるキャリアと多岐にわたる役柄を通じて、日本の声優業界に計り知れない影響を与えました。特に『ルパン三世』の峰不二子役では、セクシーでありながらも自立した女性像を確立し、多くのファンに愛されるキャラクターとして定着させました。彼女の演じた不二子は、単なる「お色気キャラ」に留まらず、知性と行動力を兼ね備えた現代的な女性の象徴となり、後進の声優たちにも大きな影響を与えました。
また、『天才バカボン』のバカボンのママ役では、原作者である赤塚不二夫がその声を強く希望したことからもわかるように、キャラクターに生命を吹き込む唯一無二の存在でした。彼女の演技は、日常の中に存在する温かさやユーモアを表現し、作品の世界観を豊かにしました。
「絵が主役」という彼女の仕事への姿勢は、声優がキャラクターに寄り添い、作品全体を尊重するプロフェッショナリズムの模範を示しました。顔出し出演を控えることで、演じたキャラクターのイメージを大切にするという信念は、声優という職業の特殊性と尊厳を体現するものでした。増山江威子の声は、多くの人々の記憶に深く刻まれ、彼女が演じたキャラクターたちは、今後も日本のエンターテイメント史において輝き続けるでしょう。