1. 概要
中国の囲碁棋士である朴文垚(朴文垚ピャオ・ウェンヤオ中国語、박문요パク・ムニョ韓国語、1988年4月25日 - )は、黒竜江省出身の朝鮮族系の人物である。中国囲棋協会に所属し、九段の段位を持つ。1999年に11歳でプロ入りし、2011年には第15回LG杯世界棋王戦で優勝し、当時の中国棋士としては最年少の世界戦優勝者となり、この功績により九段に昇段した。
朴文垚は、陳耀燁らとともに「小豹世代」の一員として知られ、若くして国際舞台で活躍した棋士である。本稿では、朴文垚の幼少期からプロ棋士としての成長、国内外の主要な棋戦での具体的な成績、そして彼の棋士としての評価と囲碁界への貢献について詳細に記述する。
2. 経歴
朴文垚は幼少期に囲碁を学び始め、プロ棋士としてデビューした後も、数々の国際棋戦や国内棋戦で顕著な成績を収め、その実力を示した。
2.1. 幼少期とプロデビュー
朴文垚は黒竜江省ハルビン市で生まれた。7歳で囲碁を覚え、黒龍江棋院で陳兆峰、朱燕銘、徐志毅らの指導を受けた。1999年、11歳でプロ初段となった。
2000年には全国少年囲棋戦で3位に入賞したものの、この年に父親を亡くし、生活が困窮した。しかし、韓国のトップ棋士である曺薫鉉からの支援を受け、北京で囲碁の研鑽を続けることができた。2004年には三星火災杯世界オープン戦の予選に招待され、国際舞台での経験を積んだ。2005年には国家少年囲棋隊に選抜され、同年には全国囲棋個人戦で4位に入賞、さらにLG杯世界棋王戦でベスト4に進出するなど、若くして頭角を現した。
2.2. 段位昇段履歴
朴文垚は1999年のプロ入段以来、順調に段位を昇進させ、2011年には九段に到達した。
段位 | 昇段年 | 備考 |
---|---|---|
初段 | 1999 | 11歳でプロ入り |
二段 | 2001 | |
三段 | 2001 | |
四段 | 2005 | |
五段 | 2006 | |
九段 | 2011 | 第15回LG杯世界棋王戦優勝により |
3. 主な業績
朴文垚はプロ棋士として、数多くの国内外の主要棋戦で優れた成績を収め、複数のタイトルを獲得している。
3.1. タイトルと準優勝
3.1.1. 国際タイトル
朴文垚が獲得した国際棋戦のタイトルと準優勝の記録は以下の通りである。
大会名 | 優勝年 | 準優勝年 |
---|---|---|
LG杯世界棋王戦 | 2011 | |
阿含・桐山杯日中決戦 | 2011 | |
トヨタ&デンソー杯囲碁世界王座戦 | 2009 | |
World Oza | 2008 | |
合計 | 2 | 2 |
3.1.2. 国内タイトル
朴文垚が獲得した中国国内の棋戦のタイトルと準優勝の記録は以下の通りである。
大会名 | 優勝年 | 準優勝年 |
---|---|---|
招商銀行杯中国囲棋電視快棋戦 | 2007 | |
全国囲棋個人戦 | 2010 | |
阿含・桐山杯中国囲棋快棋公開戦 | 2011 | 2009 |
西南王戦 | 2012 | 2010 |
名人戦 | 2008 | |
リコー杯囲棋戦 | 2012 | |
倡棋杯中国プロ囲棋選手権戦 | 2014 | |
合計 | 4 | 5 |
3.2. 主要棋戦における詳細な成績
朴文垚はタイトル獲得や準優勝に至らなかった主要な国際および国内棋戦でも、その実力を示す顕著な成績を残している。
3.2.1. 国際棋戦成績
- LG杯世界棋王戦
- 2005年:ベスト4(王立誠、蘇耀国、朴正祥に勝利、陳耀燁に敗北)
- 2009年:ベスト4(洪旼杓、許映皓、古力に勝利、李昌鎬に敗北)
- 2011年:優勝(決勝で孔傑を2-0で破る)
- 2011年:ベスト16
- 2012年:ベスト32
- トヨタ&デンソー杯囲碁世界王座戦
- 2007年:準優勝
- 2009年:準優勝(決勝で古力に0-2で敗北)
- 世界囲碁選手権富士通杯
- 2009年:ベスト8
- 2010年:ベスト4(李捷、山下敬吾、朴永訓に勝利、李世乭に敗北)
- 2011年:ベスト8
- 三星火災杯世界オープン戦
- 2005年:ベスト16
- 2006年:ベスト8(劉昌赫、山下敬吾に勝利、李昌鎬に敗北)
- 2007年:ベスト32
- 2011年:ベスト32
- 応昌期杯世界プロ囲碁選手権戦
- 2008年:ベスト8(タラヌ・カタリン、宋泰坤に勝利、崔哲瀚に敗北)
- 2012年:ベスト16
- BCカード杯世界囲碁選手権
- 2009年:ベスト8
- 2011年:ベスト64
- 2012年:ベスト4
- 春蘭杯世界囲碁選手権戦
- 2012年:ベスト8
- 江原ランド杯中韓囲碁対抗戦
- 2006年:0-1(李世乭に敗北)
- 農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦
- 2008年:0-1(姜東潤に敗北)
- 2012年:0-1(金志錫に敗北)
- 招商地産杯中韓囲棋団体対抗戦
- 2012年:1-0(元晟溱に勝利)
- テレビ囲碁アジア選手権
- 2007年:1回戦
- 百霊杯世界囲碁オープン戦
- 2012年:ベスト64
- 2014年:ベスト32
- 夢百合杯世界囲碁オープン戦
- 2013年:ベスト64
3.2.2. 国内棋戦成績
- 名人戦
- 2008年:挑戦者
- リコー杯囲棋戦
- 2012年:準優勝
- 倡棋杯中国プロ囲棋選手権戦
- 2014年:準優勝
- 弘通杯国家囲棋隊勝抜戦
- 2012年:5-1(羋昱廷、柁嘉熹、楊鼎新、江維傑、范廷鈺に勝利、時越に敗北)
3.3. 団体戦・リーグ活動
朴文垚は個人戦だけでなく、中国囲棋甲級リーグ戦や国際的な団体戦でも中国代表として活躍した。
- 中国囲棋甲級リーグ戦
- 2005年:大連上方所属、13勝8敗
- 2006年:貴州咳速停所属
- 2007年:貴州咳速停所属、16勝5敗
- 2008年:貴州百魂所属、13勝9敗
- 2009年:貴州百魂所属、13勝9敗
- 2010年:貴州百魂所属、12勝9敗
- 2011年:貴州百魂所属、14勝8敗
- 2012年:貴州百魂所属、10勝8敗
- 2013年:貴州百魂所属、14勝7敗
- 2014年:貴州百魂所属、4勝6敗
- 2015年:貴州百魂所属、2勝8敗
- 2016年:民生銀行北京所属
- ワールドマインドスポーツゲームズ
- スポーツアコードワールドマインドゲームズ
- 2011年男子団体戦:金メダル
- 2011年男女ペア戦:李赫とペアを組み金メダルを獲得
- 全国智力運動会
- 黒龍江チームとして出場。
- 2009年男女ペア戦:王倪喬とペアを組み5位
- 2015年男子団体戦:9位
4. 棋士ランキング
中国棋士ランキングにおける朴文垚の順位は以下の通りである。
- 2007年:6位
- 2008年:5位(最高位)
5. 評価と遺産
朴文垚は、その積極的かつ独創的な棋風で知られる、中国囲碁界の重要な棋士の一人である。彼は特に、陳耀燁らとともに「小豹世代」の一員として、若くして国際舞台で活躍し、中国囲碁の発展に寄与した。
彼のキャリアのハイライトは、2011年に第15回LG杯世界棋王戦で優勝し、当時の中国棋士として最年少で世界チャンピオンの座を獲得したことである。この成功は、彼の囲碁界における地位を確固たるものにしただけでなく、中国の囲碁界全体に新たな活気をもたらした。また、幼少期の父親の死という個人的な苦難を乗り越え、曺薫鉉らの支援を受けながら研鑽を積んだ彼の経歴は、多くの若手棋士に希望とインスピレーションを与えている。
朴文垚の功績は、獲得したタイトルや成績だけでなく、国際的な団体戦での中国代表としての貢献にも見られる。彼は自らの対局を通じて囲碁の魅力を伝え、その普及にも貢献している。彼の競技生活は囲碁の奥深さと、逆境を乗り越える精神力を体現しており、今後の活躍にも期待が寄せられている。
6. 外部リンク
- [http://baike.baidu.com/view/2375609.htm 百度百科「朴文垚」]