1. 生い立ち・家族背景
若元春港は、相撲一家の出身であり、幼少期から相撲に親しんだ。この節では、彼の家族構成や相撲との関わり、そして幼少期からアマチュア時代を経てプロ入りに至るまでの経緯を詳述する。
1.1. 家族背景
若元春は、祖父、父、そして二人の兄弟も相撲界に身を置く相撲一家に生まれた。祖父の若葉山貞雄は小結まで昇進し、引退後は12代錣山を襲名した。父の若信夫は最高位が西幕下51枚目の力士で、現在は福島市でちゃんこ鍋店を経営している。
若元春には兄の若隆元と、弟の若隆景がいる。三兄弟は2009年から2017年の間に全員がプロ入りし、現在は全員が荒汐部屋に所属している。若隆元はまだ幕下を越えられていないが、弟の若隆景は2022年に関脇に昇進し、祖父の最高位を上回る活躍を見せた。
三兄弟がプロ入りした際、彼らの四股名は戦国時代の武将毛利元就の「三子教訓状」にちなんで名付けられた。若元春の四股名は、祖父の四股名の最初の漢字と、毛利元就の次男である吉川元春の名前に由来している。兄は毛利隆元から「若隆元」に、弟は小早川隆景から「若隆景」に改名した。「若」の字は、祖父の若葉山と父の若信夫から受け継がれている。
1.2. 幼少期・アマチュア時代
若元春は出生時3800 gで、三兄弟の中で最も運動神経が良く、水たまりに入ったり木登りをしたりする活発な子供だった。兄弟と共に小学2年生から相撲を始め、他にソフトボールと柔道も経験している。その一方で、絵を描くことや物作りも得意で、温厚で優しい性格だったという。
中学からは相撲一本に絞ったが、実際には相撲を嫌っていたと本人は後に語っている。幕下時代の雑誌記事には「祖父に憧れて相撲を始めた」とあるが、角界入りした頃には父に「本当は嫌いだったんだよね」と吐露していた。稽古熱心な兄と弟の隣で、すぐに泣き言を言っていたという。しかし、小学校の卒業文集には「名前を言えば誰でも分かってくれるような力士になりたい」と記していた。稽古は熱心でなかったものの、相撲のセンスは三兄弟の中で最も優れており、大会では一番良い成績を残していた。父親は「やれば勝って成績が出るから。相撲が後からついてくる感じ。もともといいものをもっているんです。だからこそ、つらくてもやめるにやめられなかったのでしょうね」と振り返っている。
若元春は学法福島高等学校に特待生として入学。高校生の頃は、当時唯一の関取であった双大竜亮三に特に憧れていた。高校時代には3年連続でインターハイ個人に出場し、3年生の時には東北大会で準優勝の実績を残した。
高校在学中に2011年東日本大震災に被災し、当時すでに荒汐部屋に入門していた兄の若隆元の助けで、弟の若隆景と共に荒汐部屋で1ヶ月間の避難生活を送った。この経験がきっかけとなり、部屋への恩に報いるため、高校卒業前に荒汐部屋でプロの力士となることを決意した。
2. プロ相撲キャリア
若元春は2011年のプロデビュー以来、着実に番付を上げ、幕内上位で活躍する力士へと成長した。この節では、彼のプロ入りから幕内昇進、そして関脇としての活躍に至るまでの詳細な道のりを追う。
2.1. デビューと初期キャリア
若元春は2011年11月場所の前相撲でプロデビューし、一番出世を果たした。この場所のみ「荒大波(あらおおなみ)」の四股名を名乗った。翌2012年1月場所には、後援者によって「金剛力士像のように」という願いが込められた「剛士(ごうし)」に改名し、この場所で序ノ口優勝を7戦全勝で飾った。初土俵から所要6場所で幕下へ初昇進するなど、幸先の良いスタートを切った。
2013年5月場所は途中出場で3勝1敗3休の成績に留まったが、続く7月場所では幕下優勝を果たし、大相撲八百長問題で解雇された後に無実を証明して本場所に復帰した兄弟子の蒼国来栄吉に花を添える形となった。同年9月場所には自己最高位の東幕下7枚目に昇進した。
2014年からは幕下の中位から下位に推移し、2014年5月場所頃には右半身がうまく使えていないと指摘され、師匠の7代荒汐(元大豊)からも「稽古をしない」と漏らされるほどであった。2015年3月場所には三段目に陥落し、同年11月場所は全休した。
2016年1月場所に復帰し、5勝2敗と勝ち越しを収めた。この場所で怪我で落ちた地位で2番負けたことを師匠に指摘され、本人も反省したという。以降、7場所連続で勝ち越しを決め、2017年3月場所には西幕下5枚目と、勝ち越せば関取昇進の可能性もある地位まで昇進したが、7番相撲で敗れて3勝4敗と勝ち越しを逃した。
同年5月場所より、弟の入門に合わせて四股名を現在の「若元春」に改名した。この時期以降は十両昇進を伺う番付で土俵を務め、2018年7月場所では自己最高位を更新する西幕下4枚目に番付を伸ばしたが、この場所は2勝5敗と跳ね返された。
2019年1月場所前、直近3年から4年の間、稽古に身が入っていなかった若元春は、兄弟子の蒼国来から「もっと自分のことを考えろ」と発破をかけられ、目が覚めたという。その1月場所では西幕下3枚目の地位で7戦全勝を果たし、翌3月場所の新十両昇進を確定させた。幕下優勝を果たした際には「1場所で落ちることのないようにしたい」と語った。場所後に開かれた番付編成会議で正式に新十両昇進が決定し、先に十両に上がっていた弟の若隆景と合わせて、史上20組目の兄弟関取となった。昇進に際して師匠は「3年は遅かった」と出世のもたつきを指摘した。2月2日に都内で行われた自身の祝賀会では、師匠の7代荒汐から「紋付きはかま姿で5月場所の東京に戻ってこられるよう頑張ってほしい」と奮起を促された。これは、日本相撲協会の規定で紋付き袴は十両以上でないと着用できないため、5月場所も十両で迎えてほしいという意味が込められていた。
東日本大震災から8年となる2019年3月場所2日目、震災が発生した午後2時46分ごろに花道から土俵に向かい、この日は安美錦を寄り倒しで破った。しかし、この場所は5勝10敗と十両の壁に跳ね返され、翌5月場所は幕下に逆戻りとなった。3場所の幕下暮らしを経て、同年11月場所に十両に復帰した。6勝1敗で終えた9月場所は7番相撲のうっちゃりでの白星にも「あんな相撲じゃ、来場所はダメ。番付に負けない相撲を取りたい」と反省しきりであった。
2019年11月7日、若元春は阿炎と共に、暴力根絶に尽力すべき協会員として不謹慎な内容の動画をInstagramにアップロードしたとして、協会に始末書を提出し、9日に口頭で注意を受けることになった。この動画は、若元春の口や手足をガムテープで縛るという内容で、過去の相撲部屋での暴力事件を軽視していると批判された。この件を受け、日本相撲協会は力士の個人SNSアカウントの保有を禁止する通達を出した。
師匠の定年直前の場所である2020年3月場所は東十両11枚目の地位で土俵に上がり、8勝7敗の勝ち越しを記録し、定年退職する師匠への餞別として勝ち越しを捧げた。
2021年1月1日、日本相撲協会は荒汐部屋で師匠の8代荒汐(元蒼国来)と若元春、幕下以下の力士合わせて11人が新型コロナウイルスに感染したことを発表した。前日(2020年12月31日)に若隆景が新型コロナウイルス感染症と診断されたため、荒汐部屋所属の24名が濃厚接触者としてPCR検査を受けた結果であった。同年1月場所はこの影響により全休した。翌3月場所の番付は事情が考慮され、全休ながら1枚降下に留まった。
2.2. 幕内キャリアと昇進
西十両筆頭で迎えた2021年11月場所は11勝4敗と大きく勝ち越し、翌2022年1月場所の新入幕が確定し、弟の若隆景との兄弟幕内が誕生することとなった。若元春と若隆景は、史上12組目の兄弟幕内力士である。荒汐部屋からは若隆景が2019年11月場所で幕内昇進して以来2人目であり、現在の師匠である8代荒汐が部屋を継承してからは初の幕内力士となった。新入幕会見では「不安8割くらい。自分の実力が通じるのか...。十両で足踏みして通用するか自信がない」とネガティブな一面も見せた。2021年を振り返り、1月場所を新型コロナウイルス感染で休場する困難なスタートだったが、11月場所で11勝4敗という自己最高の成績を収め、幕内昇進を勝ち取ったことを語った。彼は弟を上回る活躍をしたいと希望を述べた。祖父の命日である1月17日の場所9日目には、弟の若隆景と共に白星を獲得した。
新入幕から3場所連続で9勝6敗と勝ち越し、初の上位対戦圏内の東前頭4枚目で迎えた2022年7月場所では、5日目に大関・正代を破る殊勲の星を手にした。さらにその場所の中日で横綱・照ノ富士と初対戦。2分を超える熱戦の最中、自身の廻しが緩んだのに対し、行司の41代式守伊之助が廻し待ったで止めに入ろうとしたことに若元春が気づかず、照ノ富士が待ったに気づき力を抜いたところを寄り切った。協議の末、行司が止めに入る直前の形からやり直すことになり、若元春は照ノ富士に数秒で下手投げで敗れ、初金星は幻のものとなってしまった。この取組について、若元春は「悔しさもあまりなくて、力を出し切った、頑張ったなという感じ」「皆さんまわし待ったのほうにばっかり目が行っていて、僕らが頑張ったっていうほうが薄れてしまっているので、頑張ったほうを見てほしいですよね(笑)」と振り返っている。
2022年9月場所前、若隆景と稽古で8番取って1番も勝てないなど、力量差が表れた。この場所は自身初の幕内2桁白星を目標に掲げ、宣言通り10勝5敗を達成した。千秋楽には「これより三役」に抜擢され、若隆景と並んで兄弟での三役揃い踏みとなった。兄弟そろっての三役揃い踏みは、1998年秋場所の若乃花、貴乃花以来24年ぶりのことであった。しかし若元春は所作を間違えてしまい、次の取組に出る若隆景に水をつけねばならないのに、それも忘れて控えに戻ってしまった。「前の日に(過去の三役揃い踏みの)動画を見て、大丈夫だろうと思っていたけど、土俵に上がってみたら全然、忘れてしまいました」「緊張もあってもう訳が分からなかったです」と心境を語っている。
前頭四枚目で迎えた2022年11月場所は10勝5敗と、2場所連続で2桁勝利を挙げ、翌2023年1月場所では小結に昇進した。これは1992年3月場所の若花田・貴花田以来31年ぶりとなる兄弟同時三役であり、兄弟三役は4組目、兄弟同時三役は3組目である。この場所は3連敗スタートだったものの、最終的に9勝6敗と勝ち越した。
2023年3月場所は優勝争いに加わり、13日目終了時点で10勝3敗に位置していた。その日の取組後には「三役として2桁勝利は最低限のハードルと思っている。それをクリアできたとは思うが、ここからさらに星を伸ばせるようにしたい」と優勝争いにも絡む残り2日へ、気持ちを込めた。14日目に豊昇龍に敗れ、優勝争いからは脱落したが、千秋楽はこれまで勝利したことがなかった琴ノ若をうっちゃりで破り、11勝4敗まで星を伸ばした。
2023年5月場所は関脇に昇進し、若隆景と共に史上4組目の兄弟関脇となった。この場所では、14日目の貴景勝戦で10勝目を挙げ、7月場所が大関取りの場所となる可能性が生まれた。千秋楽では、三賞選考委員会で、条件なしでの技能賞が決定した。千秋楽の取組では大栄翔に突き倒され完敗し、表情を曇らせ「こんな相撲を取っていたら、どうしようもない」と猛省した一方で、一門のライバルとなる霧馬山の大関昇進は「大きな刺激」と前向きに話した。千秋楽の取組後、佐渡ヶ嶽審判部長は、豊昇龍、大栄翔と共に7月場所が大関取りの場所となると明言した。若元春は7月場所で三役の地位で3場所合計33勝という大関昇進の目安に到達するには12勝が必要であった。自身の潜在的な大関昇進について、若元春はキャリアがようやく最高位で安定したことに安堵を表明した。同様に、自身が大関取りの状況にあることに驚きを隠さず、キャリアの大半を弟の若隆景の番付に追いつくために費やしてきたと語った。彼はまた、元大関の魁皇や千代大海のような存在になりたいと願った。
2023年7月場所前、若元春は故郷福島の後援会から化粧廻しを贈呈された。美術系の学校を卒業し、デザイン業界で働いていた経験のある母親がデザインしたもので、花見山公園を思わせる福島の花や果物が散りばめられている。しかし、この場所では12日目に大関に復帰した霧島に4敗目を喫し、この場所での大関昇進の可能性は消滅した。14日目に豊昇龍に敗れて5敗となったものの、千秋楽に勝てば10勝5敗と3場所連続で2桁に乗る可能性があったが、14日目終了時点で、佐渡ヶ嶽審判部長は「(若元春、大栄翔の大関昇進は)厳しいですね」とコメントした。また、この日の豊昇龍戦では立合いで変化しており、八角理事長は「大関としてやっていけるかどうかの見極めで、こういう大関を見たいと思いますか? お客さんが納得できると思いますか?」「33勝したからといって上げて良いのかなと思いますよ。終盤に来ての印象が悪すぎる。内容ですよ、内容」と激怒した。千秋楽にも朝乃山に敗れ、9勝6敗と2桁勝利に届かなかった。
2023年11月場所は西関脇の地位で6勝9敗と負け越し、2024年1月場所には東前頭筆頭まで番付を下げた。この場所2日目には横綱照ノ富士から寄り切りで自身初となる金星を獲得した。これは1分42秒に及ぶ熱戦であった。翌日には大関貴景勝にも勝利した。若元春は10勝5敗で場所を終え、横綱や他の三役力士に勝利した功績が評価され、自身初の殊勲賞を受賞した。
2024年5月場所では、7日目から左足親指の負傷のため休場したが、途中からの再出場も示唆した。11日目から再出場したが、平戸海に敗れ、負け越しが確定した。2024年9月場所と11月場所で好成績を収めた後、弟の若隆景が三役復帰を果たしたこともあり、2025年1月場所で好成績を収めれば大関昇進の可能性が再び報じられた。
2.3. 主な業績と受賞歴
- 幕下優勝:2回(2013年7月場所、2019年1月場所)
- 序ノ口優勝:1回(2012年1月場所)
- 三賞:2回
- 殊勲賞:1回(2024年1月場所)
- 技能賞:1回(2023年5月場所)
- 金星:1個
- 照ノ富士:1個(2024年1月場所)
3. 相撲スタイル
若元春は、相手の廻しを掴むことを好み、突き押しよりも寄りを重視する相撲を得意としている。特に得意な形は左四つで、右を外から、左を内から差す形である。最も得意な決まり手は、真っ直ぐに相手を土俵の外へ押し出す寄り切りである。
花田虎上によると、引きつけて前に出る若元春の力は相当なもので、廻しを切るのも上手いという。2022年8月11日の夏巡業古河場所では「相撲の型は決まっている。左四つなので、そこに持っていくまでの相撲を強化したい」と左四つのさらなる強化をテーマに掲げた。2023年5月場所中、八角理事長は若元春の左差し右おっつけという確固たる型を評価し、場所4日目の琴ノ若との迷いの無い相撲を「右をおっつけながら上手を取る攻めが速い。絞り上げた」と評価した。
2022年頃からは、近年では珍しい技の一つとされるうっちゃりも得意手の一つとなった。2023年5月場所11日目の北青鵬戦でもうっちゃりを決め、これには八角理事長も「力強いね、若元春は」と豪快に勝負を決めたそのパワーに驚いた。一方、花田虎上は「右を引っ張り込んでばかりだと相手も慣れてしまうので、もう1つ2つの攻め手があれば、もっと強くなるでしょう」と注文を付けた。場所後、元武蔵丸の武蔵川親方は、立合いで当たり負けずに自分の型に持って行く力強い左四つの相撲を「若元春は、焦らなくとも大関になるよ」と評価している。
しかし、三役に定着し出した2023年頃からは、左四つに組みながら敗れる相撲が目立ち始め、逆に押し相撲に頼ることが多くなっている。2024年には年間の決まり手で押し出しが寄り切りを上回った。
4. 人物・エピソード
若元春の私生活や趣味、家族との関係、そして相撲に関する興味深いエピソードをまとめる。
4.1. 私生活
若元春は、2021年11月に3年間の交際を経て結婚したことを幕内昇進後に発表した。2025年2月に行われた結婚披露宴では、2020年に娘が誕生していたことも明かした。
彼は歌手のエド・シーランとAikoのファンである。また、プロレス観戦を趣味としており、『キン肉マン』を入り口に、WWEや新日本プロレスを中心に観戦している。特にヒールレスラーが好きで、支度部屋では鈴木軍のバスタオルを身に付けていることも多く、Just 5 Guysのタイチと親交がある。お笑い芸人ではチョコレートプラネットが好きである。好きな食べ物は寿司で、好きなおでんの具はちくわぶである。
2023年4月には父親と共にテレビ番組「夏の特大!さんま御殿」に出演した。父親は若元春について、幼少期から厳しく指導したために自分を恨んでいる、何も報告しないし、プレゼントもない、厳しい指導があったから今があると言うと「自分の力だ」と返ってくると語った。さらに、取組の時に「LINEで『こういう相手だから気をつけろよ』」とアドバイスを送ると言うと、若元春は「既読はつけます」と、読んではいないと答えた。明石家さんまに「(自分も子供がいるのだから)そしたら親のありがたみ、わかるやろ!」と説教されても、若元春は何も答えず、「29歳にして絶賛反抗期!」と報道されてしまった。しかし、同年4月のNHKのインタビューで、父親の現役時代の四股名である若信夫を継ぐ気はないかと問われると、「ほんとは僕、十両に上がったら 継ぎたかったんですよ。 やっぱり、幕下までしか父親はいってないんで、 その名前をいっこあげるっていうのは、親孝行になるかなと思って」と語っており、実際の親子関係は良好のようである。
4.2. エピソード
- 入門時の師匠である7代荒汐は「人の言うことを聞かないし、相撲で勝っても負けてもケロッとしている(笑)」と話している。
- 兄の若隆元には「見かけは強そうに見えて,実はすっげービビり」で「逃げるやつを追いかけるのは早い」ところがクマに似ていると言われている。
- のらりくらりとした性格で知られる。2022年7月場所前は場所成績次第で続く9月場所での三役昇進を狙うことができ、1992年3月場所の若花田・貴花田以来となる、若隆景との同時三役昇進が懸かっている状況であったが、「期待されてないんじゃないですか? 今いる番付が自分の最高だと思って、最高の相撲を取りきるだけです」とコメントし、「まだまだ全然(弟若隆景の)バーターですよ、優勝されちゃいましてバーター感、強まりましたよ」と笑って返した。それでも、三役に定着するにつれて「三役としての最低限のハードルは10勝と思っている」と発言するなど、のんびり屋で飄々とした性格に変化が見られている。
- 三賞及び金星の経験がないまま関脇に昇進したのは、史上初の珍記録である。三賞経験のない関脇では鳳凰倶往がいたが、関脇に上がった時点で金星は2個獲得していた(生涯では3個獲得)。
- 2024年8月22日の夏巡業福島場所では若隆景との兄弟対決が組まれ(巡業は大相撲の公式戦ではないため、4親等以内との対決が組まれる)、大盛況となった。
- 2023年7月場所からは、美術系の学校卒業でデザイン関係の職業についていた経験のある母がデザインした、福島のフルーツの花をちりばめた郷土の化粧まわしを締めて幕内土俵入りに上がるようになった。
- 新入幕を機に祖父の若葉山が締めていた物を再現したという獅子を想起させる化粧廻しを使用するようになった。
5. キャリア成績
若元春の場所ごとの成績、各段優勝、三賞・金星の獲得状況、および改名歴を以下に示す。
- 通算成績:435勝331敗28休(78場所)
- 幕内成績:163勝119敗3休(19場所)
5.1. 各段優勝記録
- 幕下優勝:2回(2013年7月場所、2019年1月場所)
- 序ノ口優勝:1回(2012年1月場所)
5.2. 三賞・金星
- 三賞:2回
- 殊勲賞:1回(2024年1月場所)
- 技能賞:1回(2023年5月場所)
- 金星:1個
- 照ノ富士:1個(2024年1月場所)
5.3. 場所別成績
| 場所 | 番付 | 成績 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2011年 | |||
| 11月場所 | 前相撲 | - | 初土俵 |
| 2012年 | |||
| 1月場所 | 東序ノ口15 | 7勝0敗 | 序ノ口優勝 |
| 3月場所 | 西序二段10 | 5勝2敗 | |
| 5月場所 | 東三段目78 | 6勝1敗 | |
| 7月場所 | 東三段目20 | 3勝4敗 | |
| 9月場所 | 東三段目39 | 6勝1敗 | |
| 11月場所 | 西幕下54 | 2勝5敗 | |
| 2013年 | |||
| 1月場所 | 西幕下19 | 3勝4敗 | |
| 3月場所 | 西三段目34 | 6勝1敗 | |
| 5月場所 | 東幕下45 | 3勝1敗3休 | |
| 7月場所 | 東幕下55 | 7勝0敗 | 幕下優勝 |
| 9月場所 | 東幕下7 | 2勝5敗 | |
| 11月場所 | 西幕下19 | 2勝5敗 | |
| 2014年 | |||
| 1月場所 | 西幕下36 | 3勝4敗 | |
| 3月場所 | 西幕下43 | 4勝3敗 | |
| 5月場所 | 東幕下37 | 4勝3敗 | |
| 7月場所 | 東幕下29 | 3勝4敗 | |
| 9月場所 | 東幕下37 | 3勝4敗 | |
| 11月場所 | 東幕下46 | 3勝4敗 | |
| 2015年 | |||
| 1月場所 | 東幕下55 | 3勝4敗 | |
| 3月場所 | 西三段目6 | 6勝1敗 | |
| 5月場所 | 東幕下33 | 3勝4敗 | |
| 7月場所 | 東幕下44 | 5勝2敗 | |
| 9月場所 | 東幕下28 | 2勝5敗 | |
| 11月場所 | 東幕下46 | 0勝0敗7休 | 右足親指負傷のため全休 |
| 2016年 | |||
| 1月場所 | 西三段目26 | 5勝2敗 | |
| 3月場所 | 東三段目1 | 6勝1敗 | |
| 5月場所 | 東幕下29 | 4勝3敗 | |
| 7月場所 | 東幕下22 | 4勝3敗 | |
| 9月場所 | 東幕下16 | 4勝3敗 | |
| 11月場所 | 東幕下12 | 4勝3敗 | |
| 2017年 | |||
| 1月場所 | 東幕下8 | 4勝3敗 | |
| 3月場所 | 西幕下5 | 3勝4敗 | |
| 5月場所 | 西幕下9 | 3勝4敗 | |
| 7月場所 | 東幕下14 | 3勝4敗 | |
| 9月場所 | 東幕下18 | 5勝2敗 | |
| 11月場所 | 東幕下11 | 4勝3敗 | |
| 2018年 | |||
| 1月場所 | 東幕下6 | 3勝4敗 | |
| 3月場所 | 東幕下12 | 4勝3敗 | |
| 5月場所 | 東幕下10 | 5勝2敗 | |
| 7月場所 | 西幕下4 | 2勝5敗 | |
| 9月場所 | 西幕下14 | 5勝2敗 | |
| 11月場所 | 東幕下7 | 4勝3敗 | |
| 2019年 | |||
| 1月場所 | 西幕下3 | 7勝0敗 | 幕下優勝 |
| 3月場所 | 東十両10 | 5勝10敗 | 新十両 |
| 5月場所 | 西幕下1 | 3勝4敗 | |
| 7月場所 | 西幕下5 | 5勝2敗 | |
| 9月場所 | 東幕下1 | 6勝1敗 | |
| 11月場所 | 西十両11 | 5勝10敗 | |
| 2020年 | |||
| 1月場所 | 東幕下1 | 6勝1敗 | |
| 3月場所 | 東十両11 | 8勝7敗 | 無観客開催 |
| 5月場所 | 東十両8 | 0勝0敗0休 | 新型コロナウイルス感染拡大により中止 |
| 7月場所 | 西十両8 | 9勝6敗 | 東京開催 |
| 9月場所 | 東十両3 | 6勝9敗 | |
| 11月場所 | 西十両6 | 8勝7敗 | 東京開催 |
| 2021年 | |||
| 1月場所 | 東十両5 | 0勝0敗15休 | 新型コロナウイルス感染のため全休 |
| 3月場所 | 東十両6 | 6勝9敗 | 東京開催 |
| 5月場所 | 東十両9 | 9勝6敗 | 3日目まで無観客開催 |
| 7月場所 | 東十両3 | 7勝8敗 | |
| 9月場所 | 東十両3 | 8勝7敗 | |
| 11月場所 | 西十両1 | 11勝4敗 | |
| 2022年 | |||
| 1月場所 | 東前頭15 | 9勝6敗 | 新入幕 |
| 3月場所 | 西前頭9 | 9勝6敗 | |
| 5月場所 | 東前頭6 | 9勝6敗 | |
| 7月場所 | 東前頭4 | 6勝9敗 | |
| 9月場所 | 東前頭6 | 10勝5敗 | |
| 11月場所 | 東前頭4 | 10勝5敗 | |
| 2023年 | |||
| 1月場所 | 西小結2 | 9勝6敗 | 新小結 |
| 3月場所 | 東小結1 | 11勝4敗 | |
| 5月場所 | 西関脇2 | 10勝5敗 | 新関脇、技能賞 |
| 7月場所 | 西関脇2 | 9勝6敗 | |
| 9月場所 | 西関脇1 | 9勝6敗 | |
| 11月場所 | 西関脇1 | 6勝9敗 | |
| 2024年 | |||
| 1月場所 | 東前頭1 | 10勝5敗 | 殊勲賞、金星1個 |
| 3月場所 | 西関脇1 | 9勝6敗 | |
| 5月場所 | 東関脇1 | 4勝8敗3休 | 右足親指の靱帯損傷のため7日目から途中休場、11日目から再出場 |
| 7月場所 | 東前頭2 | 6勝9敗 | |
| 9月場所 | 東前頭3 | 11勝4敗 | |
| 11月場所 | 東小結1 | 10勝5敗 | |
| 2025年 | |||
| 1月場所 | 東関脇1 | 6勝9敗 | |
| 3月場所 | 西前頭1 |
各欄の数字は、「勝ち-負け-休場」を示す。
三賞:=敢闘賞、=殊勲賞、=技能賞 その他:=金星
番付階級:幕内 - 十両 - 幕下 - 三段目 - 序二段 - 序ノ口
幕内序列:横綱 - 大関 - 関脇 - 小結 - 前頭(「#数字」は各位内の序列)
5.4. 改名歴
- 荒大波 港(あらおおなみ みなと):2011年11月場所
- 剛士 港(ごうし みなと):2012年1月場所 - 2017年3月場所
- 若元春 港(わかもとはる みなと):2017年5月場所 - 現在
6. 対戦成績
若元春の主要な現役力士および幕内力士との対戦成績を以下に示す。
6.1. 主要な現役力士との対戦成績
(以下、最高位が横綱・大関の現役力士)
- 横綱・豊昇龍には2勝10敗。豊昇龍の大関昇進後は若元春の7敗。
- 大関・琴櫻には5勝9敗。琴櫻の大関昇進後は1勝4敗。
- 大関・大の里には1勝4敗。大の里の大関昇進後は1敗。
- 元大関・髙安には2勝5敗(うち不戦勝1)。髙安の大関在位中は対戦なし。
- 元大関・朝乃山には1勝3敗。朝乃山の大関在位中は対戦なし。
- 元大関・正代には4勝7敗。正代の大関在位中は若元春の1勝1敗。
- 元大関・御嶽海には4勝2敗。御嶽海の大関在位中は若元春の1勝。
- 元大関・霧島には5勝8敗。霧島の大関在位中は若元春の2勝3敗。
- 元横綱・照ノ富士には1勝3敗。令和6年1月場所で金星を獲得。
- 元大関・栃ノ心には1勝3敗。
- 元大関・貴景勝には5勝5敗(うち不戦勝1)。
6.2. 幕内対戦成績
| 力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 | 力士名 | 勝数 | 負数 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 碧山 | 4 | 1 | 天空海 | 1 | 0 | 朝乃山 | 1 | 3 | 東龍 | 1 | 0 |
| 熱海富士 | 5 | 1 | 阿炎 | 5 | 9(1) | 石浦 | 1 | 0 | 一山本 | 2 | 1 |
| 宇良 | 9 | 2 | 遠藤 | 6 | 1 | 欧勝馬 | 2 | 0 | 阿武咲 | 4 | 1 |
| 王鵬 | 6 | 2 | 大の里 | 1 | 4 | 隠岐の海 | 1 | 0 | 霧島 | 5 | 8 |
| 豪ノ山 | 3 | 2 | 琴恵光 | 2 | 1 | 琴櫻 | 5 | 9 | 琴勝峰 | 1 | 2 |
| 佐田の海 | 3 | 3 | 志摩ノ海 | 2 | 0 | 正代 | 4 | 7 | 湘南乃海 | 1 | 0 |
| 大栄翔 | 7 | 9 | 貴景勝 | 5(1) | 5 | 隆の勝 | 2 | 2 | 髙安 | 2(1) | 5 |
| 宝富士 | 2 | 0 | 尊富士 | 0 | 1 | 玉鷲 | 5 | 1 | 美ノ海 | 1 | 0 |
| 千代翔馬 | 2 | 0 | 千代大龍 | 1 | 2 | 千代丸 | 0 | 1 | 剣翔 | 2 | 1 |
| 照強 | 2 | 1 | 照ノ富士 | 1 | 3 | 栃ノ心 | 1 | 3 | 翔猿 | 13 | 3 |
| 錦木 | 6 | 2 | 錦富士 | 1 | 1 | 平戸海 | 1 | 4 | 豊昇龍 | 2 | 11 |
| 北青鵬 | 1 | 0 | 北勝富士 | 5 | 4 | 御嶽海 | 4 | 2 | 翠富士 | 5 | 1 |
| 妙義龍 | 4(1) | 0 | 明生 | 8 | 0 | 豊山 | 1 | 0 | 竜電 | 2 | 0 |
(カッコ内は勝数、負数の中に占める不戦勝、不戦敗の数)
7. 関連する記事
- 関脇一覧
- 兄弟スポーツ選手一覧
8. 外部リンク
- [https://sumo.or.jp/ResultRikishiData/profile/3371/ 日本相撲協会公式サイトのプロフィール]
- [http://sumodb.sumogames.de/Rikishi.aspx?r=11980 Sumo Referenceのプロフィール]