1. 生涯と経歴
許敬民は、幼少期から野球に打ち込み、アマチュア時代には韓国高校野球界の有望株として注目された。プロ入り後は兵役義務を遂行し、その後は斗山ベアーズで長年にわたり中心選手として活躍。2024年シーズン終了後にはKTウィズへ移籍した。
1.1. 幼少期とアマチュア時代
許敬民は光州広域市で生まれ育ち、宋亭洞小学校、光州忠壮中学校、光州第一高等学校で野球を学んだ。光州第一高等学校時代には、将来のKBOリーグスターとなる安致弘、金相洙、呉智煥と共に、韓国高校野球リーグの「ビッグ4遊撃手」の一人として高く評価された。
2008年には、第23回世界青少年野球選手権大会の韓国代表に選出され、金相洙と共に参加した。この大会で韓国は5度目の優勝を果たし、許敬民は先発遊撃手として全8試合に出場。打率.200(30打数6安打)、2打点、5得点を記録し、チームの金メダル獲得に貢献した。
1.2. プロ経歴
許敬民のプロ野球選手としてのキャリアは、兵役期間を挟みながらも着実に実績を積み重ね、斗山ベアーズの黄金期を支える存在となった。
1.2.1. プロ入りと兵役
許敬民は2009年のKBOリーグドラフトで、斗山ベアーズから全体15位で指名を受けプロ入りした。しかし、2009年シーズンは斗山ベアーズの二軍で過ごした。
2009年シーズン終了後、許敬民は兵役義務を遂行するため一時的にチームを離れた。2010年から2011年にかけては警察野球団に所属し、兵役期間中も野球を続けた。この期間中、彼は国際大会にも出場しており、2009年野球ワールドカップ、2010年野球インターコンチネンタルカップ、2011年野球ワールドカップに参加した。2009年野球ワールドカップでは打率.000(9打数0安打)、2得点、2010年野球インターコンチネンタルカップでは打率.267(15打数4安打)、2打点、3得点、2011年野球ワールドカップでは打率.256(39打数10安打)、2打点、3得点を記録した。
2011年の秋に除隊されると、2012年に斗山ベアーズに復帰し、開幕エントリーメンバーに名を連ねた。同年4月8日の対ネクセン・ヒーローズ戦でプロ初出場を果たした。
1.2.2. 斗山ベアーズ時代
斗山ベアーズに復帰した2012年シーズン序盤は主に遊撃手として出場したが、シーズン後半に打撃不振に陥り、金宰鎬の台頭によりレギュラーの座を譲った。しかし、同年のプレーオフでは打席に立つ機会はなかったものの、3戦目と4戦目に代走として起用され、2得点を記録した。
2013年以降は、李沅錫らと併用されながら三塁手としての起用が増えた。同年9月22日の対起亜タイガース戦では、ヘンリー・ソーサからプロ初となるソロ本塁打を記録した。また、同年のポストシーズンでは12打数4安打、1四球、1死球、1盗塁、1得点、打率.333、出塁率.429を記録した。2013年のオフには、入団時から着用していた背番号6を13に変更した。
2014年5月25日の対ハンファ・イーグルス戦では、5打数4安打1打点1得点を記録し、三塁打、二塁打、単打を放った。この試合で本塁打が出ればサイクルヒットを達成するところだったが、6回の打席はレフトフライに終わった。
2015年シーズンは、開幕当初は内野の控え選手だったが、外国人選手のザック・ラッツの戦力外通告や崔周煥の不振によりチャンスを掴み、リードオフマンとして定着した。8月6日の対ネクセン戦ではシーズン初本塁打を放ち、ヒーローインタビューを受けた。さらに9月18日には、遊撃手として先発出場した1回にヤマイコ・ナバーロを打者とする三重殺(トリプルプレー)を記録した。
同年のポストシーズンでは、10月10日から10月31日までの全試合に出場。プレーオフ第3戦と2015年の韓国シリーズ第5戦を除く全ての試合で安打を記録し、合計23安打を放ち、チームのポストシーズン最多安打新記録を樹立した。この活躍は、斗山ベアーズの14年ぶりとなる韓国シリーズ優勝に大きく貢献した。
2016年には、7月16日のオールスターゲームで行われた「バント王」イベントで23点を記録し、参加選手中最高得点を挙げた。シーズン終了後には、2017年WBCの最終エントリーメンバーに選出された。
同年もポストシーズンで活躍を見せ、2016年の韓国シリーズ第1戦では3安打と好走塁(無死一・二塁で、二塁走者の許敬民は左中間に飛んだ打球を肩の弱い李鍾旭が捕球したのを見て三塁に進塁。その後、相手投手の林昶暋が満塁策を取ったことで、呉載元のサヨナラ犠飛で生還した)で勝利に貢献。第3戦では3打点を記録し、第4戦では逆転となる2点タイムリー二塁打を放った。

2018年は主に1番打者として出場し、シーズン終了後には三塁手部門でゴールデングラブ賞を獲得した。
2019年のレギュラーシーズン最終戦である10月1日の対NCダイノス戦では、3点ビハインドの8回裏二死二・三塁の場面で打席に立ち、2点タイムリーヒットを放った。直後に金仁泰がタイムリースリーベースを放ったことで自身も生還し、同点に追いついた。最終的に9回に味方がサヨナラ勝ちを決め、斗山ベアーズはレギュラーシーズン連覇を達成した。
オフの11月に開催された第2回WBSCプレミア12の韓国代表にも選出された。
2020年4月29日のオープン戦対LGツインズ戦では、2年ぶりに遊撃手として先発出場した。
シーズン中には、7月1日の対キウム・ヒーローズ戦から25試合連続安打を記録し、自身初の月間MVPを受賞した。
シーズンオフにFA権を行使し、斗山ベアーズと7年総額最大85.00 億 KRW(5年目以降は選手オプション)で再契約し、残留した。
2021年も開幕エントリーメンバーに含まれ、4月17日の対LGツインズ戦で安打を放ったことにより、史上105人目となる通算1000本安打記録を達成した。その後もチームのリードオフマンとして安定した成績を残し続け、東京オリンピックの韓国代表メンバーに朴健祐と共に選出された。
2023 ワールド・ベース・ボール・クラシック韓国代表の予備エントリーに選出されたが、負傷により辞退した。
1.2.3. KTウィズ時代
2024年シーズン終了後、2回目のFA権を行使し、KTウィズと4年総額40.00 億 KRWで契約した。
1.3. 代表経歴
許敬民は、アマチュア時代からプロ入り後まで、数々の国際大会で韓国代表としてプレーしてきた。
- 2008年世界青少年野球選手権大会
- 2009年野球ワールドカップ
- 2010年野球インターコンチネンタルカップ
- 2011年野球ワールドカップ
- 2015 WBSCプレミア12 韓国代表
- 肘を故障した朴錫珉の代替選手として選出され、韓国の優勝に貢献し金メダルを獲得した。
- 2017 ワールド・ベース・ボール・クラシック 韓国代表
- 2019 WBSCプレミア12 韓国代表
- 銀メダルを獲得した。
- 2020年東京オリンピックの野球競技・韓国代表
- 2023 ワールド・ベース・クラシック韓国代表(予備エントリー、負傷により辞退)
2. 記録と表彰
許敬民は、KBOリーグでの長年のキャリアを通じて、打撃と守備の両面で多くの記録を樹立し、個人タイトルも獲得している。
2.1. 通算記録
年度 | チーム | 打率 | 試合 | 打数 | 得点 | 安打 | 2塁打 | 3塁打 | 本塁打 | 塁打 | 打点 | 盗塁 | 盗塁死 | 四球 | 死球 | 三振 | 併殺 | 失策 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2012 | 斗山 | 0.266 | 92 | 154 | 28 | 41 | 8 | 0 | 0 | 49 | 14 | 9 | 8 | 7 | 5 | 17 | 7 | 5 |
2013 | 0.298 | 75 | 228 | 35 | 68 | 9 | 1 | 1 | 82 | 25 | 14 | 4 | 27 | 9 | 14 | 7 | 7 | |
2014 | 0.247 | 105 | 198 | 33 | 49 | 8 | 1 | 0 | 59 | 10 | 6 | 4 | 21 | 6 | 21 | 7 | 3 | |
2015 | 0.317 | 117 | 404 | 64 | 128 | 20 | 2 | 1 | 155 | 41 | 8 | 3 | 31 | 7 | 42 | 11 | 13 | |
2016 | 0.286 | 144 | 538 | 96 | 154 | 24 | 4 | 7 | 207 | 81 | 6 | 6 | 49 | 14 | 58 | 14 | 8 | |
2017 | 0.257 | 130 | 369 | 50 | 95 | 22 | 1 | 3 | 128 | 40 | 8 | 4 | 29 | 10 | 48 | 15 | 5 | |
2018 | 0.324 | 133 | 516 | 85 | 167 | 30 | 5 | 10 | 237 | 79 | 20 | 4 | 32 | 16 | 52 | 15 | 0 | |
2019 | 0.288 | 133 | 475 | 71 | 137 | 25 | 1 | 4 | 176 | 60 | 11 | 5 | 34 | 17 | 36 | 16 | 8 | |
2020 | 0.332 | 117 | 437 | 70 | 145 | 25 | 1 | 7 | 193 | 58 | 14 | 6 | 35 | 5 | 28 | 10 | 9 | |
2021 | 0.278 | 136 | 468 | 61 | 130 | 24 | 1 | 5 | 171 | 59 | 5 | 7 | 36 | 8 | 35 | 21 | 8 | |
2022 | 0.289 | 121 | 432 | 59 | 125 | 23 | 0 | 8 | 172 | 60 | 10 | 3 | 36 | 16 | 40 | 12 | 9 | |
2023 | 0.268 | 130 | 429 | 44 | 115 | 23 | 1 | 7 | 161 | 48 | 9 | 3 | 35 | 6 | 26 | 6 | 5 | |
2024 | 0.309 | 115 | 417 | 69 | 129 | 28 | 0 | 7 | 178 | 61 | 5 | 1 | 36 | 18 | 25 | 8 | 5 | |
通算 | 13シーズン | 0.293 | 1548 | 5065 | 765 | 1483 | 269 | 18 | 60 | 1968 | 636 | 125 | 58 | 408 | 137 | 442 | 149 | 92 |
2.2. 主な表彰と記録達成
- ゴールデングラブ賞(三塁手部門):2018年
- 月間MVP:2020年7月
- 通算1000本安打:2021年4月17日、対LGツインズ戦(蚕室野球場)で達成。史上105人目。
; 初記録
3. 背番号
許敬民はプロ野球選手としてのキャリアを通じて、以下の背番号を着用してきた。
- 40 (2009年)
- 6 (2012年 - 2013年)
- 13 (2014年 - )
4. 出身学校
- 宋亭洞小学校
- 光州忠壮中学校
- 光州第一高等学校