1. 概要
ゼルグ・ガレシックは、2004年にプロデビューしたクロアチア出身の総合格闘家であり、テコンドーを基盤とした多彩な蹴り技と打撃技術を特徴とするストライカーである。彼はBellator MMA、Cage Rage、PRIDE、DREAM、UCMMA、SFL、K-1 Hero'sといった主要な格闘技団体で活躍し、元Cage Rage英国ミドル級王者である。親日家として知られ、「弁慶」のニックネームを持つ。
2. 背景と初期キャリア
ガレシックはユーゴスラビア、クロアチア社会主義共和国のプーラで生まれ育った。彼は10歳でテコンドーを始め、このスポーツの達人として数々の輝かしい実績を残している。
テコンドーにおいては、ITFテコンドーでヨーロッパ王者に3度、世界王者に2度輝き、さらにITCフルコンタクトテコンドーの世界王者にも2度なっている。英国のアマチュア格闘技大会「コンバット・スポーツ・オープン・トライアルズ」では無敗を誇り、そのほとんどの試合を1分以内に勝利している。
3. 総合格闘技キャリア
ゼルグ・ガレシックの総合格闘技キャリアは2004年に始まり、数々の主要な団体で印象的な試合を展開した。彼のキャリアは初期の国内戦から、日本のPRIDEやHERO'S、DREAM、そしてアメリカのBellator、インドのSFL、英国のUCMMAといった国際的な舞台へと広がっていった。
3.1. 初期キャリア
ガレシックのプロ総合格闘技デビュー戦は、2004年9月12日に「Ultimate Combat 11: Wrath of the Beast」で行われた。この試合で彼はジム・ベントリーと対戦し、わずか16秒でレフェリーストップによるKO勝ちを収め、鮮烈なデビューを飾った。その後、2005年4月10日には「Urban Destruction 1」でポール・テイラーに3R TKO負けを喫したが、同年7月30日の「Urban Destruction 2」ではジョン・フレミングに1R KO勝ちを収めている。
3.2. Cage Rage
ガレシックは英国の総合格闘技団体Cage Rageで目覚ましい活躍を見せた。2006年2月4日の「Cage Rage 15」でマイケル・ホームズに1R TKO勝ち、同年7月1日の「Cage Rage 17」でカーティス・スタウトに1R 1分10秒で腕ひしぎ十字固めによる一本勝ち、同年9月30日の「Cage Rage 18」でジェームス・エヴァンス=ニコルに1R TKO勝ちを収め、連勝を重ねた。
そして、2006年12月9日に行われた「Cage Rage 19: Fearless」での英国ミドル級タイトルマッチでマーク・ウィアーと対戦。試合開始からわずか50秒でパウンドによるKO勝ちを収め、第2代Cage Rage英国ミドル級王座を獲得した。
3.3. PRIDEおよびHERO'S
ガレシックは日本の主要な格闘技イベントにも参戦した。2007年4月8日、PRIDE初参戦となった「PRIDE.34」で瀧本誠と対戦したが、1R 5分40秒にチキンウィングアームロックで一本負けを喫した。
同年9月17日にはHERO'Sに初参戦し、ユン・ドンシクと対戦したが、1R 1分29秒に腕ひしぎ十字固めにより一本負けを喫した。しかし、同年10月28日の「HERO'S KOREA 2007」では金泰泳と対戦。試合序盤に放ったハイキックで金泰泳の右目をカットさせ、1R 36秒でのドクターストップによるTKO勝ちを収めた。
3.4. DREAM
ガレシックは日本の総合格闘技イベントDREAMのミドル級グランプリに参戦した。2008年4月29日の「DREAM.2 ミドル級グランプリ2008 開幕戦」1回戦でマゴメド・スルタンアクメドフと対戦し、1R 1分14秒に腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを収めた。
同年6月15日の「DREAM.4 ミドル級グランプリ2008 2nd ROUND」2回戦では、再び金泰泳と対戦。1R 1分5秒に金泰泳が右肘を脱臼したことによるTKO勝ちを収め、準決勝に進出した。しかし、同年9月23日の「DREAM.6 ミドル級グランプリ2008 決勝戦」準決勝でホナウド・ジャカレイに1R 1分27秒、腕ひしぎ十字固めで一本負けを喫し、グランプリから脱落した。
2009年10月25日、DREAM初のケージ(金網)開催となった「DREAM.12」で桜庭和志と対戦。この試合から所属をロンドン・シュートファイターズに変更したが、1R 1分40秒に膝十字固めで一本負けを喫した。桜庭戦での敗北後、ガレシックは15ヶ月間の休養を取った。2011年3月5日、英国のOMMACプロモーションで開催された「OMMAC 9: Enemies」でリー・チャドウィックと対戦し、1R 2分40秒にパンチによるKO勝ちで復帰戦を飾った。
3.5. Bellator FC
ガレシックはアメリカの総合格闘技団体Bellator Fighting Championshipsのトーナメントにも参戦した。2011年9月17日、Bellator初参戦となった「Bellator 50」のミドル級トーナメント1回戦でアレキサンダー・シュレメンコと対戦したが、1R 1分55秒にスタンドのギロチンチョークで一本負けを喫した。
2012年6月22日には、ライトヘビー級に階級を上げて「Bellator 71」のライトヘビー級トーナメント1回戦に出場。アッティラ・ベグと対戦したが、1R 1分00秒にリアネイキドチョークで一本負けを喫した。
3.6. Super Fight LeagueおよびUCMMA
Bellator参戦の合間には、インドの格闘技団体Super Fight League (SFL)でも活躍した。2012年5月6日の「SFL 3」で元WECライトヘビー級王者ダグ・マーシャルと対戦し、1R 34秒に跳び膝蹴りによるKO勝ちを収めた。
2013年2月2日には、英国のUCMMAライトヘビー級王座をかけてリントン・ヴァッセルと対戦したが、1R 4分31秒にパンチ連打によるTKO負けを喫した。同年10月25日には、クロアチアで開催された「Final Fight Championship 8」でリコ・ロドリゲスとキャッチウェイト(95kg契約)で対戦したが、1R 2分10秒に腕ひしぎ十字固めで一本負けを喫した。
4. キックボクシングキャリア
ゼルグ・ガレシックは総合格闘技でのキャリアの傍ら、キックボクシングにも挑戦した。彼のプロキックボクシングデビュー戦は、2014年7月12日に日本で開催された「R.I.S.E. 100」であった。この試合で彼はGloryのランキング12位に位置する上原誠と対戦。1ラウンド序盤にパンチと膝蹴りで上原をダウンさせる場面もあったが、攻め急いだ結果、1ラウンド1分25秒に右フックによるKO負けを喫した。
5. 獲得タイトルと功績
ゼルグ・ガレシックは総合格闘技キャリアを通じて以下のタイトルを獲得し、功績を残している。
- Cage Rage
- Cage Rage英国ミドル級王座(1回)
- DREAM
- 2008 DREAMミドル級グランプリ準決勝進出
6. ファイトスタイルとニックネーム
ゼルグ・ガレシックの格闘スタイルは、彼が10歳から始めたテコンドーを主軸としている。テコンドーで培われた卓越した蹴り技や、空手、ムエタイを組み合わせた変則的な打撃技術が特徴のストライカーである。身長188 cm、体重84 kg、リーチ183 cmという恵まれた体格を活かし、ミドル級やライトヘビー級で戦った。
彼は親日家として知られ、日本の伝説的な僧兵である武蔵坊弁慶にちなんで「弁慶」というニックネームが付けられた。また、その強力な打撃スタイルから「クロアチアの妖刀」とも呼ばれ、かつては「リトルクロコップ」の異名も持っていた。入場時にはリンキン・パークの「Crowling」を使用していた。
7. 戦績
ゼルグ・ガレシックの総合格闘技(MMA)およびキックボクシングのプロフェッショナル戦績は以下の通りである。
勝敗 | 対戦相手 | 試合結果 | 大会名 | 開催年月日 | ラウンド | 時間 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
負 | リコ・ロドリゲス | 1R 2:10 腕ひしぎ十字固め | Final Fight Championship 8 | 2013年10月25日 | 1 | 2:10 | ザグレブ、クロアチア | キャッチウェイト 95kg |
負 | リントン・ヴァッセル | 1R 4:31 TKO(パンチ連打) | UCMMA 32 | 2013年2月2日 | 1 | 4:31 | ロンドン、イングランド | UCMMAライトヘビー級タイトルマッチ |
負 | アッティラ・ベグ | 1R 1:00 リアネイキドチョーク | Bellator 71 | 2012年6月22日 | 1 | 1:00 | チェスター、アメリカ合衆国 | ライトヘビー級デビュー戦; Bellator 2012 ライトヘビー級トーナメント1回戦 |
勝 | ダグ・マーシャル | 1R 0:34 KO(跳び膝蹴り) | Super Fight League 3 | 2012年5月6日 | 1 | 0:34 | ニューデリー、インド | |
負 | アレキサンダー・シュレメンコ | 1R 1:55 ギロチンチョーク | Bellator 50 | 2011年9月17日 | 1 | 1:55 | ハリウッド、アメリカ合衆国 | Bellator 2011 ミドル級トーナメント1回戦 |
勝 | リー・チャドウィック | 1R 2:40 KO(パンチ) | OMMAC 9: Enemies | 2011年3月5日 | 1 | 2:40 | リヴァプール、イングランド | |
負 | 桜庭和志 | 1R 1:40 膝十字固め | DREAM.12 | 2009年10月25日 | 1 | 1:40 | 大阪市、日本 | |
負 | ホナウド・ジャカレイ | 1R 1:27 腕ひしぎ十字固め | DREAM.6 ミドル級グランプリ2008 決勝戦 | 2008年9月23日 | 1 | 1:27 | さいたま市、日本 | DREAMミドル級グランプリ準決勝 |
勝 | 金泰泳 | 1R 1:05 TKO(右肘の脱臼) | DREAM.4 ミドル級グランプリ2008 2nd ROUND | 2008年6月15日 | 1 | 1:05 | 横浜市、日本 | DREAMミドル級グランプリ2回戦 |
勝 | マゴメド・スルタンアクメドフ | 1R 1:14 腕ひしぎ十字固め | DREAM.2 ミドル級グランプリ2008 開幕戦 | 2008年4月29日 | 1 | 1:14 | さいたま市、日本 | DREAMミドル級グランプリ1回戦 |
勝 | 金泰泳 | 1R 0:36 TKO(ドクターストップ) | HERO'S KOREA 2007 | 2007年10月28日 | 1 | 0:36 | ソウル、韓国 | キャッチウェイト 95kg |
負 | ユン・ドンシク | 1R 1:29 腕ひしぎ十字固め | HERO'S 2007 ミドル級世界王者決定トーナメント決勝戦 | 2007年9月17日 | 1 | 1:29 | 横浜市、日本 | |
負 | 瀧本誠 | 1R 5:40 チキンウィングアームロック | PRIDE.34 | 2007年4月8日 | 1 | 5:40 | さいたま市、日本 | |
勝 | マーク・ウィアー | 1R 0:50 KO(パウンド) | Cage Rage 19: Fearless | 2006年12月9日 | 1 | 0:50 | ロンドン、イングランド | Cage Rage英国ミドル級王座獲得 |
勝 | ジェームス・エヴァンス=ニコル | 1R 2:02 TKO(パウンド) | Cage Rage 18: Battleground | 2006年9月30日 | 1 | 2:02 | ロンドン、イングランド | |
勝 | カーティス・スタウト | 1R 1:10 腕ひしぎ十字固め | Cage Rage 17: Ultimate Challenge | 2006年7月1日 | 1 | 1:10 | ロンドン、イングランド | |
勝 | マイケル・ホームズ | 1R 1:41 TKO(パンチ) | Cage Rage 15: Adrenalin Rush | 2006年2月4日 | 1 | 1:41 | ロンドン、イングランド | |
勝 | ジョン・フレミング | 1R KO(パンチ連打) | Urban Destruction 2 | 2005年7月30日 | 1 | N/A | ブリストル、イングランド | |
負 | ポール・テイラー | 3R 1:42 TKO(パンチ連打) | Urban Destruction 1 | 2005年4月10日 | 3 | 1:42 | ブリストル、イングランド | |
勝 | ジム・ベントリー | 1R 1:16 KO(パンチ) | Ultimate Combat 11: Wrath of the Beast | 2004年9月12日 | 1 | 1:16 | ブリストル、イングランド |
勝敗 | 対戦相手 | 試合結果 | 大会名 | 開催年月日 | ラウンド | 時間 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
負 | 上原誠 | 1R 1:25 KO(右フック) | R.I.S.E. 100 | 2014年7月12日 | 1 | 1:25 | 東京都、日本 | キックボクシングデビュー戦 |