1. 個人史と背景
トラオレは1988年12月28日にコートジボワールの経済都市アビジャンで生まれた。彼の両親はブルキナファソ出身であるため、トラオレ自身もブルキナファソのパスポートを所持している。この家族的背景から、彼は国際試合においてブルキナファソ代表を選択し、同国代表としてプレーしている。
2. クラブ経歴
トラオレは、アフリカのクラブからキャリアをスタートさせ、その後ヨーロッパ(ノルウェー、ポーランド、トルコ)のリーグで長期間活躍し、近年はアジア(中国)のクラブでもプレーするなど、多様な国とリーグで経験を積んできた。
2.1. ラジャ・カサブランカ
プロキャリアの初期に、トラオレはモロッコの著名なクラブであるラジャ・カサブランカに所属していた。このクラブでの経験を経て、彼はその後のヨーロッパでの挑戦へと進んだ。
2.2. ローゼンボリBK
2006年、トラオレはノルウェーのトップリーグであるエリテセリエンに所属する強豪クラブ、ローゼンボリBKにフリーで加入した。このクラブでは、2006年12月にASECアビジャンから移籍してきた同郷のコートジボワール代表選手ディディエ・ヤ・コナンと共にプレーした。
2007年8月、ノルウェーの地元新聞は、トラオレがコートジボワールでの休暇中に襲撃され、暴行と強盗の被害に遭ったと報じた。同年11月には、サッカー専門誌『ワールドサッカー』が選定する「世界の有望な若手選手50人」の一人に選出され、その将来性が高く評価された。
しかし、2008年10月24日、練習中にチームメイトのオイヴィン・ストルフォルを殴り倒すという事件を起こした。この行為に対し、クラブは翌日、トラオレに対しそのシーズンの残り2試合の出場停止処分を科した。彼の契約は2010年末に満了し、ローゼンボリBKでの最後の年は出場機会が少ない困難な時期となった。クラブのサッカー部門責任者であるエリック・ホフトゥンは、彼の退団に際し「アブドゥのクラブでの期間に感謝する。残念ながら、彼は我々が期待したほど成長しなかったが、彼の将来の成功を願っている」とコメントした。
2.3. レヒア・グダニスク
2010年8月20日、トラオレはポーランドのトップリーグであるエクストラクラサに所属するレヒア・グダニスクに期限付き移籍で加入した。8月28日のシロンスク・ヴロツワフ戦でリーグデビューを果たした。9月21日にはポーランド・カップのグールニク・ザブジェ戦で移籍後初ゴールを記録し、その4日後の9月25日にはリーグ戦のグールニク・ザブジェ戦で自身初の2ゴールを挙げ、チームの攻撃を牽引した。
2.4. ガズィアンテプスポル
2013年1月15日、トラオレはトルコのトップリーグであるスュペル・リグに所属するガズィアンテプスポルにフリーで移籍した。彼はこのクラブで2012年から2014年にかけてプレーした。
2.5. カラビュックスポル
ガズィアンテプスポルでのプレー後、トラオレは同じくトルコのスュペル・リグのクラブであるカラビュックスポルに加入した。彼はこのクラブで2014年から2017年にかけてプレーし、チームの主要選手として活躍した。
2.6. コンヤスポル
2015年から2016年にかけて、トラオレはコンヤスポルに期限付き移籍で所属した。その後、2017年から2019年まで完全移籍でプレーし、この期間中にクラブは2017年にTFFスュペル・クパを獲得するなどの実績を残した。
2.7. スィヴァススポル
2019年8月31日、トラオレはトルコのスィヴァススポルと1年間の契約(1年延長オプション付き)を結び、再びスュペル・リグでのキャリアを続けた。
2.8. ブルサスポル
2020年には、トルコのTFF1.リグに所属するブルサスポルに期限付き移籍で加入し、シーズンを通じてチームに貢献した。
2.9. ギレスンスポル
ブルサスポルでの期限付き移籍期間を終えた後、トラオレはトルコのギレスンスポルに所属し、2020年から2021年にかけてプレーした。
2.10. 南通支雲
2021年、トラオレは中国サッカーリーグの南通支雲に移籍し、アジアでのキャリアを開始した。彼はこのクラブで2021年シーズンに中国リーグワンに16試合出場し6得点を記録した。続く2022年シーズンには29試合に出場し9得点を挙げ、チームの攻撃を牽引した。
2.11. 南京城市
2023年7月1日、トラオレは同じく中国サッカーリーグの南京城市に加入した。このクラブでは2023年シーズンに12試合に出場し3得点を記録した。
3. 代表経歴
トラオレは、両親がブルキナファソ出身であるため、コートジボワール生まれでありながらブルキナファソのパスポートを所持しており、国際舞台ではブルキナファソ代表としてプレーしている。
2011年3月27日、ナミビア代表との試合でブルキナファソ代表としてデビューを果たした。ブルキナファソ代表では、2011年から2021年にかけて合計49試合に出場し、4得点を記録している。
4. プレースタイル
トラオレは主にフォワードとしてプレーするが、攻撃的ミッドフィールダーとしてもその能力を発揮し、攻撃の多様性をチームにもたらす。
5. 経歴統計

5.1. クラブ
クラブ | シーズン | リーグ | 国内カップ | 大陸大会 | その他 | 合計 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディビジョン | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||
ローゼンボリ | 2007 | エリテセリエン | 18 | 1 | 4 | 0 | 9 | 3 | - | 31 | 4 | |
2008 | エリテセリエン | 15 | 1 | 1 | 0 | 7 | 0 | - | 23 | 1 | ||
2009 | エリテセリエン | 10 | 1 | 1 | 0 | 2 | 0 | - | 13 | 1 | ||
2010 | エリテセリエン | 8 | 0 | 3 | 1 | 1 | 0 | - | 12 | 1 | ||
合計 | 51 | 3 | 9 | 1 | 19 | 3 | - | 79 | 7 | |||
レヒア・グダニスク | 2010-11 | エクストラクラサ | 27 | 12 | 6 | 1 | - | - | 33 | 13 | ||
2011-12 | エクストラクラサ | 24 | 4 | 0 | 0 | - | - | 24 | 4 | |||
2012-13 | エクストラクラサ | 13 | 9 | 2 | 1 | - | - | 15 | 10 | |||
合計 | 64 | 25 | 8 | 2 | - | - | 72 | 27 | ||||
ガズィアンテプスポル | 2012-13 | スュペル・リグ | 11 | 2 | 0 | 0 | - | - | 11 | 2 | ||
2013-14 | スュペル・リグ | 26 | 8 | 1 | 0 | - | - | 27 | 8 | |||
合計 | 37 | 10 | 1 | 0 | - | - | 38 | 10 | ||||
カラビュックスポル | 2014-15 | スュペル・リグ | 25 | 10 | 4 | 2 | 4 | 0 | - | 33 | 12 | |
2016-17 | スュペル・リグ | 17 | 7 | 0 | 0 | - | - | 17 | 7 | |||
合計 | 42 | 17 | 4 | 2 | 4 | 0 | - | 50 | 19 | |||
コンヤスポル (期限付き移籍) | 2015-16 | スュペル・リグ | 30 | 7 | 5 | 0 | - | - | 35 | 7 | ||
コンヤスポル | 2017-18 | スュペル・リグ | 1 | 0 | 0 | 0 | - | 1 | 1 | 2 | 1 | |
2018-19 | スュペル・リグ | 21 | 0 | 2 | 1 | - | - | 23 | 1 | |||
合計 | 22 | 0 | 2 | 1 | - | 1 | 1 | 25 | 2 | |||
スィヴァススポル | 2019-20 | スュペル・リグ | 9 | 0 | 4 | 2 | - | - | 13 | 2 | ||
ブルサスポル (期限付き移籍) | 2019-20 | TFF1.リグ | 14 | 4 | 4 | 2 | - | 2 | 0 | 20 | 6 | |
ギレスンスポル | 2020-21 | TFF1.リグ | 26 | 3 | 2 | 0 | - | - | 28 | 3 | ||
南通支雲 | 2021 | 中国リーグワン | 16 | 6 | 1 | 0 | - | - | 17 | 6 | ||
2022 | 中国リーグワン | 29 | 9 | 0 | 0 | - | - | 29 | 9 | |||
合計 | 45 | 15 | 1 | 0 | - | - | 46 | 15 | ||||
南京城市 | 2023 | 中国リーグワン | 12 | 3 | 0 | 0 | - | - | 12 | 3 | ||
通算 | 352 | 87 | 40 | 9 | 23 | 3 | 3 | 1 | 418 | 101 |
5.2. 代表
代表チーム | 年 | 出場 | 得点 |
---|---|---|---|
ブルキナファソ | 2011 | 8 | 1 |
2012 | 5 | 0 | |
2013 | 8 | 2 | |
2014 | 3 | 0 | |
2015 | 1 | 0 | |
2016 | 5 | 0 | |
2017 | 7 | 0 | |
2018 | 4 | 1 | |
2019 | 2 | 0 | |
2020 | 4 | 0 | |
2021 | 1 | 0 | |
合計 | 49 | 4 |
:得点と結果の欄は、ブルキナファソの得点を先に示し、トラオレの各得点後のスコアを示している。
6. 受賞歴
6.1. チームタイトル
- ローゼンボリ
- エリテセリエン: 2009年、2010年
- スーペルフィーナレン: 2010年
- コンヤスポル
- TFFスュペル・クパ: 2017年
6.2. 個人受賞歴
- エクストラクラサ
- 月間最優秀選手: 2012年10月
7. 論争と事件
トラオレのキャリアにおいては、いくつかの重要な出来事や論争が報じられている。
2007年8月、彼はコートジボワールでの休暇中に襲撃され、暴行と強盗の被害に遭った。
また、2008年10月24日には、当時所属していたローゼンボリBKの練習中にチームメイトのオイヴィン・ストルフォルを殴り倒すという事件を起こした。この行為に対し、クラブは直ちに彼の行動を問題視し、翌日にはトラオレに対し、そのシーズンの残り2試合の出場停止という処分を科した。この事件は、彼のクラブでの将来に影響を与え、ローゼンボリBKでの最後の年は出場機会が減少する結果となった。