1. 概要
主永大(주영대チュ・ヨンデ韓国語、1973年1月15日 - )は、大韓民国のパラ卓球選手である。彼は2016年リオデジャネイロパラリンピックで2つの銀メダルを獲得し、2020年東京パラリンピックでは男子シングルス(C1)で金メダルを獲得し、韓国にこの大会初の金メダルをもたらした。右利きでシェークハンドグリップのプレースタイルを持つ。
主永大は、交通事故による障害を乗り越え、リハビリテーションの一環として卓球を始めた。その不屈の精神と努力は、彼を世界トップクラスのパラ卓球選手へと押し上げ、多くの人々に希望とインスピレーションを与えている。彼の功績は、韓国の障害者スポーツの発展にも大きく貢献している。
2. 生涯と背景
主永大は、1973年1月15日に大韓民国慶尚南道泗川市西浦面金津里で生まれた。彼の人生は、若くして遭遇した交通事故によって大きく変化したが、それを機に新たな道を見出した。
2.1. 子供時代と障害
主永大は、泗川市で生まれ育った。慶尚大学校体育学科に在学中の1992年(英語源では1993年と記載されているが、韓国語源の詳述に基づき1992年とする)、彼は交通事故に遭い、これにより肢体障害を負うこととなった。この事故は彼の人生に大きな転機をもたらしたが、2008年にリハビリテーションの一環として卓球を始めたことが、彼の選手としてのキャリアの出発点となった。
2.2. 学歴
主永大は泗川高等学校を卒業後、慶尚大学校体育学科に進学した。大学在学中に交通事故に遭い、選手としての道を歩むことになる。
3. 卓球選手としての経歴
主永大は、2008年に卓球を始めて以来、国内外の大会で目覚ましい活躍を見せている。特に国際大会では、数々のメダルを獲得し、世界トップクラスのパラ卓球選手としての地位を確立した。彼のコーチは崔京植である。2017年7月には世界ランキング1位を記録した。
3.1. 選手活動の開始
交通事故による障害を負った後、主永大は身体機能の回復と精神的な安定を求めてリハビリテーションに取り組んだ。その中で、2008年に卓球と出会い、これを本格的に始めることとなった。当初はリハビリ目的であったが、卓球の魅力に引き込まれ、やがてプロの選手として活動するようになる。
3.2. 主要国際大会での成果
主永大は、アジアパラ競技大会、パラリンピック、世界パラ卓球選手権大会など、主要な国際大会で数々の輝かしい成績を収めてきた。
3.2.1. 2014年仁川アジアパラ競技大会
2014年に仁川広域市で開催された2014年アジアパラ競技大会に大韓民国代表として出場した。男子シングルス(C1)で金メダルを獲得し、さらに団体戦でも銀メダルを獲得した。この功績により、12月に開催された「泗川人の夜」イベントで優秀選手賞を受賞した。
3.2.2. 2015年スロバキアオープン
2015年5月にスロバキアで開催されたオープン大会に参加した。シングルス(C1)では銀メダルを獲得し、団体戦(C1)では金メダルを獲得した。
3.2.3. 2016年リオデジャネイロパラリンピック
2016年にリオデジャネイロで開催された2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場した。男子シングルス(C1)では決勝に進出したが、イギリスのデイビッド・ラブにセットカウント1-3で敗れ、惜しくも銀メダルとなった。また、車秀勇、金京黙と共に団体戦(C1-2)にも出場し、決勝でフランスに1-2で敗れたものの、銀メダルを獲得した。
3.2.4. 2017年アジアパラ卓球選手権大会
2017年に北京で開催されたアジアパラ卓球選手権大会に参加した。シングルス(C1)と団体戦(C1-2)の両方で金メダルを獲得する快挙を達成した。
3.2.5. 2018年の主要活動
2018年、慶尚南道障害者体育会は卓球チームを創設することを決定し、主永大はそれまで所属していた釜山広域市障害者卓球協会を離れ、故郷である慶尚南道の慶尚南道障害者体育会卓球チームに入団した。
3.2.6. 2019年の主要大会参加
2019年も国内外の主要大会に積極的に参加した。4月5日から7日にかけて蔚山広域市で開催された大韓障害者卓球協会長杯全国障害者卓球大会に参加し、シングルス(C1)で金メダルを獲得した。その後、4月26日から28日に開催された富川市長杯障害者卓球大会では銅メダルを獲得した。5月に開催されたスロベニアオープン大会では、シングルス(C1)で金メダル、団体戦で銀メダルを獲得した。8月にはバンコクで開かれたバンコクオープンにも参加し、シングルスで金メダル、団体戦で銀メダルを獲得した。
3.2.7. 2020年東京パラリンピック
1年延期され2021年に開催された2020年東京パラリンピックに出場した。男子シングルス(C1)で決勝に進出し、同じ大韓民国の金現旭選手と対戦。セットカウント3-1で勝利し、自身初のパラリンピック金メダルを獲得した。この大会では、南基元選手も銅メダルを獲得しており、韓国選手が金・銀・銅すべてのメダルを獲得したことが大きな話題となった。
3.3. 国内大会への参加
主永大は、国際大会での活躍に加え、国内の主要大会にも積極的に参加している。2019年に蔚山広域市で開催された大韓障害者卓球協会長杯全国障害者卓球大会や、富川市長杯障害者卓球大会などがその例である。これらの大会でも常に好成績を収め、国内におけるパラ卓球の普及と発展に貢献している。
4. 競技方式とクラス分類
パラ卓球は、選手の障害の程度に応じて公平な競技を保証するために、独自のクラス分類システムを採用している。主永大選手が主に活動するC1クラスは、この分類システムの中で最も重度の障害を持つ選手が対象となる。
4.1. 障害クラス分類システム
パラ卓球では、選手の障害の程度に応じて「TT1」から「TT10」までのクラスに分類される。このうち、「TT1」から「TT5」までのクラスは車椅子を使用する選手が対象となり、「TT6」から「TT10」までのクラスは立位でプレーする選手が対象となる。数字が小さいほど障害の程度が高いことを意味し、例えば「TT1」は最も障害が重いクラスである。パラリンピックでは「C(クラス)」と表記され、主永大選手が属する「C1」クラスは、車椅子を使用する選手の中で最も障害の程度が高いクラスに該当する。この厳格なクラス分類により、選手たちは自身の能力を最大限に発揮し、公平な条件で競技に臨むことができる。
5. 評価と影響
主永大は、単なる卓球選手としてだけでなく、大韓民国の障害者スポーツ界全体に大きな影響を与えた人物として高く評価されている。交通事故による重度の障害を負いながらも、卓球を通じて再び立ち上がり、世界的な成功を収めた彼の姿は、多くの障害者にとって希望の象徴となっている。
彼の粘り強い努力と卓越した技術は、パラ卓球という競技の認知度向上に貢献し、障害者スポーツへの関心を高めるきっかけを作った。特に、2020年東京パラリンピックでの金メダル獲得は、韓国の障害者スポーツの歴史に新たな1ページを刻み、国民に大きな感動と勇気を与えた。主永大の物語は、逆境を乗り越える人間の強さと、スポーツが持つ無限の可能性を示すものであり、彼の存在は今後も多くの人々にインスピレーションを与え続けるだろう。