1. 概要
高橋留美子による漫画作品『うる星やつら』、およびそれを原作とするアニメ作品のヒロインであるラムは、鬼型宇宙人の娘であり、その象徴的な虎縞模様のビキニ姿と電撃能力、そして語尾の「~だっちゃ」で広く知られています。当初は脇役として構想されていましたが、その個性と人気によって作品の顔となり、結果的にメインキャラクターとしての地位を確立しました。彼女は、地球を侵略しにきた鬼族が人類に与えた鬼ごっこの勝負において、偶然選ばれた地球人の諸星あたるとの間に誤解から婚約関係を結び、それ以来「ダーリン」と呼ぶあたるを一途に愛し、彼らの奇妙ながらも深い関係が物語の核をなしています。ラムは純粋で天真爛漫な性格の一方で、あたるの浮気には容赦ない電撃制裁を加えるなど、情熱的な一面も持ち合わせています。その登場は、その後のアニメ・漫画における「萌え」や「ツンデレ」といったキャラクター類型に大きな影響を与え、文化的なアイコンとしても認知されています。
2. キャラクター解説
ラムは、その創造的なデザインから独特な容姿、強力な能力、そして人間味あふれる性格や話し方まで、多角的な魅力を持つキャラクターです。
2.1. 構想とデザイン
ラムのキャラクターは、作者の高橋留美子がプロデビュー以前に取り組んでいた短編のために創造されました。高橋は、ラムの髪型や体型を細部にわたって練り上げました。当初、彼女のキャラクターは「ショートヘアでビキニ」と「ロングヘアでミニワンピース」の2案が存在しましたが、最終的には1978年の正月に両案の折衷案ともいえる「ロングヘアのビキニ」が採用されました。高橋は、ラムのような率直で奔放なキャラクターは自分とは正反対であると感じており、このキャラクターを通して、自分自身とは全く異なる人物を描けることを発見したと語っています。また、ラムは高橋にとって最も理解しがたいキャラクターであるものの、「恩人」とも述べており、漫画のキャラクターには自分と重ならない人物もいることを教えてくれた存在だと語っています。
2.2. 容姿と服装
ラムは基本的に地球人と酷似した容姿をしていますが、耳がわずかに尖っており、頭部には小指ほどの小さな二本の角を持っています。この角は鬼族の特性として成長と共に生え替わる性質があります。特別な液体をかけると柔らかくなり、バレッタのような形に整えることも可能です。この角が外れたり、特殊な黄色いリボンで縛られたりすると、電撃や飛行能力が失われ、普通の女の子になります。
髪の色は、原作漫画では構造色によって見る角度で様々に変化する虹色として描かれています。アニメ第1作では一貫して緑色で表現されていましたが、OVA『うる星やつら ザ・障害物水泳大会』では緑色でした。アニメ第2作では緑を基調としつつ、青や黒のグラデーションが取り入れられ、電撃を放つ際のみ原作と同様の虹色になります。瞳の色は原作では一定せず、青、黄、緑など様々でしたが、アニメ第1作では青(一部OVAでは緑)、第2作では黄色系のグラデーションで統一されています。
身長は主要な男子生徒よりも低く、他の同級生女子キャラクターとほぼ同じであるため、日本人女性の平均的な身長と見られます。作中でラムを見た多くの男子キャラクターからは「すごい美人」「かわいい」「グラマー」などとその容姿が称賛される美少女です。
普段は、日本古来の鬼のイメージを形称化した虎縞模様のビキニとロングブーツを着用しており、非常に露出度が高いです。この虎縞ビキニは本人にとって「一張羅」です。非常にセクシーな曲線美の持ち主で、作品初期には露出度の高さも相まって色気で男性キャラクターを魅了する場面も多く見られました。あたるとの鬼ごっこの際にも、あたるはラムのツノを掴むためにその体を掴む必要性を意識し、彼女のスタイルを認識していました。友引高校に通うようになってからは、セーラー服をはじめとする地球の一般的な女の子の服(和服を含む)を着る場面も増えましたが、下着は普段着でもある虎縞ビキニを着用しています。アニメ版では、セーラー服着用の際に一般生徒が赤いスカーフを付けているのに対し、ラムは黄色のスカーフを付けています。ラムの衣装は、日本の雷神である雷神から強く影響を受けています。
2.3. 能力と特性
ラムは飛行能力と電撃を放つ能力を持ち、電撃の電圧は自身の意思で自由に調整できます。初登場時の鬼ごっこの際は高くジャンプする程度でしたが(鬼ごっこ終了時にUFOに自ら飛行して帰還する描写があるため、鬼ごっこの間はルールでジャンプ以上の飛行が禁止されていたと後に解説されています)、その後は完全に空を飛び、その気になればかなりの高速で移動することも可能です。
電撃を放つ超能力を持つため、高電圧を吸収して充電することもでき、その際には電気の味も分かるとされる描写があります。限界まで電気を溜めると常に放電する状態になります。電撃は怒った際の攻撃に使われるほか、愛情表現としても用いられ、また寝ている間に寝ぼけて放電することもあります。初期には電撃を愛情表現としてあたるに使用していましたが、人間にとってそれが苦痛であり、場合によっては感電死する可能性さえあることを知らずにいました。ラムは、電撃を浴びて喜ぶ「ラム後援会」の4人組(アニメ第1作ではラム親衛隊に相当)を見て、悲鳴を上げるあたるの方が異常だと考えていましたが、この回以降、電撃を愛情表現として使うことはなくなりました。しかし、ラムにとって最高の愛情表現はやはり電撃放射のようで、不思議な力を持つ宇宙のお菓子「奪魂糖」の力であたるへの好意が限界まで高まった際には、「最大級愛情表現」と称してあたるに抱きつき、凄まじい放電を行いました。
放電するとストレスが解消される体質とされています。また、角が生えていない期間(作中では数日程度。角を片方失っている場合は能力が半減します)や、錯乱坊が作った超能力封じの黄色いリボンを角につけられている間は、これらの超能力(空中浮遊、電撃放射能力など)を失います。電撃を発射する際は基本的に指先や手のひらから発射し、特別なポーズはありませんが、エピソードによってはウルトラセブンのワイドショットのようなポーズで電撃を放つこともあり、例えば高橋留美子展の特別アニメ(週刊少年サンデー創刊50周年記念)では、女らんまと日暮かごめをナンパしていたあたるに「浮気は許さないっちゃー!」と激怒して同様のポーズで電撃を放っています。
電撃などの超能力を除いた腕力は、地球人の一般女性と同程度とされますが(作中では腕相撲であたるに負けた描写があります)、地球人に比べて寒さには非常に強く、雪が積もるような日でもビキニ姿で平然と外出できます。本人いわく「鍛え方が違う」とのことです。痺れ薬も効きません。
普段はあたると諸星家の2階にあるあたるとの部屋、または地球上空に停泊している自分専用の虎縞模様の小型UFOに住んでいます。あたるとの部屋で寝るときは、押し入れの中で一人か、テンと一緒に寝ている描写があります。自身のUFOの中で眠る際は、普段は自室のベッドで寝ていますが、病気(地球の風邪に感染した時など)の際には治療カプセルのような場所に入って寝ている描写もあります。
作中、何度も自身が着用しているブラジャーから物を取り出すシーンがあり、睡眠薬の反応液、包帯、ゲームコントローラ、婚約指輪、千円札などが出てきたことがあります。睡眠薬の反応液を取り出した際、面堂に「あなたのブラには妙なものが入ってるんですね」とツッコミを入れられました。ブラジャーの替えはなく、これが鬼ごっこの敗因にもなったとされています(アニメでは鬼ごっこ最終日にブラジャーを奪われたことが敗因)。
また、ラムに限らず鬼族は、体内にばい菌が入ると角が免疫反応を起こし、牛のように曲がって伸びてしまう症状が出ることがあります(ラムは牛に噛まれたことでこの症状になり、自分が牛になってしまうのではないかと勘違いしました)。
編み物は人並み程度にできますが、急いで作った場合は悲惨な出来栄えになります。
彼女の手料理は猛烈に辛く、あたるはラムの料理を「まずい」と評し、食べたがりません。そもそも鬼族自体がタバスコ(2022年版アニメではハバネロ)やハバネロなどのホットソースをジュースのように飲むような種族であるため、人間と鬼族との味覚の違いがあたる達地球人の口に合わない原因です。ラムの料理の腕は(鬼族の基準では)決して悪くなく、テンはラムの手料理を食べた際に「けっこういけるで」と発言しています。実際に人間の味覚に配慮して月見団子を作った時には温泉マークから評価されています。ただし、使用する食材の多くは地球人に影響がある素材(ラムたち宇宙人には馴染みのあるもの)で作ることが多く、トラブルを巻き起こす元になることもあります。また、調理法も豪快で、豪火燃え盛るオーブンや火炎放射器での調理を用いる場合も多いです。劇場版アニメ『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』では、山盛りのポテトサラダのようなものにパイナップルやバナナをそのまま突き刺した上に唐辛子をふりかけ、素手で不格好な形状に仕上げています。
地球の料理については、イカ料理が好みで、特にスルメが大好物です。一方でラーメンを「味がない」と評しています。梅干しを食べると酔っ払う体質(テンも同様)で、さらに泥酔状態になるとやや酒乱の気質が見られ、ところ構わず電撃を乱射してしまいます。ニンニクの臭いが苦手で、臭いが混じった煙を浴びると涙が止まらなくなります(解毒剤は彼女の惑星のもので、あたるはそれが美味しいと感じます)。また、地球外の食材では「モグモグ」という食材が嫌いだと述べています。
理数系に強く、科学的に進歩の異なる地球に合わせて自分の星の電化製品などを瞬く間に改造する機械工学の知識を持っていますが、宇宙人であるため国語系の教科は苦手です。
一時期、担任の勧めで女子バレーボール部に所属していましたが、修学旅行編以降は登場していないため、その後も続けたかは不明です。
2.4. 性格と人物像
ラムの長所は、非常に無邪気で人見知りをせず、天真爛漫で快活な点です。お人好しな面もあり、一歩間違えるとお節介なほど世話焼きな一面も持っていますが、後述の短所によって台無しになることも少なくありません。また、稀に見る凶運の持ち主で、並のアホではないあたると結婚すると決めてからは、終始妻として行動し、首尾一貫して愛情を示し続けるひたむきさと意志の強さを見せています。ラムに対してつれない態度のあたるの振る舞いを見たラムの父親が、彼女に故郷の星へ帰るよう勧めても、きっぱりと断っています。父親はかなりの権力者と思われますが、ラム自身は全く鼻にかけるそぶりを見せず、偉そうに振る舞ったり他人を見下したりする思考がなく、大変気さくな人物です(ただし、本気で怒らせると怖いのは確かです)。周囲から「アホ」扱いされているあたるとは異なり、人望も信用もあります。また、「嫁ぎ先」である諸星家にもすっかり馴染み、あたるの両親からは実の娘のように可愛がられています。
短所としては、爆発する料理を平気で作ったり、足でUFOを操作したり、パスポートの切り替えを面倒くさがったり、鬼族と人間との味覚の違いを考慮せずに料理を作ったりと、適当で雑な上に配慮に欠けた面があることです。おまけに幼馴染のラン曰く、ラムの最大の欠点は「悪気がない事」と指摘しているように、それらを悪気なくやってしまう、いわゆる天然キャラクターであることです。前述の長所が短所として裏目に出ることもあります。思い込みが激しく、あたるに関する事柄には思い立ったらすぐに動いてしまう面も挙げられます。
当初はしのぶに対してライバル心を剥き出しにして、いたずらを仕掛けるなど、後期の弁天以上に粗野で攻撃的な性格をしていましたが、三角関係が解消すると、初期のような攻撃的な性格は鳴りを潜めていきました。特に原作第1話での言葉遣いは、ヒロインとしての地位を固めた頃とは比べ物にならないほど荒々しく描かれ、アニメ版のような無邪気なものではなく、鬼ごっこであたるを殴る蹴る高所から突き落とすなど、後の同一人物とは思えないほどの描写がありました。同様に初期は非常に大胆な性格でもあり、物語序盤では過激にもあたるにすぐに抱きついたりキスしたりしましたが、奥手なしのぶへの当てつけ目的だったためか、終盤では腕組みをする程度に落ち着いています。また、愛想を尽かした相手とは言えレイとの約束を平然と反故するなど、初期は悪女としての描写も少なくありませんでした。
子供の頃は極めておてんばで、かつ過激な性格でした。銃をいたずらして叱られる、小学校の先生にバズーカ砲を撃ち込む、中学校の先生に時限爆弾を仕掛ける(いずれも相手はロボットやサイボーグで、攻撃を喰らっても全くの無傷でしたが)、などの逸話が作中で語られています。ブラスター銃をいたずらした時は父親からお尻を叩かれました。普段は顕著ではありませんが、喧嘩は買う主義で、「絶体絶命」ではあたるとしのぶの「浮気」に徹底抗戦をし、最終的には特攻までしています。「トラブルは舞い降りた」では「面堂がお前に決闘を仕掛けた」とあたるに言われると面堂を攻撃して敗北させたり、しばしば挑戦してくるスケバン3人組の挑戦を逃げも隠れもせずに受けたりしています。
しかし、連載開始当初はその個性が際立っていましたが、話が進むにつれてラム以上にアクの強いキャラクターが次々と登場し、次第にラムは彼らの個性の前に埋もれていき、終盤では比較的常識人的な位置づけのキャラクターとなっていきました。
2.5. 話し方
ラムの話し方は基本的に原作者・高橋留美子の創作ですが、一人称の「うち日本語」、疑問の助詞「~(の)け?」などは方言からの借用です。ただし、日本各地の方言で見られるため、どの方言からの借用であるか明確に特定することはできません。アニメ・映画における平野文による発話では、共通語・標準語のイントネーションで話され、方言要素は語彙のみに限定されました。アニメ第2作における上坂すみれの演技についても同様となっています。
2.5.1. 「だっちゃ」について
ラムの象徴的な語尾である「~だっちゃ日本語」や「~っちゃ日本語」(だ日本語はコピュラ、っちゃ日本語は終助詞)は、井上ひさしの小説において用いられていた仙台弁に由来します。井上ひさしは山形県生まれですが、幼少期から高校時代まで宮城県仙台市で育ち、彼の小説には仙台弁の「~だっちゃ日本語」「~っちゃ日本語」が多用されています。高橋自身は「"だっちゃ"は、編集者のアドバイスで、『勝手なやつら』の半魚人がなまっていたので、ラムもそうしたらいいんじゃないか、と。私、井上ひさし先生の『青葉繁れる』が好きなんですが、仙台の物語で"だっちゃ"が出てくるんです。それを使わせていただきました」と語っています。これにより、自身のデビュー作『勝手なやつら』の登場人物である「だっぴゃ星人日本語」(半魚人)が語尾に付ける「だっぴゃ日本語」を、高橋が好きだった井上ひさし作の小説『青葉繁れる』に出てくる「だっちゃ日本語」に変更し、ラム語を作り出しました。
高橋は、文字化された仙台弁から借用したため、実際の話し言葉の仙台弁における用い方とは異なります。例えば、ラムが「Yes」の意味で「だっちゃ日本語」を単独で用いる場合がありますが、これは仙台弁では稀な用法です。
なお、仙台弁と同様に「~だっちゃ日本語」「~っちゃ日本語」が用いられる方言には因州弁(鳥取県)と佐渡弁(新潟県)がありますが、高橋は「ラム語」が自らの出身地である新潟の由来ではないと述べています。また、助詞(格助詞・終助詞・間投助詞)として文節末や文末に「~ちゃ」を付ける方言に、富山弁、山口弁、北九州弁および九州東部の豊日方言(宮崎弁など)がありますが、促音化が見られず、「だ」も入らないことにより、「ラム語」の語尾とは異なります。
3. 名前について
ラムという名前の由来は、日本にビキニの流行をもたらしたとされるグラビアアイドルのアグネス・ラムです。スペルを「Lum」とした経緯は、当時高橋のアシスタントをしていた山本貴嗣が、Tシャツのロゴを製作する際に、日本人が発音するならこのようなスペルになるだろうと想定して案出したものですが、偶然にもアグネス・ラム(Agnes Lum)のスペルとも一致していました。イタリアやフランスなど、海外で『うる星やつら』が放映される際には、タイトルが「LAMU」(伊語ではラムゥ、仏語ではラミュ)とされることがあります。
4. 作中での経緯
ラムは、鬼型宇宙人の娘として、地球に大きな影響を与え、その後の人生を大きく変えることになります。
4.1. 生い立ちと幼少期

ラムは、鬼族の母星である「鬼星(おにぼし)」で育ちました。彼女は幼い頃から早熟な少女でした。小学校時代には、鬼族のライバルである幸運の神々の一員である弁天、氷の国の王女であるおユキ、そしてランと共に学校に通っていました。この4人は、多大なトラブルを引き起こすことで悪名高く、特にラムと弁天は問題児として知られていました。ランはしばしば彼らの悪戯に巻き込まれ、全ての責任を負わされることが多く、ラムが無傷で逃れる一方で、ランは恨みを募らせるようになりました。このため、ランはラムへの復讐を試みることになります。
中学校時代には、ラム、弁天、おユキの評判はさらに広まり、彼女たちは「スケバン」のギャングとして名を馳せました。その後、ラムはハンサムな鬼族の青年、レイと婚約しますが、彼の鈍重で食いしん坊な性格が原因で婚約を破棄しました。しかし、レイはその後もラムを深く愛し続けました。
ラムは鬼族の王族の娘であり、飛行能力と強力な電撃を放つ能力を持っています。鬼族は角を持ち、しばしば虎縞模様の衣装を身につけているという点で、日本の伝統的な鬼のイメージに酷似しています。鬼族の各個体は、電撃、火炎放射、変身能力など、それぞれ独自の特殊能力を持っています。また、彼らは飛行することができ、その技術は人間をはるかに凌駕しており、彼らの宇宙船は地球人にはUFOとして認識されています。
4.2. 諸星あたるとの出会い
ラムが17歳の時、鬼族は地球侵略を試みました。地球の運命を賭けた鬼ごっこが行われることになり、鬼族のコンピュータによってランダムに選ばれた地球側の代表者が、友引高校の高校生である諸星あたるでした。
あたるは当初、鬼ごっこで勝てば当時のガールフレンドであった三宅しのぶと結婚できると約束されていました。この約束があたるを奮起させ、彼は執拗にラムを追いかけました。ラムは空を飛ぶため、あたるは彼女の角に触れるのに苦労しましたが、7日間の制限時間の最終日、あたるはついにラムを捕まえ、喜びのあまり「これで結婚できる!」と叫びました。しかし、ラムはこの言葉を自分への求婚と誤解し、喜んでそれを受け入れました。鬼族の星では婚約は神聖なものであり、ラムはあたるを生涯の夫として強く心に決めることになります。この誤解が、あたるが「ダーリン」と呼ぶラムの、諸星家への居候と彼の生活への強制的な介入のきっかけとなりました。これ以後、ラムはあたるの「愛しい妻」として彼の人生に押し入り、あたるの浮気心を妨害し、彼を困惑させ続けました。ラムとあたるの関係は、「一般的な日本の夫婦関係をユーモラスに誇張したパロディ」と評されています。
4.3. 地球での生活
地球に定住したラムは、諸星家に滞在し、平穏な生活を送ることになります。当初は、地球の生活に戸惑うこともありましたが、自身の高度な技術によって地球の文化に順応していきました。
漫画の第6巻では、ラムはあたるとしのぶが通う友引高校に転校し、学校生活をあたると共に過ごすようになります。学校では、その魅力的な容姿から男子生徒たちの間で非常に人気を博しました。裕福な同級生の面堂終太郎も彼女に恋心を抱き、頻繁にロマンチックなアプローチを試みますが、ラムはあたるへの一途な愛情ゆえに彼のアプローチを決して受け入れません。
また、地球での生活は、幼馴染のランが地球に潜入してきて、幼い頃の恨みを晴らすために復讐を試みることで、さらに賑やかになります。第7巻では、ラムの幼い従兄弟であるテンが鬼星から預けられ、諸星家に滞在するようになり、諸星家の生活は一層騒がしくなりました。テンはラムの保護者であるあたるにしばしば悪戯を仕掛け、二人を巻き込む新たな騒動が日常となります。
ラムは、あたるとの時間を増やすため友引高校に編入しましたが、最初にあたるはその事実に驚き、気絶しました。彼女はあたるとの部屋を自身の家として考えており、あたるとの部屋で寝る際は、押し入れの中で一人か、テンと一緒に寝ています。一度だけあたると同じ布団で寝たこともありますが、高橋留美子は、高校生が一緒に寝るべきではないという信念から、このような設定にしたと語っています。ただし、アニメ第172話では、テンを中心に3人が川の字になって寝る、まるで家族のような描写も見られます。
5. 他の登場人物との関係
ラムは、作品の物語を彩る多様な登場人物たちと、様々な関係性を築いてきました。
5.1. 諸星あたる
ラムはあたるとの最初の出会いでの誤解から、彼に心底惚れ込み、「ダーリン」と呼んで一途な愛情を注いでいます。これは、あたるが他の女の子に興味を示したり、ガールハントをしたりすると、嫉妬心から容赦なく電撃制裁を加えるという形で表れます。作品初期には、あたるとしのぶの関係を「浮気」と見なし、その仲を邪魔しようとしましたが、おユキや弁天の登場以降は、あたるとの(ラムから見た)浮気を阻止することに重点が移り、面堂登場以降はあたるを妬かせようとする行動も見受けられます。アニメでは、ラムの星では婚約が神聖なものであるという設定(この設定は原作中にはありません)があり、これが彼女の一途な決意に影響を与えています。

当初、ラムはあたると常にまとわりつき、学校の授業中までもあたると引っ付いていましたが、後に正式な手続きを踏んで友引高校に生徒として編入し、あたると学園生活や寝食を共にしています。普段はあたるとの部屋の押し入れで寝ていますが、一度だけ彼と一つの布団で一緒に寝たことがあります。その際、あたるはラムを抱く気でいましたが、ラムにはその気がありませんでした。高橋留美子は、あたるとの部屋には一緒に寝るのに十分な広さがあるが、「二人は高校生なのでダメ!」という意図があったと述べています。
しかし、運命製造管理局に当初存在した未来の扉の中には、あたるとハーレムを築いた結果、ラムがハーレム維持のために働き続け、最終的に耐えきれなくなり消息を絶つという不幸な未来が存在しました。これらの未来は後に全て一度破壊(リセット)されています。また、あたるとの鬼ごっこに負けて地球が鬼星の占領下に置かれてしまったという別次元も存在し、この次元ではラムは諸星家に住んでおらず、あたるから敵意や憎悪を向けられていました。この未来のラムは、現在のようなビキニスタイルではなく、母と同じような虎縞柄のチャイナドレスを着ていました。
「ダーリン大凶!恐怖の四次元おみくじ」では、あたるとの関係が「泥沼化」「クサレ縁」「これ以上あたると付き合えば必ず不幸になる」と散々言われましたが、ボールに映った人と一緒になると必ず不幸になると言われる「トラブルキャッチボール」に、2人以上映ることもあるにもかかわらずレイしか映らなかったことから、必ずしもあたるが最悪のパートナーというわけではないとされています。
あたるとの女癖の悪さやアホさ加減は簡単に直らないとラムも諦めの境地に達していますが、そんな欠点も含めて彼を本気で好いています。また、ラム自身が絶体絶命のピンチの際には必ず助けに来てくれて解決してくれること、また本気で怒った時にはきちんと理解してくれるものと、あたるを深く信頼しています。
5.2. 三宅しのぶ
ラムが本格的に地球に住み着いた第3話以降、ラムは以前からあたるとしのぶの関係を「浮気」と決めつけ、あたるを巡る恋敵として度々衝突しました。ラムは、しのぶが死んだと勘違いして喜んですらいたこともありました。しかし、あたるが第三者に浮気した際には協力関係になることもありました。原作第18話の「さよならを言う気もない」では、あたるが分裂した際に、優等生のあたるをしのぶが、いつものあたるをラムが引き取ることで合意し和解しましたが、この作品が基本的に一話完結型であるためか、その後の回ではこの合意はなかったことになっています。
しかし、当のしのぶはあたるに当初から愛想が尽きていた上に面堂に惹かれたため、ラムとしのぶの間の確執は落ち着いていきました。面堂目当てで面堂邸に招待されたラムにくっついていくということもありましたが、基本的にはあたると面堂がラムと関わるか、舞台が教室である場合以外で彼女たちが関わることはありません。
5.3. 面堂終太郎
面堂は初登場した時点からラムに好意を抱いており、ラムが面堂邸に招待されることも多くありました。しかし、ラム自身はあたる一筋であるため、面堂の想いをあまり気にせず、彼をただの友達、もしくはそれ以下の関係と見なしています。当初はあたるを妬かせるために面堂に抱きついたりして利用することもありましたが、「春のうららの落第教室」の回では、スタミナ強化薬で性欲が強化されて理性が飛んだ面堂に羽交い絞めにされて襲われ、接吻された際には電撃を食らわせており、ラムが面堂を恋愛対象にしていないことが窺えます。
しかし、面堂財閥の全面協力のおかげで世界が救われた経験もあるため、ラム自身も面堂の努力を認める描写も見られます。また、運命製造管理局に当初存在した未来の扉の中には、レイと結婚した未来以外に、面堂と結婚している未来が複数存在していましたが、これらの未来は後に全て一度破壊(リセット)されています。
面堂は他の登場人物からは「面堂」や「面堂さん」と姓で呼ばれることが多いですが、ラムは姓ではなく「終太郎」と名前で呼んでいます。
5.4. レイ
レイはラムの当初の婚約者でしたが、「愛より食」という彼の性格が原因で婚約が破談となりました。レイは初期には何度かラムに復縁を求めていました。「テンからの贈り物」の回で、テンが持ってきた、結婚すると不幸になる相手を写す「とらぶるきゃっちぼーる」にレイが写ったため、ラムがレイと結婚するとラムが不幸になるとされています。また、運命製造管理局にあった未来の扉にはレイとラムが結婚していた未来がありましたが、その未来ではランに恨まれ、ランから生涯に渡ってラムに復讐することを宣言されており、かなり不幸な未来になっていました。後にその未来は破壊(リセット)されています。なお、レイと婚約者として交際していた頃のラムは、現在のような虎縞ビキニではなく、肩紐のないワンピース型の水着のような服を着ていました。
5.5. テン
テンはラムのいとこで、ラムを追って鬼星から地球へやってきて諸星家に居着きました。ラムはテンの地球での保護者であり、テンに対しては基本的には甘い態度をとりますが、あたるとの悪戯が度を過ぎたり、テンが原因となってトラブルを起こしてしまった際にはしっかりと叱っています。寝るときはあたるとの部屋の押し入れで一緒に寝ています。
6. 他メディアでの登場
ラムのキャラクターは、原作漫画やアニメシリーズ以外にも様々なメディアで登場しています。
漫画シリーズ『名探偵コナン』では、江戸川コナンが灰原哀に「ラム」という黒の組織のメンバーについて尋ねた際、灰原の最初の反応がラム(『うる星やつら』のラム)を思い浮かべるという形でカメオ出演しています。これは、両方の名前の日本語表記に同じ仮名「ら」が使われているためです。同様に、黒の組織のメンバーである脇田兼則のコードネーム「ラム」は、作者の青山剛昌によるラムにちなんだインジョークとして用いられています。また、「ラム」の容疑者の一人である若狭留美は、『名探偵コナン』のアニメ版でラムの担当声優と同じ声優が演じています。
アニメ『めぞん一刻』の第8話では、ラムが本編の姿と幼少期の姿でモブキャラクターとして出演しています。
7. 評価と影響
ラムのキャラクターは、その人気と文化的な影響力により、大衆や批評家から高く評価されています。
7.1. 人気と文化的な影響
ラムは日本で非常に有名で人気のあるキャラクターであり、「オタクの最初の夢の少女」と評されています。作品の人気キャラクターであるラムは主人公と思われがちですが、作者の高橋留美子は『少年サンデーグラフィック』での質問に対し「私は諸星あたるが主役だと思っています」と発言しつつも、「女性の方が華があるので、表紙やキャラクター商品には女性を前に出している」と回答しています。これは、『ハヤテのごとく!』『絶対可憐チルドレン』『To LOVEる』といった2000年代の作品に見られる「実質的な主人公であるヒロイン」の部類であるとも言えます。
ラムは当初ゲストキャラでしかなく、第2話「やさしい悪魔」と、第15話「いまだ浮上せず」には出ていません(アニメ第1作の「やさしい悪魔」の話と「いまだ浮上せず」の話にはラムの出番があるものの、「大金庫! 決死のサバイバル!!」ではあたると面堂の2人だけが登場しラムは登場しませんでした。ラムが未登場の話でもサブタイトルコールと予告を担当しているため、エンディングにはクレジットされています。全話通して唯一ノンクレジットになったことがないのはラムです)。しかし、第3話「哀しき雨音」の内容に行き詰まり、苦肉の策としてラムを再登場させたのをきっかけに、登場回数が激増し、作品を象徴するキャラクターになりました。原作ではあたるとラムの両者共に「自分が主役だ」と思っているようで、あたるが主人公を降りると誤解された際に、「元からうちが主人公なんだから」と発言しています。アニメ第1作では、2010年のOVA『うる星やつら ザ・障害物水泳大会』を除いてトップクレジットでしたが、アニメ第2作では未登場のエピソードを含みあたる役の神谷浩史に次いで2番目となっています。
1982年4月4日には、ラムと『うる星やつら』の他のキャラクターが、関西電力の公共サービス広告に登場し、凧や鯉のぼりを電線から離して使用するよう注意を促しました。これらのコマーシャルの主要なナレーションは、ラムの声を担当した平野文が務めました。
コミックマーケットの主催者である市川孝一は、ラムを「萌え」の源泉であり、また最初の「ツンデレ」(厳しさと愛情を交互に見せるキャラクター類型)であると評しています。アニメスタイルのフィギュア彫刻家であるBOMEは、ラムが少年漫画誌に登場した最初の女性主人公であると感じており、彼女に触発されて「鬼娘(おにむすめ)」のフィギュアシリーズを制作しました。
2006年より刊行されている再版本のコメントで高橋は「ラムは私の恩人です」と述べる一方で、「ラムは私が描いたキャラでもっとも理解できないキャラでもあるんです。私から一番遠い存在かもしれないですね」と話しています。また、高橋曰く、自分はひねくれていたり変わっていたりするキャラの方に感情移入がしやすく、ラムのようにまっすぐな性格のキャラは自分の中にはないものと語っています。しかし同時に、「漫画のキャラクターには自分と重ならない人物もいることを教えてくれたのもラム」とも述べています。
アニメ版で監督を務めた押井守は「ラムという娘は一年半(監督を)やったけど、結局よくわからない」と話しており、その対談で宮崎駿は「ラムは女のウラミがこもったキャラ、女の復讐」と話しています(1983年)。
1983年の第6回アニメグランプリでは、『超時空要塞マクロス』の早瀬未沙に次いで第2位にランクインしました。アメリカのミュージシャン、マシュー・スウィートは、自身のミュージックビデオ「I've Been Waiting」のクリップを通じて、多くのアメリカ人にラムを紹介しました。スウィートはラムのタトゥーも入れています。
明石家さんまは理想の女性像の一人として「ラムちゃん」を挙げており、その理由は「浮気しても電撃程度で許してくれるから」と語っています。声を担当している平野文は、「ラムちゃんは、私にとって生涯理想の女性像です」と述べています。
『発表!全るーみっくアニメ大投票 高橋留美子だっちゃ』で行われたキャラクター人気投票では、『犬夜叉』の犬夜叉に次ぐ第2位にランクインしました。
7.2. 商品展開とコラボレーション
ラムのキャラクター人気と知名度の高さから、放送当時から様々な商品展開が行われています。かつてはバンダイの1/12プラモデルやツクダホビーのジャンボフィギュア、現在ではマックスファクトリーのfigmaなどのフィギュアとして幾度となく商品化されています。
2003年8月12日から9月15日の期間には、デイリースポーツに高橋留美子描き下ろしによる阪神タイガースを応援するラムのイラストが掲載されました。そのイラストを元にフィギュアも制作され、阪神の公式グッズとして発売されています。
バンダイの化粧品ブランド「CreerBeaute(クレアボーテ)」では、漫画やアニメに登場するキャラクターのイメージに沿ったコラボ商品を展開しており、ラムも選出されています。「LOVE DARLING COSME」をラムのブランド名に冠し、アイライナーやマスカラを発売しています。また、化粧品ブランド「AC by Angelcolor(エーシー バイ エンジェルカラー)」では、『恋するラムちゃんパウダー』の名称で2色のフェイスパウダーを発売しました。
2014年に放送された、サントリーフーズの「リゲイン エナジードリンク」のCMでは、モデルのすみれがラムに扮しています。このCMでは、ラムの電撃や飛行する様子も映像技術によって再現され、電撃はサラリーマンの疲労を取る目的で使用されました。
2015年夏には、東武動物公園に隣接する屋外施設「東武スーパープール」に新設されたウォータースライダー"Tiger Splash"のイメージキャラクターとしてラムが採用されました。チューブがホワイトタイガー柄であることから、虎柄のビキニを着用しているラムが選ばれ、公式HPやポスターにホワイトタイガー柄のビキニを着用したラムが描かれました。
2015年冬には、「ラムちゃん等身大フィギュア」のSPECIAL SITEが開設され、高橋留美子監修のもと、1/1スケールのフィギュア制作が発表されました。限定数50体(シリアルナンバー入り)で、価格は100.00 万 JPYでした。2016年1月より販売受付が開始されました。
2017年7月に発売された、アイドルグループNGT48のDVD&ブルーレイ「NGT48 1st AnnivErsary」のジャケットでは、NGT48の衣装を着たラムが描かれています。このコラボは、NGT48が拠点とする新潟県が高橋留美子の出身地であることから実現しました。
7.3. 担当声優と俳優
ラムのキャラクターは、複数の声優や俳優によって演じられています。
担当声優
- 平野文 - テレビアニメ版第1作、パチスロ版
- 上坂すみれ - テレビアニメ版第2作
担当俳優
- すみれ(モデル)- サントリー食品インターナショナル「リゲイン エナジードリンク」TVCM(2014年)
- 深田恭子 - 「東京ガス」TVCM(2019年)