1. 概要
朴永訓は、1985年4月1日にソウル特別市で生まれた韓国のプロ囲碁棋士である。彼は韓国棋院に所属し、崔珪昞九段の門下で、沖岩高等学校を卒業している。19歳という史上最年少で九段に昇段し、入段からわずか4年7ヶ月での九段昇段は最速記録である。2004年の富士通杯優勝により、兵役を免除された。国際棋戦で6回、国内棋戦で16回(合計22回)の優勝を誇り、特に棋聖戦では4連覇を達成した。その卓越したヨセの技術から「ヨセの名手」と称され、李昌鎬に比肩する「小神算」あるいは「第2の神算」とも呼ばれている。
2. 生涯
朴永訓の生涯は、幼少期からの囲碁における非凡な才能と、プロ棋士としての輝かしいキャリアによって特徴づけられる。
2.1. 幼少期とアマチュア時代
朴永訓は1985年4月1日にソウル特別市で生まれた。幼少期から囲碁に才能を示し、1996年には11歳で全国アマチュア囲碁大会に優勝した。同年には世界青少年囲碁選手権大会の少年組でも優勝を果たしている。13歳になる頃にはアマチュア棋戦で4冠王を達成し、その実力から「アマ碁界の李昌鎬」と称されるようになった。1997年3月には、当時11歳で全国アマチュア十強戦に優勝し、これはアマチュア大会における最年少優勝記録となった。同年8月末には、KBS、NHK、CCTVが共同主催した「アジア3カ国子供囲碁の祭典」に韓国代表として参加した。また、同年には学草杯で優勝し、1998年には三星火災杯アマチュア囲碁オープンで優勝、さらに学草杯2連覇を達成した。1998年12月にはアマチュア国手戦で準優勝し、1999年10月には初代国務総理杯で優勝を飾った。
2.2. プロ入りと初期キャリア
1999年、朴永訓は韓国棋院に初段として入段し、プロ棋士としてのキャリアをスタートさせた。彼は崔珪昞九段の門下で研鑽を積んだ。プロ入り直後の2000年には、倍達王棋戦の挑戦者決定戦三番勝負に進出するも、李世乭に1勝2敗で惜敗した。2001年には二段で天元戦に優勝し、これは徐奉洙と並ぶ最低段でのタイトル獲得記録となった。2003年には三星火災杯世界オープン戦で準優勝を飾り、これにより五段に昇段した。そして2004年、彼は弱冠19歳にして富士通杯で優勝し、これにより九段に昇段した。19歳での九段昇段は当時の最年少記録であり、入段からわずか4年7ヶ月での九段昇段は最速記録として歴史に名を刻んだ。この富士通杯優勝の功績は、彼に兵役の免除をもたらすという重要な転換点となった。2005年には第1回中環杯世界囲碁選手権戦で優勝。また、2005年から2008年にかけては棋聖戦で4連覇を達成し、その実力を国内外に知らしめた。
2.3. 家族関係
朴永訓の父親は朴光鎬(박광호パク・クァンホ韓国語、1953年2月1日生)である。朴光鎬は元KBS韓国放送公社のアナウンサー(1978年12月 - 1991年2月)を務めた後、SBSソウル放送のラジオPDおよびテレビ制作プロデューサー(1991年3月 - 2008年12月)として活躍した。晩年にはSBSコンテンツme代表取締役社長などを歴任し、2012年10月に定年退職している。
3. 主な活動と功績
朴永訓は、そのキャリアを通じて数多くの国内および国際棋戦で輝かしい成績を収めてきた。
3.1. 国内棋戦の成績
朴永訓は韓国国内の主要な囲碁棋戦において、以下のタイトルを獲得している。
タイトル | 優勝回数 | 準優勝回数 |
---|---|---|
天元戦 | 2回(2001年、2012年) | |
物価情報杯プロ棋戦 | 1回(2005年) | |
BCカード杯新人王戦 | 1回(2005年) | |
嶺南日報杯 | 1回(2005年) | |
棋聖戦 | 4回(2005年、2006年、2007年、2008年) | |
GSカルテックス杯プロ棋戦 | 2回(2007年、2008年) | 3回(2004年、2009年、2011年) |
マキシムコーヒー杯入神連勝最強戦 | 2回(2008年、2011年) | 2回(2009年、2018年) |
名人戦 | 3回(2010年、2011年、2014年) | |
合計 | 16回 | 5回 |
上記のタイトル獲得に加え、KBS囲碁王戦では2000年、2002年、2003年、2005年、2006年、2008年、2009年、2011年に本戦出場を果たしている。また、圓益杯十段戦では2006年と2013年に準優勝している。
3.2. 国際棋戦の成績
朴永訓は国際棋戦においてもその実力を遺憾なく発揮し、世界タイトルを複数獲得している。
大会 | 優勝回数 | 準優勝回数 |
---|---|---|
富士通杯 | 2回(2004年、2007年) | |
中環杯 | 1回(2004年) | |
中韓天元対抗戦 | 1回(2002年) | |
世界囲棋名人争覇戦 | 1回(2011年) | 1回(2012年) |
徳州杯世界囲碁大師戦 | 1回(2013年) | |
合計 | 6回 | 1回 |
その他の国際棋戦における主な成績は以下の通りである。
- 三星火災杯世界オープン戦:準優勝 3回(2003年、2007年、2008年)
- LG杯世界棋王戦:準優勝 1回(2016年)、ベスト4 3回(2008年、2010年、2014年)
- 春蘭杯世界囲碁選手権戦:準優勝 2回(2017年、2019年)、ベスト8 1回(2020年)
- Mlily夢百合杯世界囲碁オープン戦:準優勝 1回(2018年)、ベスト4 1回(2015年)
- 富士通杯:3位 1回(2009年)
- トヨタ&デンソー杯囲碁世界王座戦:ベスト4 2回(2006年、2008年)
- 2008年ワールドマインドスポーツゲームズ:男子個人戦ベスト8
- 中韓新人王対抗戦:2005年 1勝2敗で古力に敗れる
- 中韓天元対抗戦:2013年 1勝2敗で陳耀燁に敗れる
- 世界囲棋名人争覇戦:2015年 0勝2敗(井山裕太、陳耀燁に敗れる)
- CSK杯囲碁アジア対抗戦:
- 農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦:
- 日月星杯中韓囲棋対抗戦:2005年 1勝3敗(胡耀宇に勝利、王檄、周鶴洋、王磊に敗れる)
- 招商地産杯中韓囲棋団体対抗戦:2011年 0勝2敗(孔傑、劉星に敗れる)
- スポーツアコードワールドマインドゲームズ:2014年 男子団体戦準優勝(4勝1敗)
- 金竜城杯世界囲碁団体選手権:2015年 3位(韓国ワイルドカードチームとして)
- 英昌杯:2008年ベスト8、2015年16強
- BCカード杯:2009年、2010年、2012年ベスト8
- 百霊杯:2012年64強、2016年32強
- 夢百合杯:2013年、2017年ベスト8
- 新奥杯:2016年ベスト32
- 天府杯世界プロ囲碁選手権:2018年ベスト16
- TV囲碁アジア選手権:本戦出場多数
- 農心辛ラーメン杯世界囲碁最強戦:2003年、2006-07年、2008年、2010年に出場
3.3. 棋風と評価
朴永訓は、その卓越したヨセの技術から「ヨセの名手」として高く評価されている。特に、終盤の正確な形勢判断と緻密な計算力は、李昌鎬九段になぞらえられ、「小神算」あるいは「第2の神算」とも呼ばれる。これは、彼の囲碁における深い洞察力と精密な打ち回しを象徴する評価である。また、彼は崔哲瀚、元晟溱とともに「子牛三銃士」の一員とされ、国際棋戦で最も早く頭角を現した棋士の一人として知られている。
3.4. 韓国囲碁リーグとランキング
朴永訓は韓国囲碁リーグにおいて顕著な実績を残している。2005年には新星建設チームの主将として、レギュラーリーグで7連勝、プレーオフ決勝で2連勝を記録し、チームの優勝に大きく貢献した。このシーズン、彼はポストシーズンを含め9勝無敗という韓国囲碁リーグ史上唯一のシーズン勝率100%を達成した。さらに、2005年の中韓チャンピオンズリーグでは、中国上海チームとの対戦で2連勝を飾り、合計11連勝という偉業を成し遂げた。
韓国棋士ランキングでは、2007年に3位に位置した。彼はまた、中国の囲碁リーグにも積極的に参加しており、2012年からは中国乙級リーグに参戦し、2013年には甲級リーグで9勝7敗の成績を収めている。
彼の韓国国内における総タイトル獲得数は8位にランクされている。
韓国囲碁リーグにおける朴永訓の参加実績は以下の通りである。
年 | 所属チーム | 成績 |
---|---|---|
2004年 | 第一火災 | 1勝6敗 |
2005年 | 新星建設 | 7勝0敗 |
2006年 | 嶺南日報 | 6勝7敗 |
2007年 | 全南ノーブルランド | 5勝8敗 |
2008年 | 新星建設 | 10勝3敗 |
2009年 | 嶺南日報 | 8勝4敗 |
2010年 | ポスコ | 9勝7敗 |
2011年 | Tブロード | 7勝7敗 |
2012年 | Kixx | 8勝9敗 |
2013年 | ネットマーブル | 9勝4敗 |
2014年 | SKエネルギー | 8勝5敗 |
2015年 | SKエネルギー | 成績不明 |
2016年 | SKエネルギー | 10勝4敗 |
2017年 | 韓国物価情報 | 9勝6敗 |
2018年 | BGF | 7勝8敗 |
中国囲碁リーグ戦における朴永訓の参加実績は以下の通りである。
年 | 所属リーグ | 所属チーム | 成績 |
---|---|---|---|
2012年 | 乙級 | 四川嬌子 | 4勝3敗 |
2013年 | 甲級 | 広州広日 | 9勝7敗 |
2014年 | 乙級 | 広州広日 | 5勝2敗 |
2016年 | 乙級 | 広東東湖棋院 | 成績不明 |
2017年 | 甲級 | 広東東湖棋院 | 3勝8敗 |
2018年 | 乙級 | 広東東湖棋院 | 6勝2敗 |
4. 個人的な側面
朴永訓は、プロの囲碁棋士としての活動以外にも、いくつかの個人的な側面を持っている。
4.1. 趣味
彼の趣味としては、テニスやテトリスを挙げることができる。