1. Overview
ジェイク・リーは、在日韓国人としてのアイデンティティを持つ日本のプロレスラーであり、元総合格闘家である。2011年に全日本プロレスでデビュー後、一時引退して総合格闘技に転身するも、2015年にプロレス界に復帰。全日本プロレスでは「NEXTREAM」「Sweeper」「Jin」「TOTAL ECLIPSE」といった主要ユニットで活動し、三冠ヘビー級王座を2度、世界タッグ王座、アジアタッグ王座をそれぞれ獲得し、チャンピオン・カーニバルと王道トーナメントでも優勝を果たすなど、団体のトップ選手として活躍した。
2023年にはプロレスリング・ノアに電撃参戦し、ユニット「Good Looking Guys(GLG)」を結成。GHCヘビー級王座を戴冠し、防衛戦を重ねた。2024年からは新日本プロレスに活動の場を移し、「Bullet Club War Dogs」の一員として新たなキャリアをスタートさせた。彼のキャリアは、恵まれた体格と高い身体能力を活かした力強いファイトスタイル、そして在日韓国人という出自からくる葛藤と成長の物語によって特徴づけられる。特に、在日韓国人として三冠ヘビー級王座とGHCヘビー級王座の両方を獲得した唯一の選手である点は、彼の功績の中でも特筆すべき点である。
2. Early Life and Background
ジェイク・リーは、幼少期から「強くなりたい」という強い思いを抱き、スポーツに打ち込んできた。
2.1. Birth and Korean Identity
1989年1月19日、北海道北見市で李 在炅として生まれた。幼少期は勉強もスポーツも苦手だったと語っている。彼は在日韓国人であり、韓国籍を持つが、韓国に入国した経験はない。2020年頃には帰化申請を行っていることを明かしている。
2.2. Early Athletic Career
北海道朝鮮初中高級学校在学中からウエイトリフティングに熱中し、その才能を開花させた。平成国際大学に進学後も競技を続け、2009年にはアジア競技大会ウエイトリフティング競技に朝鮮代表として出場し、+105 kg級で4位という成績を収めた。2010年には、第56回全日本学生ウエイトリフティング個人選手権大会の+105 kg級で4位、全日本大学対抗ウエイトリフティング選手権大会の+105 kg級で5位に入賞するなど、学生トップレベルの成績を残した。
大学3年時には、武術家の倉本成春と力比べをする機会があり、全く歯が立たなかったという経験が、彼に大きな影響を与えたと語っている。
3. Professional Wrestling Career
ジェイク・リーのプロレスラーとしてのキャリアは、全日本プロレスでのデビューと再デビュー、プロレスリング・ノアでの活躍、そして新日本プロレスへの移籍と、所属団体や時期によって大きく変遷してきた。
3.1. All Japan Pro Wrestling (AJPW)
ジェイク・リーは、全日本プロレスでデビューし、一時引退期間を挟みながらも、団体のエースとして数々のタイトルを獲得し、主要ユニットの中心選手として活躍した。
3.1.1. Debut and Early Career (2011)
大学4年時の2010年、恵まれた体格とウエイトリフティングの実績が評価され、全日本プロレスからスカウトを受けた。2011年1月に入門し、わずか7か月の練習生期間を経て、同年8月17日に地元である北海道登別市総合体育館で太陽ケアを相手にデビュー戦を行った。デビュー戦は敗北に終わったが、翌8月18日には浜亮太にも敗れた。しかし、8月20日の札幌テイセンホール大会では中之上靖文を逆エビ固めで破り、シングルマッチ初勝利を飾った。8月24日には曙太郎、船木誠勝と組んでジョー・ドーリング、MAZADA、レネ・デュプリー組を破るなど、初期から勝利を重ねた。当時、体重を最高120 kgまで増やし、ヘビー級戦士としての将来を期待された。
2011年8月27日には、東日本大震災を受けて開催されたメジャー3団体合同興行「ALL TOGETHER 東日本大震災復興支援チャリティープロレス」の日本武道館大会にも、全日本プロレスの一員として出場し、ザ・デストロイヤー杯争奪スペシャルバトルロイヤルにエントリーされた。
しかし、同年10月6日、全日本プロレスよりプロレス引退が発表された。後年、彼は負傷によって心が折れ、うつ状態のような状況だったと語っており、プロレスを離れることは「心が張り裂ける思いだった」と述べている。プロレス引退後は体重を落とし、総合格闘技への転向を決意した。
3.1.2. Return and Unit Activities (2015-2022)
プロレス引退後、山本喧一が主宰する「パワー・オブ・ドリーム」に所属し、総合格闘家として活動していたが、2015年にプロレス界への復帰を決意し、全日本プロレスに再入団した。

3.1.3. Major AJPW Achievements
ジェイク・リーは全日本プロレス在籍中に以下の主要タイトルとトーナメントを獲得した。
- 全日本プロレス
- 三冠ヘビー級王座(第64代、第66代)
- 世界タッグ王座(1回) - パートナーは野村直矢
- アジアタッグ王座(2回) - パートナーは岩本煌史
- 第106代は王座決定ワンデートーナメント優勝による。
- チャンピオン・カーニバル優勝(2021年)
- 王道トーナメント優勝(2019年)
- 根室食堂杯争奪6人タッグトーナメント優勝(2017年) - パートナーは宮原健斗、青柳優馬
- 新春バトルロイヤル優勝(2019年)
3.2. Pro Wrestling Noah (2023-2024)
全日本プロレス退団後、ジェイク・リーはプロレスリング・ノアに電撃参戦し、その存在感を示した。
3.2.1. Debut and Formation of Good Looking Guys (GLG)
2023年1月1日、プロレスリング・ノアの日本武道館大会「The New Year」の第6試合終了後、サプライズ登場を果たした。試合に勝利したジャック・モリスに握手を要求し、モリスもこれに応じた。バックヤードでは稲村愛輝と一触即発となる場面もあった。
その後、ジャック・モリス、アンソニー・グリーンと共に新ユニット「Good Looking Guys(GLG)」を結成した。2023年1月22日の横浜アリーナ大会「The Great Muta Final "Bye-Bye"」では、GLGとして初の公式戦となる6人タッグマッチに出場し、マサ北宮、稲葉大樹、稲村愛輝組を破った。
3.2.2. GHC Heavyweight Championship Reign and Loss
2023年2月12日、試合後のインタビューで清宮海斗の持つGHCヘビー級王座への挑戦を表明した。これを受けて3月19日の横浜武道館大会でタイトルマッチが行われ、ジェイク・リーは清宮海斗を破りGHCヘビー級王座を奪取した。これにより、彼は韓国系として初めてこのタイトルを獲得した選手となった。
4月16日の仙台大会「Green Journey in Sendai」では、中嶋勝彦を相手に初防衛に成功した。5月4日の「Majestic」では丸藤正道を、6月17日の名古屋大会「Great Journey in Nagoya」では杉浦貴をそれぞれ下し、3度目の防衛を果たした。試合後、ジェイクはGHCヘビー級王者として2023年N-1 Victoryで全勝優勝を果たすと宣言した。
しかし、8月に開催されたN-1 Victoryでは、4勝2引き分け1敗の成績で、最終日に拳王に敗れたことが響き、決勝進出を逃した。9月24日の名古屋大会「Grand Ship In Nagoya」では、2023年N-1 Victory優勝者である潮崎豪を相手に4度目の防衛に成功した。試合後、ジェイクはノアでの無敗記録を止めた拳王に対し、タイトルマッチでの再戦を要求した。
10月28日の福岡大会「Demolition Stage In Fukuoka」で、ジェイク・リーは拳王に敗れ、GHCヘビー級王座を手放した。彼の王座保持期間は223日間だった。
2024年1月2日、ノアの「The New Year 2024」大会で、メインイベントで丸藤正道を破った飯伏幸太に対し、清宮海斗と共にリング上で対峙し、ノアを去るよう促したが、最終的には2024年も共にノアを盛り上げていくことで合意した。ジェイクはインタビューで、清宮を「イケメン」とは感じず、マイクアピールも不足していると述べた。1月23日にGLGが清宮のチームを破った後、ジェイクはGHCヘビー級王座が共通の目標である場合を除き、清宮との対戦にはもはや興味がないと語った。
同年6月16日、前日の「ALL TOGETHER」で内藤哲也に敗れたことを受け、7月13日にGLGの解散を宣言した。
3.3. New Japan Pro-Wrestling (NJPW) (2024-present)
プロレスリング・ノアでの活動を経て、ジェイク・リーは新日本プロレスへとその活躍の場を移した。
3.3.1. Debut and Affiliation with Bullet Club War Dogs
2024年7月13日、両国国技館大会「Destination 2024」でのGLG Finalの試合後、外道が登場し、ジェイク・リーをBullet Clubのサブグループである「War Dogs」に勧誘した。ジェイクはこれに応じ、その決定に激昂したジャック・モリスに襲撃されるも、チョークスラムで返り討ちにし、「Good Bye NOAH」とプロレスリング・ノアに別れを告げるように会場を去った。
これに先立ち、2024年4月23日には新日本プロレスに初登場しており、ドリラ・モロニーが内藤哲也を破るのをアシストした。その後、デビッド・フィンレー率いるBullet Club War Dogsは、内藤哲也のユニット「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン」との5対5のエリミネーションマッチでジェイク・リーがBullet Club War Dogsと共闘することを発表した。4月26日、ジェイク・リーとBullet Club War Dogsはロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンに敗れた。
同年7月20日から開催された『G1 CLIMAX 34』に出場し、Aブロックで8点を獲得したが、決勝トーナメント進出はならなかった。9月3日には新日本プロレスへの正式入団会見を行い、9月1日付けでの入団が発表された。
3.3.2. Injury and Hiatus
新日本プロレス入団直後の2024年9月11日、仙台大会にて試合中に右膝を負傷し、苦悶の表情で担架に乗せられ退場した。この負傷により、以降長期欠場中であり、復帰時期は未定とされている。
4. Mixed Martial Arts Career
プロレスを一時引退した後、ジェイク・リーは総合格闘家として活動した。山本喧一が主宰する「パワー・オブ・ドリーム」に所属し、2013年4月20日には札幌市・PODアリーナで行われた総合格闘技大会「PFC.1」に出場した。この期間中、彼は整体師としても勤務していた。
彼の総合格闘技の戦績は以下の通りである。
勝敗 | 対戦相手 | 試合結果 | 大会名 | 開催年月日 |
---|---|---|---|---|
△ | 小坂井寛 | 5分3R終了 ドロー | PFC.1 | 2013年4月20日 |
5. Personal Life and Other Activities
ジェイク・リーは、プロレスラーとしての活動以外にも、様々な分野で自身の能力を発揮している。
5.1. Training, Education, and Personal Trainer
大学時代に教員免許を取得している。また、血液型はO型である。総合格闘技のトレーニング中にヴィーガンになった。プロレスラーと並行してアクティブなパーソナルトレーナーとしても活動しており、日本のミュージシャンである大黒摩季のボディメイクも担当した経験がある。後輩の大森北斗とは、入門前に所属した山本喧一の格闘技ジム「パワー・オブ・ドリーム」の同窓の間柄である。
彼はヒールターンを機に、プロレスに集中するため、ごく一部のパーソナルトレーニングを除きトレーナー業を辞した。
5.2. Media Appearances
ジェイク・リーは、テレビ番組にも複数回出演している。
- 助けて!きわめびと「顔の下半分で決まる! "老け顔"解消トレーニング」(NHK、2018年8月4日)
- 健康カプセル!ゲンキの時間「長時間のデスクワークは要注意!首のシワ・たるみ撃退法」(CBCテレビ、2020年4月19日)
- デカ盛りハンタースペシャル【1部】(テレビ東京系列、2021年3月12日)
5.3. Personal Preferences
ジェイク・リーの好物はクリームソーダである。彼は自身のリングネームとかけて「ジェイクリームソーダ」と呼んでおり、オフィシャルグッズも販売されたことがある。
6. Championships and Accomplishments
ジェイク・リーはプロレスキャリアにおいて、数々のタイトルと賞を獲得してきた。
6.1. Major Professional Wrestling Titles
- 全日本プロレス
- 三冠ヘビー級王座(第64代、第66代)
- 世界タッグ王座(1回) - パートナーは野村直矢
- アジアタッグ王座(2回) - パートナーは岩本煌史
- チャンピオン・カーニバル優勝(2021年)
- 王道トーナメント優勝(2019年)
- 根室食堂杯争奪6人タッグトーナメント優勝(2017年) - パートナーは宮原健斗、青柳優馬
- 新春バトルロイヤル優勝(2019年)
- プロレスリング・ノア
- GHCヘビー級王座(1回)
6.2. Awards and Recognition
- プロレスリング・イラストレイテッド
- PWI 500(2022年) - シングルレスラー部門で34位
- 東京スポーツ
- 殊勲賞(2021年)
7. Wrestling Style and Signature Moves
ジェイク・リーは、恵まれた体格とウエイトリフティングで培った強靭な肉体を活かした力強いプロレススタイルが特徴である。試合では、相手の攻撃を冷静に見極め、的確なカウンターや大技で試合の流れを掴む戦術を得意とする。
目標とする選手はジャンボ鶴田で、再デビュー戦では鶴田の得意技でもあるバックドロップ、ビッグブーツを披露し、試合後に秋山準からジャンピング・ニーバット伝授を直訴した。
彼の主要な得意技は以下の通りである。
- FBS:フロントハイキックの一種。
- D4C:ブレーンバスター。
- ジャイアントキリング:ニーリフト。
8. Legacy and Influence
ジェイク・リーは、プロレス界においてその実力と独特の存在感で大きな影響を与えてきた。特に、在日韓国人という出自を持つプロレスラーとして、彼のキャリアは特別な意義を持つ。彼はゼウスに次いで2人目の韓国系三冠ヘビー級王者であり、GHCヘビー級王座を獲得した唯一の韓国系選手である。これは、日本のプロレス界における多様性の象徴であり、在日外国人コミュニティにとっても希望の存在となり得る功績である。
彼のキャリアは、一度プロレスを離れ、総合格闘技に転身した後に再びプロレスのリングに戻るという異色の経緯を辿っている。この経験は、彼に独自の視点と強靭な精神力をもたらし、リング上でのパフォーマンスに深みを与えている。また、彼が様々なユニットで中心的な役割を担い、時にはヒールターンして新たな魅力を開花させたように、常に変化と挑戦を恐れない姿勢は、多くのファンに刺激を与えている。
ジェイク・リーは、単なるタイトルコレクターに留まらず、その生き様とリングでの戦いを通じて、プロレスの持つ多様な可能性と、個人のアイデンティティがリング上でどのように表現され得るかを示してきた。彼の今後のキャリアは、日本のプロレス史にさらなる新たなページを刻むことだろう。
9. Entrance Music
- 初代:Invincible(Two Steps From Hell)
- 2代目:I'm Shipping Up To Boston(ドロップキック・マーフィーズ)
- 3代目:LeeDepart(鈴木修)
- 4代目:Same ol'(The Heavy)
- 5代目:LOST ODYSSEY -亡魂咆哮-
- 6代目:戴冠の定義(鈴木修)
- 7代目:戴冠の定義 新章(鈴木修)