1. 経歴
陳詩淵のキャリアは、幼少期の修業時代から始まり、韓国でのプロ入りを経て、台湾囲碁界の頂点に立つまでの道のりを辿っている。
1.1. 生い立ちと修業時代
陳詩淵は1985年10月28日に台湾の台北市で生まれた。幼少期から囲碁に才能を示し、1996年には世界青少年囲碁選手権大会の少年組で準優勝を飾った。12歳の時、囲碁の研鑽を積むため韓国へ囲碁留学し、権甲龍六段の門下に入った。彼は約5年間を韓国で過ごし、権甲龍道場で厳しい修業を積んだ。
1.2. プロ入りと初期の活躍
2000年、陳詩淵は修業先の韓国で韓国棋院に入段を果たし、プロ棋士となった。2002年には二段に昇段。2004年にはSKガス杯新鋭プロ十傑戦で8位に入賞するなど、韓国でも若手棋士としての頭角を現した。2005年、中華民国の兵役義務を果たすため台湾へ帰国し、活動拠点を台湾棋院に移籍した。同年、帰国後すぐに中環杯囲棋オープン戦で優勝し、その活躍により三段に昇段した。さらに同年には東鋼杯プロ囲棋戦でも優勝し、五段に昇段を遂げた。この年の中環杯世界囲碁選手権戦では依田紀基に敗れた。2006年には国手戦で優勝し、七段に昇段。2007年には東鋼杯、国手戦、CMC杯、天元戦の4タイトルを獲得し、台湾国内における地位を確立した。
2. 主な棋歴とタイトル
陳詩淵は台湾国内の主要な棋戦で数々のタイトルを獲得し、その実力を証明してきた。また、国際棋戦においても重要な対局を経験している。
2.1. 国内棋戦
陳詩淵は、2005年に台湾棋院に移籍して以来、数多くの国内タイトルを獲得し、台湾囲碁界のトップランナーとして君臨している。
棋戦名 | 獲得年数 | 獲得タイトル数 | 準優勝年数 | 準優勝数 |
---|---|---|---|---|
中環杯囲棋オープン戦 | 2005, 2008, 2011, 2012 | 4 | 2007, 2009, 2012 | 3 |
東鋼杯プロ囲棋戦 | 2005, 2007, 2009 | 3 | 2010 | 1 |
国手戦 | 2006, 2007, 2012, 2015, 2016, 2017 | 6 | 2008 | 1 |
CMC TV杯 | 2007 | 1 | 0 | |
天元戦 | 2007, 2011, 2012 | 3 | 2008, 2009, 2013 | 3 |
王座戦 | 2008, 2009, 2010, 2011, 2012 | 5 | 2006, 2007 | 2 |
棋王戦 | 2009, 2010, 2011, 2012 | 4 | 2008 | 1 |
愛心杯プロ囲棋戦 | 2009 | 1 | 0 | |
碁聖戦 | 2010, 2014, 2015 | 3 | 2008 | 1 |
海峰杯プロ囲棋戦 | 2012, 2015, 2017 | 3 | 2009 | 1 |
合計 | 33 | 13 |
その他の国内棋戦における記録:
- 十段戦 挑戦者: 2012年
2.2. 国際棋戦
陳詩淵は、数々の国際棋戦にも参加し、台湾を代表して活躍している。
- LG杯世界棋王戦:
- ベスト8: 2011年(韓雄奎、朴承華に勝利後、李昌鎬に敗れる)
- ベスト16: 2009年(王檄に勝利後、邱峻に敗れる)
- 日台精鋭プロ選手権: 優勝 2011年、準優勝 2009年
- CSK杯囲碁アジア対抗戦:
- 2006年: 0勝3敗(謝赫、高根台、結城聡に敗れる)
- ワールドマインドスポーツゲームズ: 2008年 男子団体戦4位
- スポーツアコードワールドマインドゲームズ: 2011年 男子団体戦4位、2014年 男子団体戦4位
- アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ: 2013年 男子団体戦3位、男子個人戦6位
- IMSAエリートマインドゲームズ: 2017年 男子団体戦3位
- 国手山脈杯国際囲棋戦: 2016年 団体戦3位、2017年 男女ペア戦準優勝(黒嘉嘉とペア)
- ペア碁ワールドカップ: 2016年 準優勝、2017年 3位(いずれも黒嘉嘉とペア)
- おかげ杯国際新鋭対抗戦: 2014年 3位
- 国際新鋭囲碁対抗戦:
- 千灯杯海峡両岸都市囲棋対抗戦: 2009年(聶衛平に勝利)、2010年(常昊に敗れる)、2013年(羋昱廷に敗れる)
2.3. 昇段記録
陳詩淵のプロ棋士としての昇段記録は以下の通りである。
段位 | 昇段年 |
---|---|
初段 | 2000年 |
二段 | 2002年 |
三段 | 2005年 |
七段 | 2006年 |
八段 | 2009年 |
九段 | 2011年 |
2.4. 年間勝敗記録
陳詩淵の年間勝敗記録は以下の通りである。
- 2006年: 43勝20敗
- 2007年: 44勝15敗
- 2008年: 40勝21敗
- 2009年: 55勝11敗
- 2010年: 46勝15敗
- 2011年: 21勝3敗
2.5. 中国棋戦への参加
陳詩淵は、中国の囲碁リーグ戦にも台湾棋院チームや海峰棋院チームの一員として参加している。
- 中国囲棋乙級リーグ
- 2008年: 台湾棋院チームとして参加、3勝4敗(降級)
- 2013年: 台湾中環チームとして参加、2勝5敗
- 2015年: 台湾中環チームとして参加、3勝4敗
- 中国囲棋丙級リーグ
- 2010年: 台湾棋院チームとして参加、5勝2敗
- 2012年: 台湾中環チームとして参加、6勝1敗(昇級)
- 2014年: 台湾中環チームとして参加、5勝2敗
- 2016年: 海峰棋院チームとして参加、2勝5敗
3. 私生活
2010年、陳詩淵は同じくプロ囲碁棋士である張正平二段と結婚した。
4. 評価と影響
陳詩淵は、その安定した強さと多くのタイトル獲得により、台湾囲碁界において非常に重要な地位を確立している。特に2012年には、棋王、天元、王座、国手、中環杯、海峰杯の六冠を達成し、台湾囲碁史上初の快挙を成し遂げた。また、王座戦では2008年から2012年まで5連覇を果たし、その功績により2014年には名誉王座の称号を贈られた。
彼の活躍は、台湾囲碁界のレベル向上に大きく貢献し、若手棋士の目標となっている。国際棋戦での活躍は、台湾の囲碁に対する注目度を高めることにも寄与している。周俊勲、林至涵と共に「台湾三強」と称されるなど、彼は台湾囲碁界の顔として、その発展に多大な影響を与え続けている。