1. 概要
マルティ・マロイは、アメリカ合衆国を代表する女子柔道選手である。特に2012年のロンドンオリンピック女子57kg級で銅メダルを獲得し、国際的な舞台でその名を確立した。彼女のキャリアは、若くして国際大会で成功を収めた初期から、長年にわたる主要な国際柔道連盟(IJF)主催大会での活躍、そして世界選手権でのメダル獲得に至るまで、着実な成長と実績に彩られている。
2. 人物像と経歴
マルティ・マロイの柔道キャリアは、幼少期に柔道と出会い、学業と競技生活を両立させながら発展していった。
2.1. 出生と幼少期
マルティ・マロイは1986年6月23日にワシントン州オークハーバーで生まれた。6歳の時に柔道を始めた。
2.2. 学歴
高校卒業後、サンノゼ州立大学に進学し、広告・マーケティングの学位取得を目指しながら、2012年のオリンピック出場に向けたトレーニングを両立させた。2010年に同大学を卒業している。
2.3. 柔道との出会い
柔道を始めたのは6歳の時である。幼少期には、後に総合格闘技で有名になるロンダ・ラウジー(Ronda Rouseyロンダ・ラウジー英語)と、同じ年齢で同じ階級だったため、何度も試合を経験している。これらの対戦では、たいていラウジーが勝利していたという。
3. 選手としてのキャリア
マルティ・マロイの柔道選手としての道のりは、10代での国際大会デビューから、階級変更を経て国際舞台での地位を確立するまで、着実に進んでいった。
3.1. 初期キャリア
16歳だった2002年には、初のシニア国際大会となるカナダの「ランデブー・カナダ」に出場し、金メダルを獲得した。この大会では、2000年のオリンピック出場選手や前年の全米チャンピオン、カナダやイギリスのトップ選手など、強豪を破っての優勝だった。2005年には、柔道USオープンで銀メダルを獲得し、さらにジュニアパンアメリカン選手権では唯一の米国人選手として金メダルを獲得するなど、ジュニアとシニアの両レベルで成功を収め続けた。
3.2. 主要国際大会への参加
2007年には、階級を57kg級から63kg級に上げ、世界柔道選手権大会では9位に入賞した。同年には63kg級の選手としてパンアメリカン競技大会にも出場したが、その後すぐに57kg級に戻し、同階級で自身初のシニアナショナルタイトルを獲得した。
2009年には、2度目のシニアナショナルタイトルを獲得し、世界チームトライアルで勝利して、2度目のシニア世界チームに選出された。2010年には、パンアメリカン柔道選手権大会で自身初の大きな国際メダルを獲得し、前年に獲得したシニアナショナルタイトルを防衛した。
2011年の世界柔道選手権大会57kg級では、準決勝まで進出したものの、ブラジルのラファエラ・シルバ(Rafaela Silvaラファエラ・シルバポルトガル語)に敗れた。さらに3位決定戦でもルーマニアのコリーナ・カプリオリウ(Corina Căprioriuコリーナ・カプリオリウルーマニア語/モルドバ語)に敗れ、5位にとどまった。
2012年にはグランドスラム・パリで3位となった。2014年の世界柔道選手権大会では、2回戦で2012年オリンピック金メダリストである日本の松本薫(松本薫まつもと かおり日本語)を腕挫十字固で破るという注目すべき勝利を収めたが、3回戦で再びテルマ・モンテイロに指導2で敗れ、入賞はならなかった。2015年の世界柔道選手権大会でも5位に終わっている。
2016年のリオデジャネイロオリンピックでは、初戦で台湾の連珍羚(連珍羚リエン・チェンリン中国語)に指導2で敗れ、早期敗退となった。
4. 主な実績と受賞歴
マルティ・マロイの柔道選手としての主な実績と受賞歴を以下にまとめる。
4.1. 主要大会での成績
マルティ・マロイが参加した主要な国際大会での成績を一覧で示す。
年 | 大会名 | 順位 | 階級 |
---|---|---|---|
2007 | パンアメリカン競技大会 | 5位 | 63kg級 |
2007 | 世界柔道選手権大会 | 9位 | 63kg級 |
2009 | 世界柔道選手権大会 | AC | 57kg級 |
2010 | ベルギー国際柔道大会 | 優勝 | 57kg級 |
2010 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 2位 | 57kg級 |
2010 | ワールドカップ・サンパウロ | 3位 | 57kg級 |
2010 | ワールドカップ・マルガリータ島 | 2位 | 57kg級 |
2010 | ワールドカップ・サンサルバドル | 優勝 | 57kg級 |
2010 | ワールドカップ・マイアミ | 優勝 | 57kg級 |
2010 | グランプリ・アブダビ | 5位 | 57kg級 |
2011 | ワールドカップ・オーバーヴァルト | 5位 | 57kg級 |
2011 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 2位 | 57kg級 |
2011 | グランドスラム・モスクワ | 5位 | 57kg級 |
2011 | ワールドカップ・マイアミ | 優勝 | 57kg級 |
2011 | ワールドカップ・マルガリータ島 | 3位 | 57kg級 |
2011 | ワールドカップ・サンサルバドル | 2位 | 57kg級 |
2011 | 世界柔道選手権大会 | 5位 | 57kg級 |
2011 | グランプリ・アブダビ | 5位 | 57kg級 |
2011 | グランプリ・青島 | 5位 | 57kg級 |
2012 | グランドスラム・パリ | 3位 | 57kg級 |
2012 | ロンドンオリンピック | 3位 | 57kg級 |
2013 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 2位 | 57kg級 |
2013 | グランプリ・マイアミ | 優勝 | 57kg級 |
2013 | 世界柔道選手権大会 | 2位 | 57kg級 |
2013 | グランドスラム・東京 | 2位 | 57kg級 |
2014 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 優勝 | 57kg級 |
2014 | パンナムオープン・マイアミ | 優勝 | 57kg級 |
2015 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 優勝 | 57kg級 |
2015 | グランプリ・ザグレブ | 3位 | 57kg級 |
2015 | グランプリ・ブダペスト | 3位 | 57kg級 |
2015 | パンアメリカン競技大会 | 優勝 | 57kg級 |
2015 | 世界柔道選手権大会 | 5位 | 57kg級 |
2016 | グランプリ・ハバナ | 優勝 | 57kg級 |
2016 | グランドスラム・パリ | 3位 | 57kg級 |
2016 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 優勝 | 57kg級 |
2016 | ワールドマスターズ | 7位 | 57kg級 |
2016 | グランプリ・ブダペスト | 3位 | 57kg級 |
2016 | グランドスラム・東京 | 7位 | 57kg級 |
2017 | ヨーロッパオープン・オーバーヴァルト | 3位 | 57kg級 |
2017 | パンアメリカン柔道選手権大会 | 3位 | 57kg級 |
2017 | グランプリ・カンクン | 優勝 | 57kg級 |
4.2. オリンピック
マルティ・マロイは、2012年のロンドンオリンピック女子57kg級に出場し、銅メダルを獲得した。初戦で優勝候補の一角であったポルトガルのテルマ・モンテイロ(Telma Monteiroテルマ・モンテイロポルトガル語)を破るなどして準決勝まで進んだが、準決勝でコリーナ・カプリオリウに敗れた。しかし、3位決定戦では北京オリンピック金メダリストであるイタリアのジュリア・クインタバレ(Giulia Quintavalleジュリア・クインタバレイタリア語)に大内刈で一本勝ちし、銅メダルを手にした。
4.3. 世界柔道選手権大会
世界柔道選手権大会では、複数のメダルを獲得している。
- 2011年大会では5位。
- 2013年のリオデジャネイロで開催された大会では、決勝で地元のラファエラ・シルバに試合開始早々に一本負けを喫し、銀メダルにとどまった。
- 2014年大会では、2回戦で松本薫を腕挫十字固で破ったものの、3回戦でテルマ・モンテイロに敗れ、メダルには届かなかった。
- 2015年大会では5位。
4.4. パンアメリカン競技大会・選手権大会
パンアメリカン競技大会およびパンアメリカン柔道選手権大会では、数多くのメダルを獲得している。
- パンアメリカン競技大会では、2015年のトロント大会で金メダルを獲得した。
- パンアメリカン柔道選手権大会では、2010年、2011年、2013年に銀メダルを獲得。2014年、2015年、2016年には金メダルを獲得し、2017年には銅メダルを獲得している。
4.5. 国際柔道連盟(IJF)主催主要大会
IJFが主催する主要な国際大会でも、マルティ・マロイは多くの実績を残している。
- IJFグランドスラムでは、2012年パリ、2016年パリで銅メダル、2013年東京、2014年チュメニで銀メダルを獲得している。
- IJFグランプリでは、2013年マイアミ、2016年ハバナ、2017年カンクンで金メダルを獲得。2015年ザグレブで銀メダル、2015年ブダペスト、2016年ブダペストで銅メダルを獲得している。
5. 人となり
マルティ・マロイは柔道三段の段位を持つ。幼少期に同じ階級で何度も対戦したロンダ・ラウジーとの関係は、彼女のキャリアを語る上で興味深い逸話として知られている。