1. 概要

ミラグロス・セケラ(Milagros Sequeraミラグロス・セケラスペイン語、1980年9月30日 - )は、ベネズエラ・ヤラクイ州サンフェリペ出身の元女子プロテニス選手である。右利きで、バックハンド・ストロークは両手打ち。
セケラは1999年にWTAツアーに参戦し、2007年5月にモロッコのフェズで開催された大会のシングルスで初優勝を果たした。これは、ベネズエラの女子テニス選手として史上初めてのWTAツアーシングルス・タイトル獲得という快挙であった。彼女はWTAツアーでシングルス1勝、ダブルス3勝を挙げている。自己最高ランキングはシングルス48位(2007年7月9日付)、ダブルス29位(2005年1月31日付)。生涯通算成績はシングルス314勝211敗、ダブルス207勝132敗。生涯獲得賞金は84.51 万 USDに上る。また、パンアメリカン競技大会では2003年と2007年にシングルスで金メダルを獲得している。2009年にプロテニス界から引退した。
2. 来歴
2.1. 生い立ちとプロ入り
ミラグロス・セケラは1980年9月30日にベネズエラのヤラクイ州サンフェリペで生まれた。7歳の時にテニスを始め、1999年1月1日にプロ転向した。彼女の居住地はアメリカ合衆国カリフォルニア州のサンディエゴである。身長は1.65 m、体重は57 kg。
2.2. 初期キャリア
セケラは1998年から女子テニス国別対抗戦であるフェドカップのベネズエラ代表選手として活動を開始した。プロ転向後の彼女は、4大大会の予選会で長い間苦戦し、本戦出場に手が届かない時期が続いた。4大大会の予選会は、本戦出場権を得るために3試合を勝ち抜く必要がある。
2000年のシドニーオリンピックでは、ベネズエラ代表としてマリア・ベント=カブチと組んで女子ダブルスに出場し、ベスト8に進出した。準々決勝ではベルギー代表のドミニク・モナミとエルス・カレンズ組に4-6, 7-5, 6-4の逆転で敗れた。
セケラが初めて4大大会の予選を突破し本戦に出場したのは、2002年全仏オープンであった。本戦1回戦でパティ・シュナイダー(スイス)に敗れている。2004年にはダブルスで年間3勝を挙げた。
2006年10月には世界ランキングを98位に上げ、自身初となる世界ランキングトップ100入りを果たした。2007年には2007年全豪オープンで初めて1回戦を突破し、2回戦でニコル・バイディソバと対戦した。同年5月、モロッコのフェズで開催された大会のシングルス決勝で、アレクサンドラ・ウォズニアク(カナダ)を6-1, 6-3で破り、ベネズエラの女子テニス選手として史上初のWTAツアーシングルス優勝を飾った。この優勝後、セケラは2007年全仏オープンでも初めての2回戦に進出した。さらに2007年ウィンブルドン選手権では、自己最高の4大大会3回戦進出を果たした。全仏オープンとウィンブルドンでは、いずれもセリーナ・ウィリアムズに敗れている。
セケラは2008年北京オリンピックで2度目のオリンピック出場を果たした。シングルス1回戦でアリョーナ・ボンダレンコ(ウクライナ)と対戦し、6-3, 1-0とリードしていたものの、途中棄権した。プロとしての最後の試合出場は、同年9月のジャパン・オープン・テニス選手権の予選1回戦で張凱貞(台湾)に敗れた試合であった。セケラは2009年にプロテニス界から引退した。
3. 主な成績
3.1. オリンピック
セケラは2度のオリンピックに出場している。
- 2000年シドニーオリンピック: マリア・ベント=カブチと組んだ女子ダブルスでベスト8に進出した。準々決勝でドミニク・モナミとエルス・カレンズ(ベルギー)のペアに4-6, 5-7, 4-6で敗れた。
- 2008年北京オリンピック: シングルスに出場したが、1回戦でアリョーナ・ボンダレンコ(ウクライナ)に対して6-3, 1-0とリードした時点で途中棄権した。
3.1.1. グランドスラムシングルス
セケラの4大グランドスラム大会におけるシングルスでの自己最高成績は以下の通りである。
- 全豪オープン: 2回戦(2007年)
- 全仏オープン: 2回戦(2007年、2008年)
- ウィンブルドン: 3回戦(2007年)
- 全米オープン: 2回戦(2003年)
以下に、セケラの4大大会シングルス成績を示す。
大会 | 1999 | 2000 | 2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 通算成績 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
全豪オープン | A | A | LQ | A | LQ | 1R | LQ | LQ | 2R | A | 1-2 |
全仏オープン | A | LQ | A | 1R | LQ | 1R | LQ | LQ | 2R | 2R | 2-4 |
ウィンブルドン | A | LQ | LQ | LQ | 1R | 2R | 1R | A | 3R | 1R | 3-5 |
全米オープン | LQ | LQ | LQ | LQ | 2R | 1R | LQ | 1R | A | A | 1-3 |
3.1.2. グランドスラムダブルス
セケラの4大グランドスラム大会におけるダブルスでの自己最高成績は以下の通りである。
- 全豪オープン: 4回戦(2005年)
- 全仏オープン: 3回戦(2003年、2004年)
- ウィンブルドン: 4回戦(2003年、2005年)
- 全米オープン: 3回戦(2004年、2006年)
3.2. WTAツアー
セケラはWTAツアーでシングルス1勝、ダブルス3勝を挙げている。キャリアハイのランキングはシングルス48位(2007年7月9日付)、ダブルス29位(2005年1月31日付)である。
WTAツアー決勝進出結果は以下の通り。
3.2.1. シングルス: 2回 (1勝1敗)
結果 | No. | 決勝日 | 大会 | サーフェス | 対戦相手 | スコア |
---|---|---|---|---|---|---|
準優勝 | 1. | 2003年10月 | ケベックシティ、カナダ | カーペット (室内) | マリア・シャラポワ | 2-6 途中棄権 |
優勝 | 1. | 2007年5月 | モロッコ・オープン | クレー | アレクサンドラ・ウォズニアク | 6-1, 6-3 |
3.2.2. ダブルス: 4回 (3勝1敗)
3.3. ITFサーキット
セケラはITFサーキットでシングルス11タイトル、ダブルス18タイトルを獲得している。
3.3.1. シングルス: 17回 (11勝6敗)
結果 | No. | 日付 | 大会 | サーフェス | 対戦相手 | スコア |
---|---|---|---|---|---|---|
優勝 | 1. | 1996年11月3日 | ITF タマウリパス、メキシコ | ハード | オーロラ・ギマ | 4-6, 6-3, 6-4 |
優勝 | 2. | 1997年11月9日 | ITF サントドミンゴ、ドミニカ共和国 | クレー | アリエノール・トリセリ | 6-2, 4-6, 6-0 |
準優勝 | 1. | 1999年5月17日 | ITF ジャクソン、アメリカ合衆国 | クレー | ダニエラ・ハンチュコバ | 1-6, 2-6 |
優勝 | 3. | 1999年6月27日 | ITF イーストン、アメリカ合衆国 | ハード | マリクリス・フェルナンデス | 7-5, 6-2 |
優勝 | 4. | 1999年7月4日 | ITF モントリオール、カナダ | ハード | クリスティナ・トリスカ | 7-6, 7-6 |
優勝 | 5. | 2000年4月23日 | ITF サン・ルイス・ポトシ、メキシコ | クレー | カタリナ・カスタニョ | 6-4, 3-6, 7-5 |
準優勝 | 2. | 2000年10月23日 | ITF ダラス、アメリカ合衆国 | ハード | ジェニファー・ホプキンス | 2-6, 1-6 |
優勝 | 6. | 2001年10月28日 | ITF ダラス、アメリカ合衆国 | ハード | イリーナ・セリュティナ | 5-7, 6-2, 6-0 |
準優勝 | 3. | 2001年11月4日 | ITF ヘイワード、アメリカ合衆国 | ハード | イリーナ・セリュティナ | 5-7, 4-6 |
優勝 | 7. | 2002年4月28日 | ドーサン・プロ・クラシック、アメリカ合衆国 | クレー | リーゼル・フーバー | 7-6, 4-6, 6-1 |
準優勝 | 4. | 2003年4月22日 | ドーサン・プロ・クラシック、アメリカ合衆国 | クレー | 森上亜希子 | 3-6, 4-6 |
準優勝 | 5. | 2003年9月22日 | ITF アルバカーキ、アメリカ合衆国 | ハード | クリスティナ・ブランディ | 2-6, 2-6 |
優勝 | 8. | 2005年4月24日 | ドーサン・プロ・クラシック、アメリカ合衆国 | クレー | バルバラ・レプチェンコ | 2-6, 6-2, 6-4 |
優勝 | 9. | 2006年2月27日 | ITF セントポール、アメリカ合衆国 | ハード (室内) | クローディーヌ・ショール | 6-1, 6-2 |
準優勝 | 6. | 2006年4月25日 | ITF ラファイエット、アメリカ合衆国 | クレー | ユリアナ・フェダク | 7-5, 2-6, 4-6 |
優勝 | 10. | 2006年10月8日 | ITF トロイ、アメリカ合衆国 | ハード | アーシャ・ロール | 7-5, 6-0 |
優勝 | 11. | 2008年7月7日 | ITF アレンタウン、アメリカ合衆国 | ハード | アマンダ・フィンク | 6-2, 6-0 |
3.3.2. ダブルス: 27回 (18勝9敗)
結果 | No. | 日付 | 大会 | サーフェス | パートナー | 対戦相手 | スコア |
---|---|---|---|---|---|---|---|
準優勝 | 1. | 1997年6月16日 | ITF クロスタース、スイス | クレー | エレナ・ユリシッチ | キム・キルスドンク | 7-6(8), 4-6, 2-6 |
優勝 | 2. | 1997年8月18日 | ITF マルガリータ、ベネズエラ | クレー | エレナ・ユリシッチ | マリアナ・ロペス・パラシオス | 7-6(4), 7-5 |
準優勝 | 3. | 1997年11月9日 | ITF サントドミンゴ、ドミニカ共和国 | クレー | ジャクリーン・ローゼン | エリカ・アダムス | 3-6, 3-6 |
優勝 | 4. | 1999年8月30日 | ITF ケレタロ、メキシコ | クレー | ガブリエラ・ボレコバ | ジョアナ・コルテス | 4-6, 6-3, 6-4 |
優勝 | 5. | 2000年5月1日 | ITF コアツァコアルコス、メキシコ | ハード | ガブリエラ・ボレコバ | ジョアナ・コルテス | 4-6, 6-3, 7-5 |
準優勝 | 6. | 2000年6月5日 | ITF ヒルトンヘッド、アメリカ合衆国 | ハード | ガブリエラ・ボレコバ | ウェンディ・フィックス | 4-6, 6-7(3) |
準優勝 | 7. | 2000年10月30日 | ITF ヘイワード、アメリカ合衆国 | ハード | ケリー・リガン | ナナ・スミス | 2-4, 2-4 |
優勝 | 8. | 2001年4月2日 | ITF フアレス、メキシコ | クレー | アリシア・オルトゥーニョ | エリカ・クラウス | 6-4, 2-6, 6-2 |
準優勝 | 9. | 2001年8月5日 | ITF レキシントン、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | リサ・マクシア | 2-6, 1-6 |
準優勝 | 10. | 2002年4月6日 | ITF ジャクソン、アメリカ合衆国 | クレー | ヒセラ・ドゥルコ | リサ・マクシア | 2-6, 4-6 |
優勝 | 11. | 2002年5月13日 | ITF シュチェチン、ポーランド | クレー | バネッサ・ウェッブ | オルガ・ビメタルコバ | 6-7(5), 7-5, 6-3 |
優勝 | 12. | 2002年9月24日 | ITF アルバカーキ、アメリカ合衆国 | ハード | フランチェスカ・ルビアニ | タチアナ・ペレビーニス | 1-6, 7-5, 7-5 |
優勝 | 13. | 2002年10月13日 | ITF ハランデールビーチ、アメリカ合衆国 | ハード | ヒセラ・ドゥルコ | ペトラ・チェトコフスカ | 6-2, 7-5 |
準優勝 | 14. | 2002年10月15日 | ITF セドナ、アメリカ合衆国 | ハード | クリスティーナ・ウィーラー | ジェニファー・ラッセル | 6-7(3), 5-7 |
準優勝 | 15. | 2002年11月10日 | ITF ピッツバーグ、アメリカ合衆国 | ハード | ナナ・スミス | エイミー・フレイジャー | 4-6, 2-6 |
優勝 | 16. | 2002年11月17日 | ITF ユージーン、アメリカ合衆国 | ハード | ナナ・スミス | エフゲニア・クリコフスカヤ | 3-6, 6-2, 6-4 |
優勝 | 17. | 2003年4月22日 | ドーサン・プロ・クラシック、アメリカ合衆国 | クレー | クリスティーナ・ウィーラー | ジュリー・ディッティ | 5-7, 6-1, 6-2 |
優勝 | 18. | 2003年9月28日 | ITF アルバカーキ、アメリカ合衆国 | ハード | サマンサ・リーブス | アマンダ・オーガスタス | 6-3, 6-2 |
優勝 | 19. | 2004年4月25日 | ドーサン・プロ・クラシック、アメリカ合衆国 | クレー | リサ・マクシア | 彭帥 | 6-7(6), 6-4, 6-2 |
準優勝 | 20. | 2005年4月12日 | ITF ジャクソン、アメリカ合衆国 | クレー | アーシャ・ロール | アナスタシア・ロディオノワ | 1-6, 6-3, 2-6 |
優勝 | 21. | 2005年9月26日 | ITF アルバカーキ、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | ロマナ・テジャクスマ | 6-3, 6-7(6), 7-6(2) |
優勝 | 22. | 2005年10月9日 | ITF トロイ、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | サロメ・デビゼ | 6-2, 6-2 |
優勝 | 23. | 2006年2月12日 | ミッドランド・クラシック、アメリカ合衆国 | ハード | メイレン・トゥ | マリア・ホセ・アルヘリ | 4-6, 7-5, 6-4 |
優勝 | 24. | 2006年2月24日 | ITF セントポール、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | エバ・フルディノバ | 4-6, 7-6(5), 6-2 |
優勝 | 25. | 2006年4月25日 | ITF ラファイエット、アメリカ合衆国 | クレー | ハナ・シュロモバ | ユリアナ・フェダク | 2-6, 6-1, 6-1 |
優勝 | 26. | 2006年9月24日 | ITF アルバカーキ、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | クリスティーナ・フサノ | 6-1, 6-4 |
優勝 | 27. | 2006年10月1日 | ITF アシュランド、アメリカ合衆国 | ハード | ジュリー・ディッティ | アシュリー・ハークルロード | 6-3, 5-7, 6-2 |
3.4. パンアメリカン競技大会
セケラはパンアメリカン競技大会でシングルス金メダルを2度獲得している。
- 2003年サントドミンゴ大会(ドミニカ共和国): シングルス決勝でサラ・テイラーを破り金メダルを獲得した。
- 2007年リオデジャネイロ大会(ブラジル): シングルス決勝でマリアナ・ドゥケ・マリノを破り、再び金メダルを獲得した。
4. プレースタイルとコーチング
セケラは右利きで、バックハンド・ストロークは両手打ちである。彼女の好きなサーフェスはハードコートであった。キャリアを通じて、ラリー・ウィレンスが彼女のコーチを務めた。
5. プライベート
ミラグロス・セケラは2009年12月29日にオーストラリアのテニス選手であるスティーブン・フースと結婚した。結婚式はオーストラリアのメルボルン近郊にあるダンデノン丘陵で行われた。2011年には第1子となる長女が誕生している。
また、セケラの生年月日である1980年9月30日は、女子テニスの元世界ランキング1位であったマルチナ・ヒンギスと全く同じである。1990年代には、ドイツのテニスクラブ「TC RW ディンスラーケン」で数年間チーム競技に参加していた。
6. 評価と影響
ミラグロス・セケラは、ベネズエラの女子テニス界において先駆者としての意義を持つ選手である。特に、WTAツアーのシングルスで優勝した初めてのベネズエラ人女子選手という快挙は、同国のテニス史における重要な節目となった。彼女のキャリアは、オリンピックでのベスト8進出やパンアメリカン競技大会での2度の金メダル獲得など、国際舞台での顕著な成功によって特徴づけられる。これらの業績は、ベネズエラの若いテニス選手たちにとって大きな影響を与え、女子テニスの発展に貢献したと評価されている。