1. 来歴
増矢理花のサッカー選手としてのキャリアは、幼少期に始まり、JFAアカデミー福島での育成を経て、プロの舞台で輝かしい実績を築き、最終的に怪我のために引退するまでの道を辿った。
1.1. ユース時代
増矢理花は、兄がサッカーをしていた影響で地元松茂町の松茂スポーツ少年団リベルテサッカークラブに入り、サッカーを始めた。その後、リベルタ徳島ジュニアフットボールクラブを経て、中高一貫教育のJFAアカデミー福島に3期生として2008年に入校し、2013年まで在籍した。
JFAアカデミー福島在校中の2011年には、U-16日本女子代表に選出され、AFC U-16女子選手権2011に出場。決勝リーグのU-17中華人民共和国女子代表戦では2得点を挙げる活躍を見せた。翌2012年には、2012 FIFA U-17女子ワールドカップ(アゼルバイジャン開催)にU-17日本女子代表として選出され、グループリーグ初戦のU-17ブラジル女子代表戦でも2得点を記録した。2013年にはU-19日本女子代表への選出も期待されていたが、同年3月に右膝前十字靭帯を負傷し、そのシーズンを棒に振ることとなった。
1.2. クラブ経歴
増矢理花は、日本女子サッカーリーグの主要クラブであるINAC神戸レオネッサとサンフレッチェ広島レジーナでそのキャリアを築き、各チームで重要な役割を担った。
1.2.1. INAC神戸レオネッサ(第1期)
2014年、JFAアカデミー福島卒校と同時に日本女子サッカーリーグのINAC神戸レオネッサに入団した。入団直後の2014年なでしこリーグレギュラーシリーズ第3節のアルビレックス新潟レディース戦で2得点を挙げ、プロとしてのキャリアで鮮烈なデビューを飾った。
2017年シーズンからは背番号が20番から9番に変更された。同年3月26日に行われたノジマステラ神奈川相模原戦で、なでしこリーグ通算100試合出場を達成。さらに2019年10月14日の浦和レッズレディース戦では、なでしこリーグ通算150試合出場を達成した。2020年シーズンからは、チームに加入した田中美南に背番号9番を譲る形となり、自身の背番号は17番に変更された。
1.2.2. サンフレッチェ広島レジーナ
2021年、増矢はサンフレッチェ広島レジーナに完全移籍した。同年9月12日、WEリーグ初年度の開幕戦であるちふれASエルフェン埼玉戦に出場し、1ゴール2アシストの活躍を見せてチームの3-0での勝利に貢献し、創設1年目のチームにとって歴史的な勝利に大きく貢献した。しかし、この試合の後半34分に負傷し、左膝前十字靭帯損傷と診断され、全治約6ヶ月の長期離脱を余儀なくされた。
1.2.3. INAC神戸レオネッサ(復帰)
2023年6月29日、増矢は再びINAC神戸レオネッサへの復帰が発表された。しかし、復帰後の2024年3月3日には、再度左膝前十字靭帯損傷と診断され、全治約8ヶ月と発表された。
1.3. 代表経歴
増矢理花は、日本の年代別代表から女子サッカーのトップチームであるなでしこジャパンまで、各段階で重要な役割を果たし、国際舞台でその実力を示した。
1.3.1. 年代別代表
増矢は、2011年にU-16日本女子代表としてAFC U-16女子選手権2011に出場し、2得点を記録した。翌2012年にはFIFA U-17女子ワールドカップにU-17日本女子代表として出場し、グループリーグ初戦で2得点を挙げるなど、若年層から国際大会での経験を積んだ。
1.3.2. トップチームでの活動
2014年9月13日、18歳でガーナとの親善試合でなでしこジャパンにデビューを果たした。同年9月には第17回アジア競技大会(大韓民国仁川)に出場するなでしこジャパンに初選出された。この大会では6試合に出場し、2得点を記録し、日本の2位入賞に貢献した。
2018年にはAFC女子アジアカップ2018に出場し、日本の優勝に貢献。また、同年開催された第18回アジア競技大会にも出場し、日本代表として金メダルを獲得した。2015年のEAFF女子東アジアカップ2015、2017年と2018年のアルガルヴェ・カップ、2018年のトーナメント・オブ・ネーションズなど、数々の主要国際大会に参加した。2018年までに日本代表として通算27試合に出場し、6得点を記録した。
2. 個人成績
増矢理花のプロおよび代表でのキャリアにおける詳細な個人成績は以下の通りである。
2.1. クラブ別成績
年 | クラブ | 背番号 | リーグ | リーグ戦 | なでしこ リーグカップ | 皇后杯 | 合計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | 出場 | 得点 | ||||
2010 | JFAアカデミー福島 | 20 | チャレンジ EAST | 4 | 3 | - | 2 | 2 | 6 | 5 | |
2011 | 16 | 12 | 6 | - | 2 | 1 | 14 | 7 | |||
2012 | 9 | チャレンジ | 19 | 19 | - | 3 | 0 | 22 | 19 | ||
2013 | 0 | 0 | - | 2 | 1 | 2 | 1 | ||||
2014 | INAC神戸レオネッサ | 27 | なでしこ | 25 | 6 | - | 2 | 0 | 27 | 6 | |
2015 | なでしこ1部 | 22 | 8 | - | 5 | 3 | 27 | 11 | |||
2016 | 20 | 17 | 2 | 4 | 0 | 5 | 1 | 26 | 3 | ||
2017 | 9 | 18 | 2 | 7 | 4 | 2 | 0 | 27 | 6 | ||
2018 | 18 | 3 | 5 | 2 | 5 | 1 | 28 | 6 | |||
2019 | 18 | 6 | 10 | 1 | 4 | 2 | 32 | 9 | |||
2020 | 17 | 15 | 0 | - | 2 | 0 | 17 | 0 | |||
2021-22 | サンフレッチェ広島レジーナ | 8 | WE | 1 | 1 | - | - | - | 1 | 1 | |
2022-23 | 16 | 1 | 2 | 0 | 2 | 0 | 20 | 1 | |||
2023-24 | INAC神戸レオネッサ | 3 | 0 | 4 | 1 | 3 | 0 | 10 | 1 | ||
総通算 | 188 | 57 | 32 | 8 | 39 | 11 | 259 | 76 |
- 日本女子サッカーリーグ初出場: 2010年5月5日 チャレンジリーグEAST 第6節 AC長野パルセイロ・レディース戦(Jヴィレッジスタジアム)
- 日本女子サッカーリーグ初得点: 2010年9月12日 チャレンジリーグEAST 第14節 常盤木学園高等学校戦(Jヴィレッジスタジアム)
- WEリーグ初出場・初得点: 2021年9月12日 第1節 ちふれASエルフェン埼玉戦(熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)
2.2. 代表別成績
増矢理花の日本女子代表での出場試合数と得点数、および主要大会での活躍を示す。
日本女子代表 | ||
---|---|---|
年 | 出場 | ゴール |
2014 | 7 | 2 |
2015 | 3 | 1 |
2016 | 3 | 0 |
2017 | 2 | 0 |
2018 | 12 | 3 |
合計 | 27 | 6 |
主な出場大会は以下の通り。
- U-17日本代表
- 2012年 - 2012 FIFA U-17女子ワールドカップ(アゼルバイジャン大会)
- 日本代表
- 2014年 - 第17回アジア競技大会(仁川大会)
- 2015年 - EAFF女子東アジアカップ2015
- 2017年 - アルガルヴェ・カップ2017
- 2018年 - アルガルヴェ・カップ2018
- 2018年 - AFC女子アジアカップ2018
- 2018年 - 2018 トーナメント・オブ・ネーションズ
- 2018年 - 第18回アジア競技大会
増矢理花の代表での出場試合とゴールは以下の通り。
# 開催日 開催都市 スタジアム 対戦国 結果 監督 大会 1. 2014年9月13日 日本 天童 NDソフトスタジアム山形 ガーナ ○ 5-0 佐々木則夫 なでしこジャパンWORLD MATCH 2. 2014年9月15日 韓国 仁川 仁川南洞アジアードラグビー競技場 中華人民共和国 △ 0-0 第17回アジア競技大会 3. 2014年9月18日 ヨルダン ○ 12-0 4. 2014年9月22日 仁川文鶴競技場 チャイニーズタイペイ ○ 3-0 5. 2014年9月26日 韓国 華城 華城スタジアム 香港 ○ 9-0 6. 2014年9月29日 韓国 仁川 仁川サッカー競技場 ベトナム ○ 3-0 7. 2014年10月1日 仁川文鶴競技場 朝鮮民主主義人民共和国 ● 1-3 8. 2015年8月1日 中国 武漢 武漢体育中心 朝鮮民主主義人民共和国 ● 2-4 EAFF女子東アジアカップ2015 9. 2015年8月8日 中華人民共和国 ○ 2-0 10. 2015年11月29日 オランダ フォ-レンダム FCフォーレンダムスタジアム オランダ ● 1-3 国際親善試合 11. 2016年6月2日 アメリカ合衆国 コマースシティ ディックス・スポーティング・グッズ・パーク アメリカ合衆国 △ 3-3 高倉麻子 国際親善試合 12. 2016年6月5日 アメリカ合衆国 クリーブランド ファーストエナジー・スタジアム アメリカ合衆国 ● 0-2 国際親善試合 13. 2016年7月21日 スウェーデン カルマル グルドフォーゲルン・アリーナ スウェーデン ● 0-3 国際親善試合 14. 2017年3月1日 ポルトガル パルシャル ベラ・ヴィスタ市営スタジアム スペイン ● 1-2 アルガルヴェ・カップ2017 15. 2017年3月8日 ポルトガル ファロ / ローレ エスタディオ・アルガルヴェ オランダ ● 2-3 16. 2018年2月28日 ポルトガル パルシャル ベラ・ヴィスタ市営スタジアム オランダ ● 2-6 アルガルヴェ・カップ2018 17. 2018年3月2日 アイスランド ○ 2-1 18. 2018年3月5日 ポルトガル ファロ / ローレ エスタディオ・アルガルヴェ デンマーク ○ 2-0 19. 2018年4月1日 日本 諫早 トランスコスモススタジアム長崎 ガーナ ○ 7-1 MS&ADカップ2018 20. 2018年4月7日 ヨルダン アンマン キング・アブドゥッラー2世スタジアム ベトナム ○ 4-0 AFC女子アジアカップ2018 21. 2018年4月13日 アンマン国際スタジアム オーストラリア △ 1-1 22. 2018年4月17日 キング・アブドゥッラー2世スタジアム 中華人民共和国 ○ 3-1 23. 2018年7月26日 アメリカ合衆国 カンザスシティ チルドレンズ・マーシー・パーク アメリカ合衆国 ● 2-4 2018 トーナメント・オブ・ネーションズ 24. 2018年7月29日 アメリカ合衆国 イーストハートフォード プラット・アンド・ホイットニー・スタジアム ブラジル ● 1-2 25. 2018年8月2日 アメリカ合衆国 ブリッジビュー トヨタ・パーク オーストラリア ● 0-2 26. 2018年8月16日 インドネシア パレンバン ブミ・シュリーヴィジャヤ・スタジアム タイ王国 ○ 2-0 第18回アジア競技大会 27. 2018年8月25日 ゲロラ・シュリーヴィジャ・スタジアム 朝鮮民主主義人民共和国 ○ 2-1 # 開催日 開催都市 スタジアム 対戦国 結果 監督 大会 1. 2014年9月26日 韓国 華城 華城総合運動場 香港 ○ 9-0 佐々木則夫 第17回アジア競技大会 2. 3. 2015年8月1日 中国 武漢 武漢体育中心 朝鮮民主主義人民共和国 ● 2-4 EAFF女子東アジアカップ2015 4. 2018年4月1日 日本 諫早 トランスコスモススタジアム長崎 ガーナ ○ 7-1 高倉麻子 MS&ADカップ2018 5. 2018年7月29日 アメリカ合衆国 イーストハートフォード プラット・アンド・ホイットニー・スタジアム ブラジル ● 1-2 2018 トーナメント・オブ・ネーションズ 6. 2018年8月21日 インドネシア パレンバン ゲロラ・シュリーヴィジャ・スタジアム ベトナム ○ 7-0 第18回アジア競技大会
3. タイトル
増矢理花が選手として獲得した主要なタイトルと功績をクラブ別、代表別に分けて紹介する。
3.1. クラブでのタイトル
- INAC神戸レオネッサ
- 皇后杯 JFA 全日本女子サッカー選手権大会:3回(2015年、2016年、2023年)
3.2. 代表でのタイトル
- 日本女子代表
- AFC女子アジアカップ:1回(2018年)
- アジア競技大会:1回(2018年)
4. ポジション
増矢理花は、現役時代に主にフォワードとミッドフィールダーのポジションでプレーした。フォワードとしては得点源として、ミッドフィールダーとしては攻撃の組み立てや守備への貢献など、多様な役割をこなすことができる選手であった。利き足は右足である。身長は160 cm、体重は52 kg。
5. 怪我
増矢理花のキャリアは、度重なる大きな怪我との闘いでもあった。特に、膝の前十字靭帯損傷は彼女の選手活動に大きな影響を与えた。
- 2013年3月: 右膝前十字靭帯損傷(JFAアカデミー福島在籍時)
- 2021年9月12日: サンフレッチェ広島レジーナでのWEリーグ開幕戦中に左膝前十字靭帯損傷と診断され、全治約6ヶ月の長期離脱
- 2024年3月3日: INAC神戸レオネッサに復帰後、再び左膝前十字靭帯損傷と診断され、全治約8ヶ月と発表された
これらの怪我は、彼女が各シーズンでチームの主力として活躍する機会を制限し、そのパフォーマンスにも影響を及ぼした。
6. 引退
増矢理花は、度重なる怪我の影響もあり、2024年4月22日に2023-24シーズン限りでプロサッカー選手としての現役を引退することを発表した。引退発表の際、「とても幸せでした」と自身のサッカー人生を振り返るコメントを残した。引退後の具体的な活動については、現時点では言及されていない。