1. 幼少期と背景
カリーナ・フォークトは1992年2月5日にドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州、Schwäbisch Gmündシュウェービッシュグミュントドイツ語で生まれた。彼女は6歳でスキージャンプを始め、地元のスキークラブであるSki-Club Degenfeldに所属していた。身長は1.71 mで、自己最高記録はビショフスホーフェンのPaul-Ausserleitner-Schanzeで記録した135 mである。
2. 選手キャリア
カリーナ・フォークトの選手としてのキャリアは、国際大会への早期のデビューから始まり、女子スキージャンプの主要な大会で数々の歴史的な成果を上げた。
2.1. デビューと初期のキャリア
フォークトは2004年にマイナーツハーゲンでの国際大会でデビューした。2006年から2012年までFISスキージャンプ・コンチネンタルカップに参戦し、経験を積んだ。
2011/12シーズンに女子スキージャンプ・ワールドカップが新設されると、2012年1月にヒンターツァルテン大会でワールドカップデビューを果たし、総合27位でシーズンを終えた。
2012/13シーズンには好調を維持し、2013年2月9日の蔵王大会で自身初のワールドカップ表彰台(3位)に登壇した。
ジュニア選手時代には、ノルディックスキージュニア世界選手権で優れた成績を収めた。2007年のタルヴィジオ大会では女子個人で4位、2010年のヒンターツァルテン大会では5位、2011年のオテパー大会では8位となった。2012年のエルズルム大会では女子個人で銅メダル、女子団体で銀メダルを獲得している。
2.2. 主要大会での成績
フォークトは、冬季オリンピック、ノルディックスキー世界選手権、ジュニア世界選手権といった主要な国際大会で顕著な成績を収めた。
2.2.1. 冬季オリンピック
フォークトは女子スキージャンプ競技において、歴史に名を刻む選手となった。
2.2.2. ノルディックスキー世界選手権
フォークトはノルディックスキー世界選手権で合計5つの金メダルと1つの銅メダルを獲得した。
年 | ノーマルヒル個人 | ラージヒル個人 | 女子団体ノーマルヒル | 混合団体ノーマルヒル |
---|---|---|---|---|
2013年ヴァル・ディ・フィエンメ大会 | 5位 | - | - | 3位 |
2015年ファールン大会 | 1位 | - | - | 1位 |
2017年ラハティ大会 | 1位 | - | - | 1位 |
2019年ゼーフェルト大会 | 10位 | - | 1位 | - |
2021年オーベルストドルフ大会 | 30位 | - | - | - |
- 2013年ヴァル・ディ・フィエンメ大会(イタリア)
- 個人ノーマルヒルで5位。
- 混合団体ノーマルヒルでは、ウルリケ・グレッスラー、リヒャルト・フライターク、ゼヴェリン・フロイントと共に銅メダルを獲得した。
- 2015年ファールン大会(スウェーデン)
- 個人ノーマルヒルで金メダルを獲得。
- 混合団体ノーマルヒルでは、リヒャルト・フライターク、カタリナ・アルトハウス、ゼヴェリン・フロイントと共に金メダルを獲得し、2冠を達成した。
- 2017年ラハティ大会(フィンランド)
- 個人ノーマルヒルで2大会連続の金メダルを獲得。
- 混合団体ノーマルヒルでも、マルクス・アイゼンビヒラー、スヴェンニャ・ヴュルト、アンドレアス・ヴェリンガーと共に金メダルを獲得し、再び2冠を達成した。
- 2019年ゼーフェルト大会(オーストリア)
- 個人ノーマルヒルで10位。
- 女子団体ノーマルヒルでは、ユリアネ・ザイファルト、ラモナ・シュトラウブ、カタリナ・アルトハウスと共に金メダルを獲得した。この大会では女子団体が初開催された。
- 2021年オーベルストドルフ大会(ドイツ)
- 個人ノーマルヒルで30位に終わった。
2.2.3. ジュニア世界選手権
2.3. FISスキージャンプ・ワールドカップ
フォークトはFISスキージャンプ・ワールドカップにおいて、通算2回の優勝と22回の表彰台登壇を記録した。
2.3.1. シーズン成績
各シーズンのFISスキージャンプ・ワールドカップ個人総合最終順位は以下の通りである。
シーズン | 総合順位 | ジルベスター・トーナメント | リレハンメル・トリプル | ロウ・エア | ブルーバード・ツアー |
---|---|---|---|---|---|
2011/12 | 27位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2012/13 | 7位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2013/14 | 2位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2014/15 | 3位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2015/16 | 11位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2016/17 | 5位 | N/A | N/A | N/A | N/A |
2017/18 | 6位 | N/A | 5位 | N/A | N/A |
2018/19 | 9位 | N/A | 8位 | 14位 | 16位 |
2020/21 | 32位 | N/A | N/A | N/A | - |
2021/22 | - | 48位 | N/A | - | N/A |
2.3.2. 個人優勝と表彰台
ワールドカップ個人戦における優勝および表彰台登壇の記録は以下の通りである。
ワールドカップ個人表彰台 | ||||
---|---|---|---|---|
シーズン | 開催日 | 開催地 | ヒルサイズ | 成績 |
2012/13 | 2月9日 | 蔵王 | 100 | 3位 |
2013/14 | 12月22日 | ヒンターツァルテン | 108 | 3位 |
1月3日 | チャイコフスキー | 106 | 2位 | |
1月4日 | 2位 | |||
1月11日 | 札幌 | 100 | 2位 | |
1月18日 | 蔵王 | 100 | 3位 | |
1月19日 | 2位 | |||
1月25日 | プラニツァ | 95 | 3位 | |
1月26日 | 3位 | |||
2014/15 | 1月11日 | 札幌 | 100 | 2位 |
1月18日 | 蔵王 | 100 | 優勝(1) | |
1月24日 | オーベルストドルフ | 106 | 2位 | |
1月25日 | 2位 | |||
1月31日 | ヒンツェンバッハ | 94 | 2位 | |
2月1日 | 優勝(2) | |||
2016/17 | 2月4日 | ヒンツェンバッハ | 94 | 3位 |
2月5日 | 2位 | |||
2月12日 | リュブノ | 95 | 2位 | |
2017/18 | 12月1日 | リレハンメル | 100 | 3位 |
3月3日 | ルシュノヴ | 97 | 3位 | |
2018/19 | 1月20日 | 蔵王 | 102 | 3位 |
1月26日 | ルシュノヴ | 97 | 2位 | |
フォークトはワールドカップで通算2回の優勝、11回の2位、9回の3位を記録した。ワールドカップ初優勝は2014/15シーズンの2015年1月18日、日本の蔵王大会であった。
3. 怪我とキャリア後半
カリーナ・フォークトのキャリア後半は、度重なる怪我との闘いとなった。2019年7月、練習中に十字靭帯を断裂する重傷を負った。この怪我は彼女の選手活動に大きな影響を与え、その後のパフォーマンスにも苦しむこととなった。
怪我からの復帰後も、以前のような成績を維持することは困難であった。2020/21シーズンのワールドカップ総合順位は32位に留まり、2021年オーベルストドルフ大会の個人ノーマルヒルでは30位に終わった。これらの結果は、怪我の影響による肉体的な衰えを実感させるものであった。
4. 引退
2022年5月20日、カリーナ・フォークトは現役選手生活からの引退を正式に表明した。彼女は引退の理由として、度重なる怪我による「肉体的な衰えを実感した」ことを挙げている。この決断は、長年にわたるトップレベルでの競技生活と、怪我からの復帰に向けた努力の末に下されたものであった。
5. 功績と影響
カリーナ・フォークトは、女子スキージャンプの歴史において、その発展に多大な貢献をした選手として評価されている。特に、2014年ソチオリンピックで女子スキージャンプ初の金メダルを獲得したことは、この競技の国際的な認知度を高め、多くの若い女性選手に夢と希望を与えた歴史的な功績である。
彼女の成功は、女子スキージャンプがオリンピック競技として定着する上で重要な役割を果たし、その後の競技の成長と普及に大きく寄与した。また、ノルディックスキー世界選手権での5つの金メダル獲得は、彼女が単なるパイオニアであるだけでなく、安定して世界トップレベルのパフォーマンスを発揮し続けた証である。フォークトのレガシーは、彼女の競技成績だけでなく、女子スキージャンプの地位向上に貢献したその先駆的な役割によって、スポーツ界に深く刻まれている。