1. 概要
サリ・ミリアム・エサヤ(Sari Miriam Essayahサリ・ミリアム・エサヤフィンランド語、1967年2月21日生まれ)は、フィンランドの元競歩選手であり、現在は政治家として活動している。元欧州議会議員であり、2015年からは国会議員を務めている。彼女はキリスト教民主党の党首であり、2023年からは農業・林業大臣を務めている。スポーツ選手時代には、1993年の世界選手権と1994年のヨーロッパ選手権の10km競歩で優勝し、7つの国内記録を樹立した。政治家としては、人権擁護活動に積極的に取り組み、特に政治犯のゴッドペアレント(後見人)制度への参加は、彼女の社会正義に対する強いコミットメントを示している。
2. 生い立ちと教育
サリ・エサヤは、スポーツ選手としての才能と政治家としてのキャリアを築く前に、幼少期を過ごし教育を受けた。彼女の父親はモロッコ出身である。
2.1. 幼少期と学歴
サリ・エサヤは1967年2月21日、フィンランドの旧東スオミ州ハウキブオリ(現在の南サヴォ地域のミッケリ)で生まれた。学業においては、ヴァーサ大学で経営学および会計学の理学修士号(M.Sc. Econ)を取得している。
3. スポーツ選手としての経歴
サリ・エサヤは、そのキャリアを通じて主に5km競歩と10km競歩の種目で国際的な成功を収めた。彼女はまた、7つの国内記録を樹立しており、これらの記録は現在も破られていない。
3.1. 主要な実績
サリ・エサヤは、競歩選手として数々の国際大会で顕著な成績を残した。特に、1993年の世界選手権と1994年のヨーロッパ選手権では10km競歩で金メダルを獲得している。
年 | 大会 | 開催地 | 順位 | 種目 | 記録 |
---|---|---|---|---|---|
1987 | 世界選手権 | ローマ、イタリア | 19位 | 10 km | 47:30 |
1989 | ユニバーシアード | デュイスブルク、西ドイツ | 3位 | 5 km | 21:34 |
1990 | ヨーロッパ選手権 | スプリト、ユーゴスラビア | 5位 | 10 km | 45:10 |
1991 | ワールド競歩カップ | サンノゼ、アメリカ合衆国 | 16位 | 10 km | 46:20 |
ユニバーシアード | シェフィールド、イングランド | 1位 | 10 km | 44:04 | |
世界選手権 | 東京、日本 | 3位 | 10 km | 43:13 | |
1992 | オリンピック | バルセロナ、スペイン | 4位 | 10 km | 45:08 |
1993 | ワールド競歩カップ | モンテレイ、メキシコ | 2位 | 10 km | 45:18 |
世界選手権 | シュトゥットガルト、ドイツ | 1位 | 10 km | 42:59 | |
1994 | ヨーロッパ選手権 | ヘルシンキ、フィンランド | 1位 | 10 km | 42:37 |
1995 | ワールド競歩カップ | 北京、中国 | 12位 | 10 km | 44:21 |
世界選手権 | ヨーテボリ、スウェーデン | 4位 | 10 km | 42:20 | |
1996 | オリンピック | アトランタ、アメリカ合衆国 | 16位 | 10 km | 45:02 |
4. 政治家としての経歴
スポーツ界を引退した後、サリ・エサヤはフィンランドの政治に身を投じ、国会議員、欧州議会議員、党の要職、さらには大臣や大統領候補として幅広く活動している。

4.1. 政界入りと国会活動
2003年、サリ・エサヤはキリスト教民主党からフィンランド議会に初当選し、政界入りを果たした。彼女は2007年まで国会議員を務めたが、同年の選挙では再選に失敗した。しかし、彼女は政界を離れることなく、その後も党内で重要な役割を担い続けた。
4.2. 欧州議会と党の役職
2007年から2009年まで、サリ・エサヤはキリスト教民主党の党書記を務めた。2009年には欧州議会議員に選出され、国際舞台での活動を開始した。しかし、2014年の欧州議会選挙では、約61,000票を獲得したにもかかわらず再選を果たせず、これによりキリスト教民主党は欧州議会の議席を失うことになった。
4.3. 党首と大臣の役職
2015年のフィンランド議会選挙では、新たに編成されたサボニア・カレリア選挙区から出馬し、11,000票を超える得票を得て再び国会議員に当選した。その後、キリスト教民主党の国会グループ副議長に選出された。同年8月には、10年以上にわたり党首を務めたパイヴィ・ラサネンの引退に伴い、キリスト教民主党の新たな党首に選ばれた。2019年のフィンランド議会選挙で再び国会議員に再選され、同年8月の党大会では3期目の党首に再選された。2023年6月には、オルポ内閣において農業・林業大臣に任命され、政府の要職を担うことになった。
4.4. 大統領選挙への立候補
サリ・エサヤは、フィンランドの国家元首を選ぶ大統領選挙にも二度立候補している。2012年の大統領選挙では、得票率2.47%で最下位に終わった。その後、2024年の大統領選挙にもキリスト教民主党の候補として出馬したが、得票率1.48%で7位という結果になった。
4.5. 人権擁護活動
政治活動の中で、サリ・エサヤは特に人権擁護に強い関心を示し、積極的に活動を行っている。その顕著な例として、2011年11月にベラルーシの活動家で政治犯であるミコラ・ジャジャドク(Mikola Dziadokミコラ・ジャジャドク英語)の「ゴッドペアレント(後見人)」を務めたことが挙げられる。このゴッドペアレント制度は、政治犯を支援し、その状況に対する国際的な注意を喚起するための活動である。彼女のこの行動は、ヴィアースナ人権センター(Viasna Human Rights Centreヴィアースナ人権センター英語)を通じて広く知られ、彼女が人権と社会正義の推進に深くコミットしていることを示している。
5. その他の公的活動
サリ・エサヤは、政治活動やスポーツ選手としてのキャリア以外にも、様々な公的機関や団体で重要な役割を担っている。2016年には国際オリンピック委員会(IOC)の委員に選出され、スポーツの世界における倫理とガバナンスに貢献している。また、2014年からはフィンランド陸上競技連盟の倫理委員会委員を務めている。2019年からは、フィンランド国際問題研究所(FIIA)の諮問委員会委員としても活動しており、国際関係における専門知識を提供している。
6. 選挙結果
サリ・エサヤが参加した主要な選挙における結果は以下の通りである。
選挙名 | 役職名 | 大数 | 政党 | 得票率 | 最終得票数 | 結果 | 当落 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
2012年選挙 | フィンランドの大統領 | 12代 | キリスト教民主党 | 2.47% | 75,744票 | 8位 | 落選 |
2024年選挙 | フィンランドの大統領 | 13代 | キリスト教民主党 | 1.48% | 47,847票 | 7位 | 落選 |
7. 評価と影響
サリ・エサヤは、競歩選手として世界的な成功を収めた後、政治の世界でも重要な役割を果たしてきた。彼女のスポーツキャリアは、1993年の世界選手権と1994年のヨーロッパ選手権での金メダル獲得によって頂点に達し、フィンランドの陸上競技界に大きな足跡を残した。
政治家としては、国会議員、欧州議会議員を歴任し、現在はキリスト教民主党の党首、そして農業・林業大臣を務めるなど、要職を歴任している。彼女のリーダーシップは、党の方針決定や政府の政策形成に影響を与えている。
特に、人権擁護活動への積極的な関与は、彼女の公的なイメージと活動に重要な側面を加えている。ベラルーシの政治犯のゴッドペアレントを務めたことは、彼女が単なる政治家や元アスリートにとどまらず、国際的な人権問題にも深くコミットする姿勢を示している。これにより、彼女はフィンランド国内外で、スポーツ界、政治界、そして人権活動の分野にわたる多面的な影響力を持つ人物として評価されている。