1. 概要
ベカ・グビニアシビリ(Beka Gviniashviliベカ・グビニアシビリ英語、1995年10月26日 - )は、ジョージアのシダ・カルトリ州出身の柔道家。階級は90kg級。身長は1.8 m。
グビニアシビリは、2011年にヨーロッパユースオリンピックフェスティバルと世界カデ選手権で優勝、2013年と2015年には世界ジュニア選手権を、2013年、2014年、2015年にはヨーロッパジュニア選手権をそれぞれ制覇した。シニアでは、ワールドマスターズで2度優勝、グランプリとグランドスラムでも複数の優勝を経験している。2016年リオデジャネイロオリンピックでは7位、2015年世界選手権では5位と、最高峰の舞台でも活躍を見せた。彼のキャリアは、階級変更を繰り返しながらも国内外の主要大会で継続的な成功を収めてきたことが特徴である。
2. 生い立ちと初期のキャリア
ベカ・グビニアシビリは1995年10月26日にジョージアのシダ・カルトリ州で生まれた。幼い頃から柔道を始め、その才能はすぐに開花した。ジュニア時代からIJF主催の国際舞台で目覚ましい成績を収め、将来を嘱望される柔道家としてのキャリアを築き始めた。
3. ジュニア・ユース時代の主な成績
グビニアシビリはジュニア・ユース時代に数々の輝かしい成績を収めた。
- 2011年には、81kg級でヨーロッパカデ選手権とヨーロッパユースオリンピックフェスティバルで優勝を飾った。同年、世界カデ選手権でも頂点に立ち、さらに世界ジュニア選手権では3位に入賞した。
- 2012年には、シニアの大会であるワールドカップ・トビリシとワールドカップ・プラハで2位となり、またヨーロッパジュニア選手権でも2位の成績を収めた。
- 2013年には階級を90kg級に上げ、ヨーロッパジュニア選手権で優勝を果たした。同年、世界ジュニア選手権では個人戦で全ての試合を一本勝ちで制して優勝。さらに団体戦でも決勝でギリシャを破り、2冠を達成した。
- 2014年のヨーロッパジュニア選手権では2連覇を達成し、団体戦でも優勝に貢献した。しかし、世界ジュニア選手権では準決勝でハンガリーのトート・クリスティアーンに敗れて3位に留まり、団体戦でも決勝で日本チームに敗れて2位となった。
- 2015年の世界ジュニア選手権では、2年ぶりに個人戦で優勝を飾った。
この期間の経験は、彼のその後のシニアキャリアにおける基盤となった。
4. シニアキャリア
ベカ・グビニアシビリは、ジュニア・ユース時代に培った実力を背景に、シニアの国際大会でもその存在感を発揮し、世界のトップ選手の一人として活躍した。
4.1. シニア初期の活躍 (2012年-2015年)
2012年にシニアの大会で2位入賞を経験した後、2013年に90kg級へ階級変更したことで、シニアキャリアを本格的に始動した。
- 2014年にはグランプリ・サムスンとグランプリ・ウランバートルで優勝、グランドスラム・バクーとグランプリ・ハバナで3位と、安定した成績を残した。同年、世界団体選手権では3位に貢献した。
- 2015年には、グランプリ・デュッセルドルフで3位、ヨーロッパオープン・ローマでも3位に入賞した。グランプリ・トビリシでは、国内のライバルである先輩のヴァルラーム・リパルテリアニを破って優勝。
- 続くワールドマスターズでは、2回戦で世界チャンピオンのイリアス・イリアディス、決勝では日本の吉田優也をそれぞれ破り、優勝を飾った。
- 世界選手権では、準々決勝で日本のベイカー茉秋を有効で破るも、準決勝でロシアのキリル・デニソフに合技で敗れた。3位決定戦でもリパルテリアニに敗れ、5位に終わった。また、同年も世界団体選手権で3位に入賞した。
4.2. オリンピックおよび世界選手権への出場
グビニアシビリは柔道における最高峰の大会にも出場し、実力を示した。
- 2015年の世界選手権では、90kg級で5位という結果を残した。
- リオデジャネイロオリンピックには100kg級で出場した。これは、国内に同じ90kg級で強力なライバルであるヴァルラーム・リパルテリアニがいたため、オリンピック代表を目指す目的で階級を上げたためである。オリンピックでは準々決勝でフランスのシリル・マレに技ありで敗れ、敗者復活戦でも日本の羽賀龍之介に指導の差で敗れて7位に終わった。
4.3. 階級の変遷
ベカ・グビニアシビリは、キャリアを通じて複数の階級で国際大会に出場した。
- キャリア初期のユース・ジュニア時代には81kg級で活躍し、世界カデ選手権やヨーロッパユースオリンピックフェスティバルで優勝を経験した。
- 2013年に90kg級に階級を上げた。この階級で世界ジュニア選手権、ヨーロッパジュニア選手権、ワールドマスターズなど数々の主要大会で成功を収め、シニアのトップ選手としての地位を確立した。
- 2016年リオデジャネイロオリンピックを前に、国内に同じ90kg級の強敵がいたため、100kg級に一時的に変更し、オリンピック出場を果たした。
- リオオリンピック後、再び90kg級に戻し、この階級で継続的に国際大会に出場している。
これらの階級変更は、彼の適応能力と柔道家としての多様な才能を示している。
4.4. 持続的な成功と特筆すべき瞬間 (2017年以降)
リオオリンピック後に90kg級に戻ってからも、グビニアシビリは国際大会で継続的な成功を収めた。
- 2017年にはグランプリ・デュッセルドルフで優勝、ヨーロッパ選手権では個人戦で3位、団体戦で優勝を飾った。同年、ワールドマスターズでは決勝で韓国の郭同韓に一本勝ちし、2年ぶりに優勝を果たした。
- 2018年のグランドスラム・パリでは決勝で日本の向翔一郎に敗れて2位に終わった。この際、向が負傷したグビニアシビリの肩を貸して退場を手伝うというスポーツマンシップに則った行動を見せ、観衆からスタンディングオベーションを受けたことは特筆すべき瞬間として記憶されている。
- 2019年にはグランドスラム・エカテリンブルグで2位、グランプリ・トビリシとグランプリ・ブダペストで3位、グランプリ・ザグレブで優勝を飾った。同年、グランドスラム・大阪では3回戦でオリンピックチャンピオンのベイカー茉秋を支釣込足で破り、準決勝では長澤憲大を合技で破るなどして優勝を果たした。
- 2020年のグランドスラム・デュッセルドルフで3位に入賞した。
- 2021年のワールドマスターズでは決勝でオランダのノエル・ファントエンドに敗れて2位、ヨーロッパ選手権でも決勝で同僚のラシャ・ベカウリに敗れて2位だった。同年、グランドスラム・テルアビブとグランドスラム・バクーでそれぞれ3位に入賞した。
- 2022年にはグランドスラム・トビリシ、グランプリ・ザグレブ、グランドスラム・アブダビで優勝を果たし、グランドスラム・ブダペストでも3位に入った。
- 2023年のグランドスラム・テルアビブでも優勝を飾るなど、精力的に活動を続けている。
5. 主な戦績とメダル記録
ベカ・グビニアシビリがこれまでに獲得した主なメダルとタイトルを以下の表にまとめる。
大会名 | 開催年 | 階級 | メダル | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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世界選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2015年 アスタナ | 団体戦 | 男子団体 | 銅 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヨーロッパ競技大会 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2023年 クラクフ | 混合団体 | 混合団体 | 金 | 2015年 バクー | 団体戦 | 男子団体 | 銀 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヨーロッパ選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2017年 ワルシャワ | 団体戦 | 男子団体 | 金 | 2021年 リスボン | 個人戦 | -90kg級 | 銀 | 2017年 ワルシャワ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2020年 プラハ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ワールドマスターズ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2015年 ラバト | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2017年 サンクトペテルブルク | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2021年 ドーハ | 個人戦 | -90kg級 | 銀 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
IJFグランドスラム | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2016年 バクー | 個人戦 | -100kg級 | 金 | 2019年 大阪 | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2022年 トビリシ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2022年 アブダビ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2023年 テルアビブ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2017年 アブダビ | 個人戦 | -90kg級 | 銀 | 2018年 パリ | 個人戦 | -90kg級 | 銀 | 2019年 エカテリンブルグ | 個人戦 | -90kg級 | 銀 | 2014年 バクー | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2020年 デュッセルドルフ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2021年 テルアビブ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2021年 バクー | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2022年 ブダペスト | 個人戦 | -90kg級 | 銅 |
IJFグランプリ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2014年 サムスン | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2014年 ウランバートル | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2015年 トビリシ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2016年 サムスン | 個人戦 | -100kg級 | 金 | 2017年 デュッセルドルフ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2019年 ザグレブ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2022年 ザグレブ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2014年 ハバナ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2015年 デュッセルドルフ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2016年 トビリシ | 個人戦 | -100kg級 | 銅 | 2019年 トビリシ | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | 2019年 ブダペスト | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | ||||
ヨーロッパU23選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2016年 テルアビブ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界ジュニア選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2013年 リュブリャナ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2015年 アブダビ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2011年 ケープタウン | 個人戦 | -81kg級 | 銅 | 2014年 フォートローダーデール | 個人戦 | -90kg級 | 銅 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヨーロッパジュニア選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2013年 サラエボ | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2014年 ブカレスト | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2015年 オーバーヴァルト | 個人戦 | -90kg級 | 金 | 2012年 ポレッチ | 個人戦 | -81kg級 | 銀 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
世界カデ選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年 キエフ | 個人戦 | -81kg級 | 金 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヨーロッパカデ選手権 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年 コットネラ | 個人戦 | -81kg級 | 金 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヨーロッパユースオリンピックフェスティバル | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2011年 トラブゾン | 個人戦 | -81kg級 | 金 |
6. 世界ランキング
IJFの世界ランキングにおいて、ベカ・グビニアシビリは2023年2月20日現在、4670ポイントを獲得し、12位に位置している。彼の世界ランキングは、国際大会での継続的な活躍とメダル獲得により高い水準を維持している。