1. 経歴
ヴェセリーの陸上競技キャリアは、チェコスロバキアのホドニーンで生まれ、チェコ国内での初期の活動から国際舞台での成功、そしてオリンピックでのメダル獲得に至るまで、着実に進展した。
1.1. 初期キャリアと台頭
ヴェセリーは2002年世界ジュニア陸上競技選手権大会に出場し、9位という成績を収めた。この大会は彼の国際キャリアの出発点となった。その後、2008年北京オリンピックでは、予選で当時の自己最高記録である81.2 mを記録し、決勝に進出したが、12位に終わった。翌年の2009年世界選手権では、75.76 mの記録で予選を突破できず、初めての主要国際大会の決勝進出はならなかった。
しかし、2010年5月にはオロモウツで開催された競技会で、自己記録を5メートル以上更新する86.45 mを記録し、この年の世界最高記録をマークしてその才能が大きく開花した。同年開催されたヨーロッパ選手権では9位に入った。2011年には、韓国の大邱で開かれた世界選手権で4位となり、メダル獲得まであと一歩のところまで迫った。
2012年5月、上海ゴールデングランプリでセカンドベストとなる85.4 mを投げ優勝した。同年6月のビスレットゲームズでは88.11 mを記録し優勝、この記録は当時のシーズン世界最高記録であった。また、2012年と2013年にはIAAFダイヤモンドリーグの年間王者にも輝いている。
1.2. 主要国際大会での活躍
ヴェセリーはオリンピック以外にも数多くの主要国際大会で顕著な成績を収めている。
2012年ヨーロッパ選手権では、83.72 mを記録し、金メダルを獲得した。
2013年世界選手権では、ロシアのモスクワで開催された決勝の1投目で87.17 mをマークし、3投目に87.07 mを投げたテロ・ピトカマキをわずか0.1 m差で抑えて、自身初の金メダルを獲得した。これは、2001年のヤン・ゼレズニー以来となるチェコ人選手による世界選手権やり投での優勝という快挙であった。
2014年ヨーロッパ選手権では、スイスのチューリッヒで84.79 mを投げ、銀メダルを獲得した。この大会ではアンッティ・ルースカネンが決勝で自身の最高となる88.01 mを投げて優勝した。
同年、IAAFコンチネンタルカップでも金メダルを獲得している。
2015年世界選手権では8位、2016年ヨーロッパ選手権では銀メダル、2017年世界選手権では予選で26位となった。2019年世界選手権は出場を辞退した。
キャリア後期の2022年ヨーロッパ選手権では、ドイツのミュンヘンで4位に入賞した。
1.3. オリンピックでの実績
ヴェセリーは複数回にわたってオリンピックに出場し、メダルを獲得するに至った。
2008年北京オリンピックでは、12位。
2012年ロンドンオリンピックでは、予選で自己ベストとなる88.34 mを記録し、その時点での世界最高記録を更新した。しかし、決勝では最終6投目で83.34 mを投げたものの、惜しくも4位に終わった。だが、2017年にウクライナの選手オレクサンドル・ピアトニツァのドーピング違反が発覚し、メダルが剥奪されたため、ヴェセリーには銅メダルが再配分されることとなった。
2016年リオデジャネイロオリンピックでは7位に入賞した。
2020年東京オリンピック(2021年開催)では、85.44 mを記録し、再び銅メダルを獲得した。
2. 主な戦績
年 | 大会 | 場所 | 順位 | 記録 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2002 | 世界ジュニア選手権 | ジャマイカ、キングストン | 9位 | 68.76 m | ||
2008 | オリンピック | 中国、北京 | 12位 | 76.76 m | ||
2009 | 世界選手権 | ドイツ、ベルリン | 28位 | 75.76 m | 予選 | |
2010 | ヨーロッパ選手権 | スペイン、バルセロナ | 9位 | 77.83 m | ||
2011 | 世界選手権 | 韓国、大邱 | 4位 | 84.11 m | ||
2012 | ヨーロッパ選手権 | フィンランド、ヘルシンキ | 1位 | 83.72 m | ||
オリンピック | イギリス、ロンドン | 3位 | 83.34 m | ドーピングにより4位から繰り上げ | ||
2012 | IAAFダイヤモンドリーグ | 年間優勝 | 14ポイント | |||
2013 | 世界選手権 | ロシア、モスクワ | 1位 | 87.17 m | ||
2014 | ヨーロッパ選手権 | スイス、チューリッヒ | 2位 | 84.79 m | ||
2014 | IAAFコンチネンタルカップ | モロッコ、マラケシュ | 1位 | やり投 | ||
2015 | 世界選手権 | 中国、北京 | 8位 | 83.13 m | ||
2016 | ヨーロッパ選手権 | オランダ、アムステルダム | 2位 | 83.59 m | ||
オリンピック | ブラジル、リオデジャネイロ | 7位 | 82.51 m | |||
2017 | 世界選手権 | イギリス、ロンドン | 26位 | 75.5 m | 予選 | |
2019 | 世界選手権 | カタール、ドーハ | 棄権 | DNS | ||
2021 | オリンピック | 日本、東京 | 3位 | 85.44 m | ||
2022 | ヨーロッパ選手権 | ドイツ、ミュンヘン | 4位 | 84.36 m |
3. シーズンベスト
競技生活におけるヴェセリーの各シーズンの最高記録は以下の通りである。
- 2002年 - 73.22 m
- 2006年 - 75.98 m
- 2007年 - 79.45 m
- 2008年 - 81.2 m
- 2009年 - 80.35 m
- 2010年 - 86.45 m
- 2011年 - 84.11 m
- 2012年 - 88.34 m(自己最高記録、当時のシーズン世界最高)
- 2013年 - 87.58 m
- 2014年 - 87.38 m
- 2015年 - 88.18 m
- 2016年 - 84.82 m
- 2017年 - 82.29 m
- 2018年 - 82.3 m
- 2019年 - 82.85 m
- 2020年 - 83.03 m
- 2021年 - 85.44 m
- 2022年 - 85.97 m
4. 評価と影響
ヴィテスラフ・ヴェセリーは、長年にわたりやり投の世界でトップレベルの成績を維持し続けた選手であり、その競技キャリアは陸上競技界に大きな影響を与えた。特に、2013年世界選手権での金メダル獲得は、2001年のヤン・ゼレズニー以来となるチェコ人選手による同種目優勝という歴史的快挙であり、その指導者であったヤン・ゼレズニーの遺産を受け継ぐ存在として高く評価された。
また、2012年ロンドンオリンピックでの銅メダル再配分は、スポーツにおけるドーピング問題の重要性を改めて浮き彫りにした出来事であり、ヴェセリーのメダルは公平な競技環境の維持に向けた国際的な取り組みの象徴ともなった。彼の活躍は、チェコ国内のやり投競技の発展にも貢献し、後進の選手たちに大きなインスピレーションを与えている。彼の粘り強い競技姿勢と、長期間にわたる国際舞台での安定したパフォーマンスは、やり投選手としての模範を示している。