1. 生い立ちと背景
アークバール・ジュラエフは1999年10月8日にウズベキスタンの首都タシュケントで生まれた。彼の育成には、マンスルベク・チャシェモフとバフロム・アブドゥマリコフといったコーチ陣が重要な役割を果たした。ジュラエフは、若くして重量挙げの才能を開花させ、ジュニア世代から国際舞台で活躍を始めた。
2. 選手経歴
アークバール・ジュラエフは、ジュニア時代からその才能を国際舞台で発揮し、シニアに移行してからはオリンピックや世界選手権で数々のメダルを獲得し、重量挙げ界のトップ選手としての地位を確立した。彼のキャリアは、階級の変更や記録更新の挑戦に満ちている。

2.1. ジュニア時代
ジュラエフは2017年のジュニア世界重量挙げ選手権に105kg級で出場し、トータル352 kg(スナッチ162 kg、クリーン&ジャーク190 kg)で6位に入賞した。
2018年には、ジュニアアジア重量挙げ選手権でトータル372 kgを記録し、金メダルを獲得した。同年、タシュケントで開催されたジュニア世界重量挙げ選手権では、トータル369 kg(スナッチ167 kg、クリーン&ジャーク202 kg)で銀メダルを獲得した。
2019年6月には、ジュニア世界チャンピオンに輝き、トータル398 kgを記録した。
2.2. シニア時代
ジュラエフは2018年に国際重量挙げ連盟による階級再編が行われるまで105kg級で競技し、その後102kg級と109kg級に移行した。
- 2017年**: アナハイムで開催された2017年世界重量挙げ選手権に105kg級で出場し、トータル373 kg(スナッチ174 kg、クリーン&ジャーク199 kg)で13位となった。
- 2018年**: アシガバートで開催された2018年世界重量挙げ選手権の102kg級で、スナッチ180 kgを挙げ、スナッチで金メダルを獲得した。トータルでは392 kgを記録し、わずか1 kg差で銅メダルを逃し4位入賞となった。同年12月のカタール国際カップでは、新設された109kg級でトータル392 kgを挙げ、銅メダルを獲得した。
- 2019年**: 4月のアジア重量挙げ選手権では、109kg級で自己記録を更新し、スナッチ185 kg、クリーン&ジャーク225 kg、トータル410 kgで銀メダルを獲得した。同年、パタヤで開催された2019年世界重量挙げ選手権の109kg級で、クリーン&ジャーク229 kgを成功させて銀メダルを獲得した。トータルでは417 kgで4位に入賞し、この記録はジュニア世界記録となった。また、カタールカップではスナッチ185 kg、クリーン&ジャーク220 kg、トータル405 kgで優勝した。
- 2020年**: 国際連帯選手権でトータル410 kgを挙げ金メダルを獲得した。4月のアジア選手権では、109kg級で自己最高のスナッチ194 kg、クリーン&ジャーク234 kg、トータル428 kgを記録し、再び2位となった。ウズベキスタン選手権でオリンピックチャンピオンのルスラン・ヌルディノフを12 kg差で破り、2020年東京オリンピックへの出場権を獲得した。
- 2021年**: 東京で開催された2020年東京オリンピックの男子109kg級で、アルメニアのシモン・マルティロシアンを破り、オリンピックチャンピオンに輝いた。トータル430 kg、クリーン&ジャーク237 kgはオリンピック記録となった。同年、タシュケントで開催された2021年世界重量挙げ選手権の男子109kg級で金メダルを獲得し、トータル433 kg(スナッチ195 kg、クリーン&ジャーク238 kg)を記録した。
- 2023年**: 杭州で開催された2022年アジア競技大会の男子109kg級で銀メダルを獲得し、トータル417 kgを記録した。同年、晋州で開催された2023年アジア重量挙げ選手権の男子+109kg級で銅メダルを獲得し、トータル437 kgを記録した。リヤドで開催された2023年世界重量挙げ選手権では、109kg級でトータル415 kgを挙げ、世界選手権の金メダルを獲得した。
- 2024年**: プーケットで開催された2024年IWFワールドカップの109kg級では、トータル416 kgを記録した。タシュケントで開催された2024年アジア重量挙げ選手権の102kg級では、トータル400 kgを記録した。8月にはフランスのパリで開催された2024年パリオリンピックの男子102kg級に出場し、トータル404 kgで銀メダルを獲得した。中国の劉煥華に2 kg差で金メダルを逃した。
2.3. 世界記録と自己最高記録
ジュラエフは、国際重量挙げ連盟による階級再編後に、102kg級のスナッチとトータル、そして109kg級のスナッチ、クリーン&ジャーク、トータルにおいてジュニア世界記録を保持している。
彼の自己最高記録(Personal Bests)は以下の通りである。
- スナッチ: 195 kg (2021年)
- クリーン&ジャーク: 242 kg (2023年)
- トータル: 437 kg (2023年)
3. 主な戦績
アークバール・ジュラエフの主要大会における戦績を以下に示す。
年 | 会場 | 階級 | スナッチ (kg) | クリーン&ジャーク (kg) | トータル | 順位 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 順位 | 1 | 2 | 3 | 順位 | |||||
オリンピック | ||||||||||||
2021 | 東京、日本 | 109 kg | 189 | 193 | - | 227 | 237 OR | - | 430 OR | - | ||
2024 | パリ、フランス | 102 kg | 180 | 185 | - | 219 | - | 404 | - | |||
世界選手権 | ||||||||||||
2017 | アナハイム、アメリカ合衆国 | 105 kg | 164 | 169 | 174 | 12 | 194 | 199 | 15 | 373 | 13 | |
2018 | アシガバート、トルクメニスタン | 102 kg | 173 | 178 | 180 | - | 200 | 207 | 212 | 4 | 392 | 4 |
2019 | パタヤ、タイ | 109 kg | 184 | 188 | 6 | 221 | 226 | 229 | - | 417 | 4 | |
2021 | タシュケント、ウズベキスタン | 109 kg | 187 | 192 | 195 | - | 226 | 232 | 238 | - | 433 | - |
2023 | リヤド、サウジアラビア | 109 kg | 182 | 189 | - | 220 | 226 | - | 415 | 1 | ||
IWFワールドカップ | ||||||||||||
2024 | プーケット、タイ | 109 kg | 180 | 185 | 189 | - | 220 | 227 | - | - | 416 | - |
アジア競技大会 | ||||||||||||
2023 | 杭州、中国 | 109 kg | 180 | 184 | 189 | 1 | 222 | 228 | 2 | 417 | - | |
アジア選手権 | ||||||||||||
2019 | 寧波、中国 | 109 kg | 176 | 181 | 185 | - | 215 | 219 | 225 | - | 410 | - |
2020 | タシュケント、ウズベキスタン | 109 kg | 188 | 194 | - | 225 | 234 | - | 428 | - | ||
2023 | 晋州、韓国 | +109 kg | 189 | 195 | 4 | 230 | 242 | - | 437 | - | ||
2024 | タシュケント、ウズベキスタン | 102 kg | 175 | 180 | - | 214 | 220 | - | 400 | - | ||
ジュニア世界選手権 | ||||||||||||
2017 | 東京、日本 | 105 kg | 155 | 159 | 162 | 4 | 185 | 190 | 6 | 352 | 6 | |
2018 | タシュケント、ウズベキスタン | 105 kg | 167 | - | 195 | 202 | - | 369 | - | |||
2019 | スバ、フィジー | 109 kg | 173 | 177 | 182 | - | 212 | 216 | - | - | 398 | - |
4. 評価と影響
アークバール・ジュラエフは、その類まれなる才能と努力により、ウズベキスタン重量挙げ界の象徴的な存在となった。彼はジュニア時代から国際大会で頭角を現し、シニアに移行してからはオリンピックで金メダルを獲得するなど、数々の輝かしい実績を積み重ねてきた。
彼の活躍は、ウズベキスタンにおける重量挙げ競技の人気向上と、若手選手の育成に大きな影響を与えている。特に、2020年東京オリンピックでの金メダル獲得は、彼の母国に大きな誇りをもたらし、多くの人々に感動を与えた。ジュラエフは、競技においては常に最高のパフォーマンスを目指し、自己記録を更新し続ける向上心と、困難な状況下でも目標を達成する精神的な強さを示している。
彼は、スポーツを通じて国際社会におけるウズベキスタンのプレゼンスを高め、若者たちに夢と希望を与えるロールモデルとしても高く評価されている。今後も、ジュラエフの活躍は、世界の重量挙げ競技に大きな影響を与え続けると期待されている。