1. 概要
張銘煌(ちょう めいこう)選手は、台湾の陸上競技選手であり、主に砲丸投げと円盤投げを専門としています。彼は台湾の陸上競技界において顕著な功績を残しており、特に砲丸投げでは国家記録を樹立し、2012年ロンドンオリンピックで決勝に進出するなど、アジア人選手としては異例の成果を上げています。彼の競技人生は、台湾の陸上競技の発展に大きく貢献し、後進の育成にも尽力しています。
2. 経歴
張銘煌選手は、幼少期から陸上競技に親しみ、その才能を開花させていきました。特に、専門とする種目を円盤投げから砲丸投げへと転向したことが、彼のキャリアにおける大きな転機となりました。
2.1. 生い立ちと初期活動
張銘煌は、1982年8月7日に台湾の台中市で生まれました。陸上競技選手としてのキャリアは、当初円盤投げに重点を置いて始まりました。台湾の大学で学んでいた頃には、国内でトレーニングを積んでいましたが、2006年からは砲丸投げに専念するようになります。この転向は、彼のその後の競技人生において重要な転機となりました。
2.2. 訓練と成長
張銘煌選手は、競技力の向上を目指して、国内外の著名なコーチのもとで集中的な訓練を受けました。2007年6月から2008年北京オリンピックまでの期間、彼はドイツのベルリンでヴェルナー・ゴールドマンの指導を受けました。さらに、2010年2月からはアメリカ合衆国ジョージア州のアテネでドナルド・バビットのもとでトレーニングを重ねました。これらの海外での経験は、彼の技術と精神面を大きく成長させました。また、台湾国内や中国でもトレーニングを行っていた時期があります。
2.3. 主な成果と記録
張銘煌選手は、数々の国際大会で優れた成績を収め、台湾の陸上競技界に新たな歴史を刻みました。2011年8月、アメリカ合衆国ジョージア州のアテネで開催された大会で、砲丸投げの自己最高記録となる20.58 mを樹立しました。この記録は、台湾の国家記録を更新するものであり、2012年ロンドンオリンピックの参加標準記録Aを突破するものでした。
2012年8月3日、ロンドンオリンピック男子砲丸投げの予選で、張銘煌選手は20.25 mを投げ、この種目で決勝に進出した史上2人目のアジア人選手となりました。同日の決勝では、19.99 mを記録し、12位の成績を収めました。
彼はまた、アジア陸上競技選手権大会やアジア競技大会でも数々のメダルを獲得しており、特に2011年アジア陸上競技選手権大会(神戸)では砲丸投げで金メダルを獲得しました。
3. 主要大会結果
張銘煌選手が参加した主要な国際大会での成績は以下の通りです。
年 | 大会名 | 開催地 | 順位 | 種目 | 記録 |
---|---|---|---|---|---|
1999 | 世界ユース陸上競技選手権大会 | ポーランド・ブィドゴシュチュ | 1位 | 円盤投げ (1.5 kg) | 64.14 m |
アジアジュニア陸上競技選手権大会 | シンガポール | 11位 | 砲丸投げ | 13.83 m | |
5位 | 円盤投げ | 49.7 m | |||
2000 | 世界ジュニア陸上競技選手権大会 | チリ・サンティアゴ | 23位 (予選) | 円盤投げ | 48.07 m |
2001 | 東アジア競技大会陸上競技 | 日本・大阪 | 2位 | 円盤投げ | 55.88 m |
アジアジュニア陸上競技選手権大会 | ブルネイ・バンダルスリブガワン | 3位 | 砲丸投げ | 17.2 m | |
4位 | 円盤投げ | 49.46 m | |||
ユニバーシアード陸上競技 | 中国・北京 | - | 砲丸投げ | 記録なし | |
17位 (予選) | 円盤投げ | 51.14 m | |||
2002 | アジア陸上競技選手権大会 | スリランカ・コロンボ | 11位 | 砲丸投げ | 15.7 m |
6位 | 円盤投げ | 52.94 m | |||
2004 | アジア室内陸上競技選手権大会 | イラン・テヘラン | 6位 | 砲丸投げ | 17.49 m |
2005 | アジア陸上競技選手権大会 | 韓国・仁川 | 10位 | 円盤投げ | 52.75 m |
2006 | アジア競技大会陸上競技 | カタール・ドーハ | 3位 | 砲丸投げ | 19.45 m |
2007 | アジア陸上競技選手権大会 | ヨルダン・アンマン | 2位 | 砲丸投げ | 19.66 m |
ユニバーシアード陸上競技 | タイ王国・バンコク | 3位 | 砲丸投げ | 19.36 m | |
世界陸上競技選手権大会 | 日本・大阪 | 30位 (予選) | 砲丸投げ | 18.53 m | |
アジアインドアゲームズ陸上競技 | マカオ | 4位 | 砲丸投げ | 17.93 m | |
2008 | 世界室内陸上競技選手権大会 | スペイン・バレンシア | 20位 (予選) | 砲丸投げ | 17.73 m |
オリンピック陸上競技 | 中国・北京 | 40位 (予選) | 砲丸投げ | 17.43 m | |
2009 | ユニバーシアード陸上競技 | セルビア・ベオグラード | 8位 | 砲丸投げ | 18.42 m |
アジアインドアゲームズ陸上競技 | ベトナム・ハノイ | 2位 | 砲丸投げ | 19.55 m | |
アジア陸上競技選手権大会 | 中国・広州 | 2位 | 砲丸投げ | 19.34 m | |
東アジア競技大会陸上競技 | 香港 | 2位 | 砲丸投げ | 18.33 m | |
3位 | 円盤投げ | 54.92 m | |||
2010 | アジア競技大会陸上競技 | 中国・広州 | 3位 | 砲丸投げ | 19.48 m |
2011 | アジア陸上競技選手権大会 | 日本・神戸 | 1位 | 砲丸投げ | 20.14 m |
世界陸上競技選手権大会 | 韓国・大邱 | 18位 (予選) | 砲丸投げ | 19.6 m | |
2012 | 世界室内陸上競技選手権大会 | トルコ・イスタンブール | 21位 (予選) | 砲丸投げ | 18.75 m |
オリンピック陸上競技 | イギリス・ロンドン | 12位 | 砲丸投げ | 19.99 m | |
2013 | アジア陸上競技選手権大会 | インド・プネー | 2位 | 砲丸投げ | 19.61 m |
東アジア競技大会陸上競技 | 中国・天津 | 3位 | 砲丸投げ | 19.19 m | |
2014 | アジア競技大会陸上競技 | 韓国・仁川 | 2位 | 砲丸投げ | 19.97 m |
2018 | アジア競技大会陸上競技 | インドネシア・ジャカルタ | 5位 | 砲丸投げ | 18.98 m |
4. 指導者としての活動とスポンサーシップ
張銘煌選手は、競技活動の傍ら、後進の育成にも力を注いでいます。彼は国立台湾体育運動大学で投擲コーチを務めており、自身の豊富な経験と知識を若い選手たちに伝えています。

また、彼の競技活動は複数の団体や企業からの支援を受けていました。彼は中華台北陸上競技協会(CTAA)と台湾教育省体育署から支援を受け、さらにアディダスも彼のスポンサーを務めました。中華台北陸上競技協会は、張銘煌選手のすべての国際的な交渉を代行していました。
5. 影響と評価
張銘煌選手は、身長1.93 m、体重140 kgという恵まれた体格を活かし、台湾の陸上競技、特に砲丸投げ種目においてその存在感を示しました。彼が樹立した砲丸投げの国家記録(20.58 m)や、アジア人選手として史上2人目となるロンドンオリンピックでの決勝進出は、台湾の陸上競技界における歴史的な快挙として評価されています。
彼の活躍は、台湾における投擲種目の注目度を高め、後進の選手たちに大きな目標とインスピレーションを与えました。競技引退後も、国立台湾体育運動大学でコーチを務めるなど、台湾の陸上競技の発展に継続的に貢献しており、その多大な功績は広く認識されています。