1. 概要

ラミル・グリエフ(Ramil Eldar oğlu Quliyevラミル・エルダル・オウル・グリエフアゼルバイジャン語、1990年5月29日 - )は、アゼルバイジャンのバクー出身で、現在はトルコ国籍を持つ陸上競技選手である。専門は短距離走で、主に100mと200mに出場する。
グリエフ選手は100mで9秒97、200mで19秒76の自己ベスト記録を保持しており、200mの19秒76はトルコ記録かつヨーロッパ歴代2位の記録である。キャリアのハイライトとして、2017年ロンドン世界選手権の200mで金メダルを獲得したことが挙げられる。これは、トルコが世界選手権で獲得した初の金メダルという歴史的な功績となった。また、2018年ベルリンヨーロッパ選手権でも200mで優勝を飾っている。
彼はジュニア時代にはアゼルバイジャン代表として活躍し、2009年には200mで当時のジュニア世界歴代2位となる記録を樹立した。その後、より良いトレーニング環境と財政的支援を求めてトルコ国籍を取得し、トルコ代表として国際舞台で活動している。
2. 生涯と選手経歴
本節では、ラミル・グリエフの幼少期から、アゼルバイジャン代表としてのジュニア時代の活躍、そしてトルコ国籍取得後の国際的な活動と主要な競技実績について詳述する。
### 幼少期とアゼルバイジャン選手時代 ###
ラミル・グリエフは1990年5月29日にアゼルバイジャン・ソビエト社会主義共和国のバクーで生まれた。彼の陸上競技キャリアは、故郷であるアゼルバイジャンの代表として始まった。
2009年、19歳だったグリエフは、ベオグラードユニバーシアードの男子200m決勝で20秒04(+0.1)をマークし、金メダルを獲得した。この記録は、当時のヨーロッパジュニア記録であるとともに、ウサイン・ボルトの19秒93に次ぐジュニア世界歴代2位の好記録であった。また、同年のベルリン世界選手権の男子200mに出場し、アゼルバイジャン選手として初めて同種目の決勝に進出し、7位入賞を果たした。彼はアゼルバイジャンの100mと200mの国内記録、およびジュニア国内記録を保持していた。
2009年にはヨーロッパ陸上競技連盟による「ライジングスター賞」の次点に選ばれるなど、若くしてその才能を高く評価された。
アゼルバイジャン代表としての主なジュニア時代の国際大会成績は以下の通りである。
- 2007年世界ユース陸上競技選手権大会: 200mで銀メダルを獲得。
- 2007年ヨーロッパユースオリンピックフェスティバル: 100mと200mでそれぞれ金メダルを獲得し、200mでは大会記録を樹立した。
- 2009年ヨーロッパジュニア陸上競技選手権大会: 100mで銀メダル、200mで金メダルを獲得し、200mでは大会記録を樹立した。
- 2009年夏季ユニバーシアード: 200mで金メダルを獲得し、アゼルバイジャン記録、ジュニアヨーロッパ記録、自己ベストを更新した。
### トルコ国籍取得と活動 ###

グリエフ選手は、より充実した陸上競技のトレーニング環境と財政的支援を求め、2011年4月5日にトルコの市民権を取得した。彼は、トルコで受けた支援が大きく、両国間で人々の気質、言語、文化が非常に似ていることが国籍変更の理由であると説明している。
この国籍変更に対し、国際陸上競技連盟(IAAF)は国際規定に基づき移籍禁止期間を設け、グリエフ選手は2014年4月までアゼルバイジャン以外の国を代表して国際大会に出場することを禁じられた。一方、アゼルバイジャン陸上競技連盟は、彼が再びアゼルバイジャン代表として国際的に競技することに対しては開かれた姿勢を示していた。しかし、アゼルバイジャン青少年・スポーツ省との交渉が行われたものの、グリエフ選手はアゼルバイジャン代表として競技しないという当初の決定を固守した。当時のアゼルバイジャン青少年・スポーツ大臣アザド・ラヒモフは、グリエフ選手が若いアスリートとしては「あまりにも不合理な財政的要求」を提示したためであると説明し、彼がトルコ代表として2012年ロンドンオリンピックで成功する可能性に疑問を呈した。
2013年4月4日より、グリエフ選手は正式にトルコ代表として国際大会に出場するようになった。彼は現在、フェネルバフチェ陸上競技部に所属している。グリエフ選手は自身の成功について、「もしフェネルバフチェがなかったら、おそらく私はずっと前に陸上競技を辞めていただろう。私の全ての功績はクラブのおかげだ」と語っており、クラブの支援が彼のキャリアにおいて極めて重要であったことを強調している。
### 主要な実績と記録 ###
グリエフ選手は、国際舞台で数々の輝かしい実績を残している。
2.1. 世界選手権およびオリンピック
グリエフ選手は、オリンピックと世界選手権の200mで、合計4回決勝に進出している。
- 2009年ベルリン世界選手権では、19歳で200m決勝に進出し、7位となった。
- 2015年北京世界選手権では、200m予選で当時のトルコ記録となる20秒01(-0.3)を樹立し、決勝では6位に入り、2009年大会の7位を上回る最高成績を残した。
- 2016年リオデジャネイロオリンピックの200mでは、男女を通じてトルコ勢初の決勝進出を果たし、20秒43(-0.5)で8位に入賞した。男子4x100mリレーでは予選で38秒30のトルコ記録を樹立したが、決勝には進めなかった。
- 2017年ロンドン世界選手権の200mでは、決勝で当時400mの世界王者であったウェイド・バンニーキルクを僅差でかわし、20秒09(-0.1)で優勝を果たした。これは世界選手権の全種目を通じてトルコが獲得した初の金メダルであり、トルコ人男子選手が獲得した初のメダルという歴史的快挙だった。男子4x100mリレーでは7位となった。
- 2019年ドーハ世界選手権の200mでは5位、4x100mリレーは失格となった。
- 2020年東京オリンピックの200mでは準決勝で敗退(14位)、4x100mリレーは失格となった。
- 2023年ブダペスト世界選手権の200mでは予選で敗退(38位)した。
2.2. 欧州選手権およびその他の国際大会
グリエフ選手は、世界選手権とオリンピック以外にも、数多くの国際大会でメダルを獲得している。
- 2016年アムステルダムヨーロッパ選手権の100mでは準決勝で当時の自己ベスト10秒07(+1.5)を記録し決勝に進んだが、決勝では10秒23(0.0)の6位に終わった。200mでは20秒51(-0.9)で銀メダルを獲得した。
- 2018年ベルリンヨーロッパ選手権では、200mで19秒76(+0.7)の大会新記録・トルコ新記録で金メダルを獲得した。また、男子4x100mリレーでも37秒98のトルコ新記録を樹立し、銀メダルを獲得した。
- 2022年ミュンヘンヨーロッパ選手権の200mでは準決勝で敗退(9位)した。
- 2024年ローマヨーロッパ選手権の200mでは準決勝で敗退(17位)した。
- 地中海競技大会では、2013年メルスィン大会で100mと200mでそれぞれ銀メダルを獲得した。2018年タラゴナ大会では200m金メダル(大会記録)と4x100mリレー銀メダルを獲得した。2022年オラン大会では100m銀メダル、200m金メダル、4x100mリレー銀メダルを獲得している。
- イスラム諸国連帯競技大会では、2017年バクー大会で100m(10秒06、+0.6)と200m(20秒08、+0.6)でそれぞれ金メダル(両種目とも大会記録を更新)を獲得したが、トルコチームのアンカーを務めた男子4x100mリレー決勝は39秒56で2位に終わり(1位と0秒01差)、生まれ育ったアゼルバイジャン・バクーで開催された大会で惜しくも3冠は逃した。2021年コンヤ大会では200mで銀メダル、4x100mリレーで金メダルを獲得した。
- バルカン陸上競技選手権大会では、2014年ピテシュティ大会で100mと200mでそれぞれ金メダルを獲得。2015年同地大会では200mと4x100mリレーで金メダルを獲得した。2016年同地大会でも100mと200mでそれぞれ金メダルを獲得した。
- ユニバーシアード(トルコ代表として)では、2015年光州大会で100mと200mでそれぞれ銅メダルを獲得した。
- ヨーロッパチーム選手権では、2014年ブラウンシュヴァイク大会で100m3位、200m2位、4x100mリレー11位。2015年イラクリオン大会で200m1位。2017年ヴァーサ大会で200m1位(大会記録20秒20)を獲得した。
- IAAFコンチネンタルカップでは、2018年オストラヴァ大会の200mと4x100mリレーでヨーロッパ代表として銀メダルを獲得した。
3. 個人記録と統計
### 種目別個人最高記録 ###
記録欄の( )内の数字は風速(m/s)で、+は追い風、-は向かい風を意味する。
種目 | 記録 | 年月日 | 場所 | 備考 |
---|---|---|---|---|
屋外 | ||||
100m | 9秒97 (+1.5) | 2017年7月6日 | ブルサ、トルコ | トルコ歴代2位 |
200m | 19秒76 (+0.7) | 2018年8月9日 | ベルリン、ドイツ | トルコ記録、ヨーロッパ歴代2位、大会記録 |
300m | 32秒61 | 2016年7月27日 | カールスタード、スウェーデン | |
4x100mリレー | 37秒98 | 2018年8月12日 | ベルリン、ドイツ | トルコ記録 |
4x200mリレー | 1分23秒55 | 2015年5月3日 | ナッソー、バハマ | トルコ記録 |
室内 | ||||
60m | 6秒58 | 2012年1月13日 | スームィ、ウクライナ | |
200m | 21秒05 | 2012年2月14日 | リエヴァン、フランス |
### アゼルバイジャンおよびトルコ国内記録 ###
グリエフ選手がアゼルバイジャン代表時代に樹立した国内記録を以下に示す。
種目 | 記録 | 年月日 | 場所 |
---|---|---|---|
屋外 | |||
100m | 10秒08 (+1.3) | 2009年6月13日 | イスタンブール、トルコ |
200m | 20秒04 (+0.1) | 2009年7月10日 | ベオグラード、セルビア |
室内 | |||
200m | 21秒51 | 2009年2月4日 | タリン、エストニア |
300m | 33秒62 | 2009年2月1日 | モスクワ、ロシア |
グリエフ選手がトルコ代表として樹立した国内記録を以下に示す。
種目 | 記録 | 年月日 | 場所 |
---|---|---|---|
屋外 | |||
200m | 19秒76 (+0.7) | 2018年8月9日 | ベルリン、ドイツ |
4x100mリレー | 37秒98 | 2018年8月12日 | ベルリン、ドイツ |
4x200mリレー | 1分23秒55 | 2015年5月3日 | ナッソー、バハマ |
### 年間世界ランキング ###
『トラック・アンド・フィールド・ニュース』誌の専門家投票による年間世界ランキング(200m)は以下の通りである。
アゼルバイジャン代表時:
年 | 世界ランキング |
---|---|
2009 | 9位 |
トルコ代表時:
年 | 世界ランキング |
---|---|
2015 | 7位 |
2016 | - |
2017 | 1位 |
2018 | 2位 |
2019 | 3位 |
### 主要国際大会出場成績 ###
備考欄の記録は当時のもの。
年 | 大会 | 場所 | 種目 | 結果 | 記録 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|
アゼルバイジャン代表 | ||||||
2006 | 世界ジュニア選手権 | 北京、中国 | 100m | 予選 | 10秒91 (+0.6) | ジュニアアゼルバイジャン記録 |
2007 | 世界ユース選手権 | オストラヴァ、チェコ | 200m | 2位 | 20秒72 (-0.2) | |
ヨーロッパユースオリンピックフェスティバル | ベオグラード、セルビア | 100m | 優勝 | 10秒50 (+2.3) | ||
200m | 優勝 | 20秒98 (+0.1) | 大会記録 | |||
2008 | 世界室内選手権 | バレンシア、スペイン | 60m | 予選 | 6秒84 | |
世界ジュニア選手権 | ブィドゴシュチュ、ポーランド | 200m | 5位 | 21秒00 (-0.9) | ||
オリンピック | 北京、中国 | 200m | 2次予選 | 20秒66 (+0.3) | 国内記録、自己ベスト | |
2009 | ヨーロッパ室内選手権 | トリノ、イタリア | 60m | 7位 | 6秒67 | |
ユニバーシアード | ベオグラード、セルビア | 200m | 優勝 | 20秒04 (+0.1) | アゼルバイジャン記録、自己ベスト、ジュニアヨーロッパ記録 | |
ヨーロッパジュニア選手権 | ノヴィ・サド、セルビア | 100m | 2位 | 10秒16 (+0.2) | ||
200m | 優勝 | 20秒33 (-0.1) | 大会記録 | |||
世界選手権 | ベルリン、ドイツ | 200m | 7位 | 20秒61 (-0.3) | ||
トルコ代表 | ||||||
2013 | 地中海競技大会 | メルスィン、トルコ | 100m | 2位 | 10秒23 (+0.2) | シーズンベスト |
200m | 2位 | 20秒46 (-0.7) | シーズンベスト | |||
ユニバーシアード | カザン、ロシア | 200m | 準決勝 | 20秒84 | ||
2014 | ヨーロッパチーム選手権 | ブラウンシュヴァイク、ドイツ | 100m | 3位 | 10秒37 | |
200m | 2位 | 20秒57 | ||||
4x100mリレー | 11位 | 40秒25 | ||||
バルカン選手権 | ピテシュティ、ルーマニア | 100m | 優勝 | 10秒24 (+1.4) | ||
200m | 優勝 | 21秒04 (-3.0) | ||||
ヨーロッパ選手権 | チューリッヒ、スイス | 100m | 予選 | DQ | 不正スタート | |
200m | 6位 | 20秒48 (-1.6) | 準決勝20秒38 (-0.4)はトルコ記録 | |||
4x100mリレー | 予選 | 39秒83 (4走) | 自己ベスト | |||
2015 | 世界リレー | ナッソー、バハマ | 4x200mリレー | 予選 | 1分23秒55 (2走) | トルコ記録、自己ベスト |
ヨーロッパチーム選手権 | イラクリオン、ギリシャ | 200m | 優勝 | 20秒67 | シーズンベスト | |
ユニバーシアード | 光州、韓国 | 100m | 3位 | 10秒16 (0.0) | ||
200m | 3位 | 20秒59 (-2.5) | シーズンベスト | |||
バルカン選手権 | ピテシュティ、ルーマニア | 200m | 優勝 | 20秒59 (-2.4) | ||
4x100mリレー | 優勝 | 39秒35 (2走) | 自己ベスト | |||
世界選手権 | 北京、中国 | 200m | 6位 | 20秒11 (-0.1) | 予選20秒01 (-0.3)は自己ベスト・トルコ記録 | |
2016 | バルカン選手権 | ピテシュティ、ルーマニア | 100m | 優勝 | 10秒30 (-1.1) | |
200m | 優勝 | 20秒98 (-2.7) | ||||
ヨーロッパ選手権 | アムステルダム、オランダ | 100m | 6位 | 10秒23 (0.0) | 準決勝10秒07 (+1.5)は自己ベスト | |
200m | 2位 | 20秒51 (-0.9) | ||||
4x100mリレー | 予選 | 39秒58 (4走) | ||||
オリンピック | リオデジャネイロ、ブラジル | 200m | 8位 | 20秒43 (-0.5) | ||
4x100mリレー | 予選 | 38秒30 (4走) | トルコ記録 | |||
2017 | イスラム諸国連帯競技大会 | バクー、アゼルバイジャン | 100m | 優勝 | 10秒06 (+0.6) | 自己ベスト、大会記録 |
200m | 優勝 | 20秒08 (+0.6) | シーズンベスト、大会記録 | |||
4x100mリレー | 2位 | 39秒56 (4走) | ||||
ヨーロッパチーム選手権 | ヴァーサ、フィンランド | 200m | 優勝 | 20秒20 | 大会記録 | |
世界選手権 | ロンドン、イギリス | 200m | 優勝 | 20秒09 (-0.1) | トルコ初の金メダル | |
4x100mリレー | 7位 | 38秒73 (4走) | ||||
2018 | 地中海競技大会 | タラゴナ、スペイン | 200m | 優勝 | 20秒15 | 大会記録 |
4x100mリレー | 2位 | 38秒50 | ||||
ヨーロッパ選手権 | ベルリン、ドイツ | 200m | 優勝 | 19秒76 (+0.7) | 自己ベスト、トルコ記録、大会記録 | |
4x100mリレー | 2位 | 37秒98 | トルコ記録、自己ベスト | |||
IAAFコンチネンタルカップ | オストラヴァ、チェコ | 200m | 2位 | 20秒28 (-1.6) | ヨーロッパ代表 | |
4x100mリレー | 2位 | 38秒96 (4走) | ヨーロッパ代表 | |||
2019 | 世界リレー | 横浜、日本 | 4x100mリレー | 7位 | 39秒13 | |
世界選手権 | ドーハ、カタール | 200m | 5位 | 20秒07 | ||
4x100mリレー | DQ | |||||
2021 | 世界リレー | ホジュフ、ポーランド | 4x100mリレー | 予選 | 39秒59 | |
オリンピック | 東京、日本 | 200m | 準決勝 | 20秒31 | ||
4x100mリレー | DQ | |||||
2022 | 地中海競技大会 | オラン、アルジェリア | 100m | 2位 | 10秒16 | |
200m | 優勝 | 20秒21 | ||||
4x100mリレー | 2位 | 38秒98 | ||||
イスラム諸国連帯競技大会 | コンヤ、トルコ | 200m | 2位 | 20秒24 | ||
4x100mリレー | 優勝 | 38秒74 | ||||
ヨーロッパ選手権 | ミュンヘン、ドイツ | 200m | 準決勝 | 20秒44 | ||
2023 | 世界選手権 | ブダペスト、ハンガリー | 200m | 予選 | 20秒89 | |
2024 | ヨーロッパ選手権 | ローマ、イタリア | 200m | 準決勝 | 20秒87 |
### 主要サーキット大会優勝 ###
グリエフ選手が優勝したダイヤモンドリーグの個人種目成績は以下の通りである。
200m
年 | 大会 | 場所 | 記録 |
---|---|---|---|
2017 | ミーティング・ド・パリ | パリ、フランス | 20秒15 (-0.5) |
2017 | バーミンガムグランプリ | バーミンガム、イギリス | 20秒17 (-0.1) |
2018 | ビスレットゲームズ | オスロ、ノルウェー | 19秒90 (+1.0) |
2018 | ストックホルム | ストックホルム、スウェーデン | 19秒92 (+0.9) |
2019 | ドーハダイヤモンドリーグ | ドーハ、カタール | 20秒11 (+0.8) |
4x100mリレー
年 | 大会 | 場所 | 記録 |
---|---|---|---|
2016 | ストックホルム | ストックホルム、スウェーデン | 39秒69 |
### トラックレコード ###
グリエフ選手が2024年9月6日時点で保持しているトラック記録は以下の通りである。
100m
場所 | 記録 | 風速(m/s) | 年月日 |
---|---|---|---|
バクー、アゼルバイジャン | 10秒06 | +0.6 | 2017年5月16日 |
200m
4. コーチ
グリエフ選手の陸上競技キャリアにおけるコーチは以下の通りである。
- 最初のコーチはトフィグ・アリエフで、2009年まで指導を受けた。
- 彼の2番目のコーチは、父親であるエルダール・グリエフであった。父親は2010年6月に心臓発作で死去するまで、彼を指導した。
- 2010年以降、現在に至るまでオレグ・ムーヒンがグリエフ選手のコーチを務めている。
5. 受賞と評価
### 主要な受賞歴 ###
グリエフ選手が陸上競技キャリアを通じて受けた主要な賞は以下の通りである。
- 『ミリイェトスポーツ賞』の「年間最優秀トルコ人選手」を2017年と2018年に2年連続で受賞した。
### 経歴全般の評価 ###
グリエフ選手は、2009年にはヨーロッパ陸上競技連盟の「ライジングスター賞」の次点に選ばれるなど、若くからその才能を認められてきた。
彼は、100mで10秒の壁(9秒97)と200mで20秒の壁(19秒76)を破ったヨーロッパ史上6人目の選手である。特に、2017年の世界陸上競技選手権大会200mでの金メダル獲得は、トルコにとって陸上競技のあらゆる種目を通じた初の金メダルであり、トルコ人男子選手による初のメダル獲得という点で、同国のスポーツ史における歴史的な意味を持つ。
国籍変更の経緯には、より良いトレーニング環境と財政的支援を求めるグリエフ選手の意思があった一方で、アゼルバイジャン側は「不合理な財政的要求」が原因であると主張し、国際陸上競技連盟による移籍禁止期間が設けられるなど、複雑な背景が存在した。しかし、彼は所属クラブであるフェネルバフチェ陸上競技部が自身のキャリアにおいて極めて重要な役割を果たしたことを繰り返し強調しており、クラブへの強い感謝を示している。