オルガ・シシギナ

1.1. Early Life and Education

オルガ・シシギナは1968年12月23日にソビエト連邦のカザフ・ソビエト社会主義共和国、現在のカザフスタンのアルマトイで生まれた。幼少期から活発で、男の子のように振る舞い、ドレスよりも動きやすい服装を好んだという。母親は彼女が走ることに夢中になっていることに気づき、早い時期から両親は彼女を陸上競技のセクションに入れた。7歳の時にはコーチが彼女のスポーツへの情熱を見出し、将来のチャンピオンへと導くための指導を始めた。彼女は幼い頃から、平坦なコースでの短距離走や、ハードル走に熱心に取り組んだ。10歳でオリンピックの育成プログラムに選ばれ、その才能を開花させていった。

教育面では、1992年から1994年まで高等スポーツ技能共和国学校で学び、競技生活と並行して学業にも励んだ。そして、2002年にはカザフ国立観光スポーツアカデミーを卒業し、高等教育を修了した。

1.2. Start of Athletic Career

オルガ・シシギナは19歳でソビエト連邦のナショナルチームに選出され、本格的に競技者としてのキャリアをスタートさせた。彼女は熱心なトレーニングを毎日積み重ね、すぐに国際レベルの競技者へと成長し、世界各国のライバルたちと競い合うようになった。

彼女のスポーツキャリアにおける最初の大きな勝利は、1994年に日本の広島市で開催されたアジア競技大会での100メートルハードル金メダルであった。この勝利は、彼女が国際舞台で頭角を現すきっかけとなった。その後、1995年の世界陸上競技選手権大会(スウェーデンのイェーテボリ)と世界室内陸上競技選手権大会(スペインのバルセロナ)でそれぞれ銀メダルを獲得し、その実力を確固たるものにした。

2.1. Olympic and World Championships

シシギナはオリンピックと世界選手権において、特に印象的な成績を残している。

• 2000年シドニーオリンピック**: オーストラリアのシドニーで開催されたこの大会で、彼女は100メートルハードルの金メダルを獲得した。このレースでは、スタートでやや出遅れたものの、後半で追い上げ、最終的にトップでフィニッシュした。彼女自身は、スタートでのミスを認めつつも、後半の強さが勝利につながったと語っている。競技中、観客席からのカザフスタン国民の熱狂的な応援が、彼女に大きなモチベーションを与えたという。
• 世界陸上競技選手権大会**:
  • 1995年、スウェーデンのイェーテボリで開催された大会で、100メートルハードルの銀メダルを獲得した。
  • 1999年、スペインのセビリアで開催された大会では、100メートルハードルで4位入賞を果たした。
  • 2001年、カナダのエドモントンで開催された大会で、100メートルハードルの銅メダルを獲得した。
• 世界室内陸上競技選手権大会**:
  • 1995年、スペインのバルセロナで開催された大会で、60メートルハードルの銀メダルを獲得した。
  • 1999年、日本の前橋市で開催された大会では、60メートルハードルの金メダルを獲得した。
  • 2001年、ポルトガルのリスボンで開催された大会では、60メートルハードルで4位入賞を果たした。

2.2. Asian and Regional Games

彼女はアジアおよび地域レベルの大会でも圧倒的な強さを見せた。

• アジア競技大会**:
  • 1994年、日本の広島市で開催された大会で、100メートルハードルの金メダルを獲得した。これは彼女の国際大会での初勝利であった。
  • 1998年、タイ王国のバンコクで開催された大会で、100メートルハードルの金メダルを獲得した。
• アジア陸上競技選手権大会**:
  • 1993年、フィリピンのマニラで開催された大会で、100メートルハードルの銅メダルを獲得した。
  • 1998年、日本の福岡市で開催された大会で、100メートルハードルの金メダルを獲得した。
• 中央アジア競技大会**:
  • 1995年、ウズベキスタンのタシケントで開催された大会で、100メートルハードルの金メダルを獲得した。
  • 1999年、キルギスのビシュケクで開催された大会では、100メートル競走と100メートルハードルの両種目で金メダルを獲得した。

  オルガ・シシギナの主な国際大会成績

  年	大会	場所	種目	結果	記録
  1993	アジア陸上競技選手権大会	マニラ (フィリピン)	100mハードル	3位	13秒57
  1994	アジア競技大会	広島市 (日本)	100mハードル	1位	12秒80
  1995	世界室内陸上競技選手権大会	バルセロナ (スペイン)	60mハードル	2位	7秒92
  1995	世界陸上競技選手権大会	イェーテボリ (スウェーデン)	100mハードル	2位	12秒80
  1995	中央アジア競技大会	タシケント (ウズベキスタン)	100mハードル	1位	13秒00
  1998	アジア競技大会	バンコク (タイ王国)	100mハードル	1位	12秒63
  1998	アジア陸上競技選手権大会	福岡市 (日本)	100mハードル	1位	13秒04
  1999	世界室内陸上競技選手権大会	前橋市 (日本)	60mハードル	1位	7秒86
  1999	世界陸上競技選手権大会	セビリア (スペイン)	100mハードル	4位	12秒51
  1999	中央アジア競技大会	ビシュケク (キルギス)	100m	1位	11秒78
  1999	中央アジア競技大会	ビシュケク (キルギス)	100mハードル	1位	13秒27
  2000	オリンピック	シドニー (オーストラリア)	100mハードル	1位	12秒65
  2001	世界室内陸上競技選手権大会	リスボン (ポルトガル)	60mハードル	4位	7秒96
  2001	世界陸上競技選手権大会	エドモントン (カナダ)	100mハードル	3位	12秒58

2.3. Personal Best and Asian Records

オルガ・シシギナは、自身のキャリアを通じて複数の自己ベスト記録とアジア記録を樹立した。

2.4. Doping Ban and Return

オルガ・シシギナは、1996年から1998年までの間、ドーピング検査で陽性反応を示したため、出場停止処分を受けた。この期間、彼女は競技から離れることを余儀なくされた。しかし、処分が明けた1998年以降、彼女は競技に復帰し、再び国際舞台で活躍を見せた。特に、復帰後の1999年には世界室内陸上選手権で金メダルを獲得し、2000年にはシドニーオリンピックで金メダルを獲得するなど、見事な復活を遂げた。

2.5. Retirement

オルガ・シシギナは、2007年にプロフェッショナル・アスリートとしてのキャリアを終え、現役を引退した。引退の主な理由としては、長年の競技生活による怪我の蓄積が挙げられている。競技引退後、彼女は一時的に自身の進路に迷いを感じたものの、スポーツ界への貢献や社会活動へと活動の場を広げていった。

3.1. Military and Security Service

彼女は競技者としてのキャリアを始める前から、カザフスタンの公務に携わっていた。1987年から1992年までカザフスタン共和国軍に勤務し、その後1994年から2013年まではカザフスタン国家安全保障委員会で勤務した。彼女はカザフスタンの国境警備隊で少佐の階級を保持している。これらの経験は、彼女の規律と献身性を培い、後の政治・社会活動の基盤となった。

3.2. Political Career

シシギナは、2013年からカザフスタン議会のマジュリス(下院)議員として政治の舞台に進出した。

• 第5期マジュリス議員**: 2013年1月22日から2016年1月20日まで、第5期マジュリスの議員を務めた。
• 第6期マジュリス議員**: 2016年3月25日からは第6期マジュリスの議員を務めている。
• 所属政党**: 彼女はヌル・オタン(現在のアマナト)人民民主党の党員であり、党のリストに基づいて選出された。
• 立法活動と委員会**: 第6期マジュリスでは、以下の委員会活動に参加している。
  • カザフ国立女子教育大学(アルマトイ)の監督委員会のメンバー。
  • マジュリス内のカザフスタン人民会議(ANC)議員グループのメンバー。
  • 「ヌルリ・ジョル」国家インフラ開発プログラム(2015年~2019年)の「社会インフラ開発」方向における予算資金およびカザフスタン国家基金からの資金の的確かつ効率的な支出を管理する委員会のメンバー。
  • カタール、マレーシア、キューバ、ポーランド、ウクライナ(グループ1)、モロッコ、ハンガリー、ニュージーランド、セルビア、スロバキア共和国、ロシア連邦(グループ12)、デンマーク、イラク、ベトナム社会主義共和国、メキシコ、南アフリカ共和国(グループ15)との協力グループのメンバー。
  • 独立国家共同体(CIS)列国議会会議(IPA CIS)の文化・情報・観光・スポーツ常任委員会のメンバー。

3.3. Academic and Social Activities

政治活動と並行して、オルガ・シシギナは学術分野や社会貢献活動にも積極的に関わっている。

• 学術活動**: 現在、カザフ国立観光スポーツアカデミーの陸上競技部門の責任者を務めている。また、カザフ国際関係・世界言語アブライ・ハン大学を訪問し、学生たちと交流するなど、後進の育成にも力を入れている。
• 社会貢献活動**:
  • 2018年9月19日から21日に開催された第2回ユーラシア女性フォーラムでは、「カザフスタンにおける社会意識の近代化」および「文化における女性：伝統と革新」をテーマに講演を行った。
  • 2018年9月27日には、ヌル・オタン中央委員会で開催された「若者支援」委員会の会議で、第三次大統領イニシアチブである「高等教育のアクセシビリティと質の向上、学生の生活条件の改善」について講演した。
  • 彼女は、引退したアスリートや将来のチャンピオンを支援し、オリンピック年金を引き上げ、意欲あるアスリートのための学校を建設することを将来の夢として語っている。
  • 競技引退後、一時的に自身の進路に迷い、アパートの改修作業や祖母の田舎の家の建設に挑戦するなど、スポーツ以外の分野でも自己実現を試みた。

4.1. Family and Marriage

オルガ・シシギナはドミトリー・グリドネフと結婚している。19歳でナショナルチームに入った直後に結婚し、男の子を授かった。彼女は結婚生活の喜びを味わい、息子を育てた。1980年代後半には一時的に身体的な不調に見舞われ、競技から離れて体調の回復に専念した時期もあったが、夫のドミトリーは常に彼女を支え続けた。

彼女は多くの男性からアプローチを受けたが、最終的に現在の夫であるドミトリーだけを受け入れた。ドミトリーは1ヶ月近く匿名で花を贈り続け、最終的に彼女の心をつかんだという。彼女の人生のモットーは「家族が第一、スポーツは第二」であり、家庭を何よりも大切にしている。夫と共に息子を育て、息子もスポーツに興味を持っているものの、プロの道に進む計画はないという。彼女は多くのインタビューで、家族と過ごす時間を心から楽しんでいると語っており、自身の勝利は夫の功績であると繰り返し述べている。競技で家を空ける間、夫が家事全般と息子の世話を引き受け、父親としての役割を立派に果たしてくれたことに感謝している。

4.2. Public Image and Personality

オルガ・シシギナは、その謙虚で親しみやすい人柄でも知られている。彼女はファンとの写真撮影を常に歓迎し、「スター気取り」になることはないと語っている。一方で、夫はファンが彼女を抱きしめたりキスしようとすることにはあまり好意的ではないという。競技中は大胆不敵な女性として知られるが、家では非常に家庭的で、おもてなしを好む一面もある。

スポーツ以外では、15歳の頃から料理が趣味であり、特にリンゴを使ったアップルパイやパン、ケーキなど、様々な料理を作ることを楽しんでいる。彼女のコーチは、シシギナが「小さな戦車のような粘り強さで常に勝利に向かって進んだ」と愛情を込めて語っている。また、ドイツのメディアは、彼女のハードリング技術を「ダイヤモンドのようだ」と評し、その正確さを称賛した。彼女のチャンピオンとしての資質は、勇敢さ、粘り強さ、そしてリーダーシップ能力にあるとされている。